読書:『存在感のある人』アーサー・ミラー
書名:存在感のある人 アーサー・ミラー短篇小説集
著者:アーサー・ミラー
翻訳:上岡伸雄
出版社:早川書房
発行日:2017/01
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013445/
村上春樹が好んで訳しそうなタイプの作品集。わかりやすいということはないのだけど、一筋縄ではいかないその奥にある味わい深さ。
つまり、とてもよかったということ。
巨匠アーサー・ミラーが85歳を過ぎてから書いた小説たちです。そりゃあね、うまいのは当然だろうってもんですが。
設定と、筋運びがすごい。
ブルドックの広告を出していた女のところに行くと、そこにいたのはなぜかブルドックではない犬で、それでなぜかその女に襲われるようにして初体験をし、それからもう一度彼女に"してもらう"ことしか考えられなくなる「ブルドック」。
ヒトラーに超気に入られてしまうユダヤ人のタップダンサー「パフォーマンス」。
お気に入りの川に現れた害獣ビーバーを銃で始末するものの、ビーバーはなにをしていたのかという疑問に取り憑かれる「ビーバー」。
才能に行き詰まった作家が、打破のために女性の全身に小説を書くことを思いつく「裸の原稿」。
30年という年月を超えて失われた夢、失われた人々の思いを描く絶品の中篇「テレピン油蒸留所」。
パッと読むとちょっとした幽霊譚かとでも思ってしまいそうな「存在感のある人」。
いや……名品ばかり。
個人的には、この中でも短めの「ブルドック」「存在感のある人」が特に好きでした。
「ブルドック」で犬がアレしてしまうところは嫌でしたけど。
何度でも繰り返し読んで咀嚼したい作品集です。
図書館で借りて読んだのだけど、買おうかと悩んでいます。(悩んでいるのは高いから。アーサー・ミラーの本ってなぜ高いのか?)
名品としか言いようのない作品集なのだけど、レビューなどを見ると、ピンときていない人が多いようなのが、興味深いですね。全部説明しきってあるようなわかりやすい小説でないと受け付けない人が多いということなのかな。
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