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2023年7月振り返り ~富澤商店はいいぞ~ (ミニ読書レビュー5冊:「REBEL IDEAS」「ちいさい言語学者の冒険」「バウムクーヘンの文化史 パン・料理・菓子、越境する銘菓」「映画英語のリスニング 恋するブルックリン」「世界インフレの謎」)

 先月までの振り返り↓


<料理>

・富澤商店に寄って料理モチベが回復

 ここ最近は暑さやら何やらのせいか、簡単な料理ばかり作っていました。7月後半くらいからモチベが回復し、お菓子を含め料理をそれなりに作っていました。


 ちなみに、料理モチベがまともに回復したのはヘッダー画像にもあるキャラメルチョコチップを買ってからです。ふと寄った富澤商店に置いてありました。あのお店、途方もない種類の製菓道具や材料があるので、見ているだけでワクワクしてくるんですよね。暑くて料理が気だるくなってきたそこのあなた!近くの富澤商店に寄ろう!

<勉強・読書> 

 今月は5冊読了しました。「REBEL IDEAS」「ちいさい言語学者の冒険」「バウムクーヘンの文化史 パン・料理・菓子、越境する銘菓」「映画英語のリスニング 恋するブルックリン」「世界インフレの謎」の5冊です。読了と言っても、書名でお察しの通り、1冊はリスニングの参考書です。どれも面白かったのでレビューを書きたい気分ですが、そう言うだけ言って書かない例が山ほどあるので、簡単な紹介を書きます。

1. REBEL IDEAS

「多様性の科学」の原著。ちびちび読んだ結果、読破に1か月ほどかかりました。現代社会ではやたらと声高に叫ばれている多様性が叫ばれていて、かつその「多様性」の意味するところはLGBTQ・人種・性別の多様性であることがほとんどですが、その功罪について論じています。加えて、それ以外の多様性(宗教、学問の流派、移民)についても触れています。

印象に残ったエピソードは、9.11の話と対立の話です。
※ 以下は英文を読んだ私の解釈です。ミスってたらすみません。

  • 9.11の話
    説明のしようもない悲劇ですが、CIAがこれを予見できなかった理由の一つが宗教や人種の多様性にあると主張しています。主導者であるビンラディンが宣戦布告をした際、構成員のほとんどが白人かつキリスト教であるCIAはそれを見て「薄暗い洞窟のなかで薄汚い布切れを着てる変な風貌をした奴」くらいにしか見ませんでした。しかし、その恰好はイスラム教徒にとっては重要なメッセージを表していたという話です。

    読む前は「どうせLGBTとかの話するんだろ」と内心思っていたのですが、1章からコレがやってきたので、いい意味で裏切られました。

  • 対立
    ある話題について議論をする実験について。メンバー全員が友達のような関係のグループと、反対意見を普通に言う人が一人混じっているグループとだと、どちらが良い成果を挙げられるでしょうか。まあ、お察しかもしれませんが後者が良かったという結果が得られたそうです(ちゃんと論文ソースもありました。行動経済学っぽい話なので、ひょっとしたら再現性が疑われているかもしれませんが……)。

    これの結論は、「考え方に多様性を持たせるとパフォーマンスが良くなる」という話なのですが、私が注目したのは被験者の印象です。前者(メンバー全員が友達のような関係のグループ)は、後者(反対意見を言う人がいるグループ)に劣っていたにも関わらず、話し合いの成果に満足していたそうです。一方で、後者は反対意見を言う人のせいで居心地の悪さを感じていました。印象と成果が結びつかないという直観に反する結果です。こういう類の話、大好物です。

2. ちいさい言語学者の冒険

 こどものミス事例をもとに言葉を問い直す本……と書くと重苦しそうですが、中身はエッセイ寄りなので肩肘張らずに気軽に読めます。ここに出ている内容は、おそらく私がよく見るゆる言語学ラジオでも出ているはずなのですが、ビックリするほど忘れています。例えば、この話。

「おんな」+「こころ」は「おんなごころ」で「こころ」が濁音化(連濁)するけど、「おんな」+「ことば」で「おんなごとば」になることはない、なぜだろう? という問いの答えは「ライマンの法則」とよばれています。ふたつめの語にすでに濁音が含まれていると連濁は起こらないのです。

ちいさい言語学者の冒険(kindle版) p.22

 これを読んだ時に「あっ!ホントだ~!」となりましたが、間違いなくゆる言語学ラジオのほうでも同じことを思ったはずです。ただ聞いて流すだけだと身につかないのがよくわかりますね。

3. バウムクーヘンの文化史 ※超オススメ

 タイトル通りの本です。ガッチガチに重たい本でした。オススメです。

 バウムクーヘンが完成するまでの変遷がサラッと書かれていますが、菓子作りを嗜む身からすると、その裏にある無数の試行錯誤を想像してゾっとしてしまいます。

 元々の起源は古代ギリシャにおける串に巻き付けたパンです。それが紆余曲折を経て、ドイツで液体の生地を串に繰り返しかけて焼くというとんでもない手間をかけたお菓子になっていきます。ドイツでバウムクーヘンは「菓子の王」と呼ばれているそうですが、それは以下の要素があると、お菓子の歴史について執筆した本の著者(クラウス氏)が指摘しています。

  • 腕前
    串を回す速度、焼き加減の調整

  • 忍耐力
    何重にも液体をかけ続ける

  • 腕力
    バター、卵黄、卵白、粉類、砂糖をキロ単位で使う

 また、工業化が進んだ後も、バウムクーヘンは地道に焼く方法が採られ、これがバウムクーヘンを特別な散財たらしめたと筆者は主張します。

これ(編注:1920年代におけるドイツのバウムクーヘン用ガスオーブン)にはガス管が通っていて、ガス管には大小の穴が開いている。ガス管ごとに火力調節ができるようになっていて、火加減は焼き手に委ねられている。つまり火の通し方は菓子職人の力量に任されているのである。ここには、ドイツ菓子の近代化の波にさらわれることがなかった前近代性が残っている。つまり、近代化で独自の道を開いたドイツ菓子のなかにあって、バウムクーヘンは前近代性を帯びる菓子だった。そして、前述したようにこの前近代性が職人の矜持の源になっている。

バウムクーヘンの文化史 パン・料理・菓子、越境する銘菓(kindle版) p.159

王がめでたから菓子の王なのか、その姿が堂々として美しいから菓子の王なのか、製造現場で職人としての力量が求められるからそう呼ばれるのか。答えは、ドイツ菓子連盟の商標にバウムクーヘンが使われていること、そしてバウムクーヘンがマイスター試験の実技科目に指定されているという事実にある。つまり、菓子職人たちがバウムクーヘンの製造を菓子職人の力量と示す仕事と考えているからである。

同 p.167

 第一次世界大戦時に捕虜となったドイツ人菓子職人によって、日本にバウムクーヘンが作られ始めました。その後、20世紀後半で魔改造され、自動でバウムクーヘンを作る機械が生まれて大量生産が可能になり、バウムクーヘンが身近な存在になりました。しかし、その自動化は前述の矜持を打ち壊す代物です。これについて筆者も思うところがあるのか、ものすごくエモい文章を書いています。

銘菓というものは、贅沢な材料を使って伝統的な製法を守りながら作り続けてきた菓子と思われがちである。しかしながらバウムクーヘンの来歴をみるかぎり、そうではなかった。始まりは急場の間に合わせで作ったパンであり、それがなぜか宴会を彩る料理になっても味は二の次で、味がいいパンとして完成すると廃れてしまう。であるのに心棒に生地を付けてあぶり焼く焼成法は、よりにもよって流れ落ちる液体生地を選んで生き残っていくのである。  
(中略)
焼成過程そのものがこの菓子の価値である。それなのに、火と対峙するというあぶり焼きの醍醐味は徐々に薄れつつある。
(中略)
十七世紀のような家族が集う暖炉はもはやなく、家族が集うひとときをもつことさえも難しいうえに菓子作りは簡単で効率がいいことが求められ、菓子自体もすでに非日常ものではなくなっている現代、この原点回帰路線はかなり分が悪い。だが、バウムクーヘンの歴代のレシピを検証し変遷をたどることで浮かび上がってきたのは、この菓子が作り難かったために生き延びて作り続けられてきたという事実である。

同 p.263-266 (太字は私の編集)

4. ボトムアップ式映画英語のリスニング 恋するブルックリン

 同じシリーズの別の本は既にやっていて、これが2冊目になります。滅茶苦茶難しかったです。音変化や音消失など、リスニングにおける解説は多いのですが、歯ごたえがありすぎて(演者が前やった本よりも遥かに容赦ないせいで)明らかに解説が足りていません。そこが不満ですが、概ね満足です。ストーリーは相変わらずイカれてて意味不明ですが、まあどうでもいいことです。

5. 世界インフレの謎

 著者の前作「物価とは何か」は読破済みですが、kindleで安売りしてたので買いました。

  • インフレの原因は人の予想である

  • デフレに陥った時に中央銀行は無力だからやんわりしたインフレが理想である

  • 日本は物価が上がらないせいで企業が値上げできずに苦しんでいる

 ……といったコアのメッセージは前作と共通していますが、そこから掘り下げたところでは思ったより内容の被りがなかったので、新鮮な気持ちで読めました。 

 本日読み終わったばかりで読書メモがあまり残せていないので、内容についてはそのうち加筆します。

<その他> ある気がするけど読書レビューに熱が入って忘れた

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