なり損ねた人の末路 #命乞いする蜘蛛|毎週ショートショートnote
なぜこうなったか、なんて今考えても無駄だということはわかっている。
それでも考えずにはいられない。
やはり最初のねぎらいの言葉がけが間違っていたのか?
「疲れてるみたいだね。今日は休んで明日にしたら。」
これのどこがいけなかったのだ?
それともあれか?
「食器洗っておこうか。」
だろうか?食器洗いを自ら買って出る夫なんてすばらしいじゃないか。褒められこそすれ怒られることではないはず。
やっと捉えた僕の美しい妻は、僕の巣の中で僕を殴り殺す勢いでにらんでいる。
高値の花だった彼女に気に入られるよう、たくさんのプレゼントもしたし、お姫様のように扱ってきた。
たしかに、子どもが生まれてから彼女の生活はがらりと変わって、子ども中心になってしまったけれど、僕の巣から出ていくことはなかった。
いったい何が間違っていたのだろう。殺したくなるほど僕を憎んでいたなんて。
「なにが間違っていたのかって? あなたと結婚したことよ!」
捉えたのは僕だったはずなのに。ただ今はもう殺されないよう息を潜めて、存在を消すしか方法はない。
【あとがき】
今週もたらはかにさんの #毎週ショートショートnote に参加させていただきます。
今週のお題は、
子どもが生まれたあと「お父さん」になりそこねた「夫」の気持ちでかいてみました。
伝わるかな~
たらはかに(田原にか)さんの企画はこちら↓
前の週のお題で書いたものはこちら↓
いいなと思ったら応援しよう!
最後までお読みいただきありがとうございました!
頂いたサポートは全力で全力で書くことにを続ける力にします。