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【いちばんやさしい古事記の本】 -ほぼ1,000字感想文

○タイトル:いちばんやさしい古事記の本
○著者  :沢辺 有司
○発行  :彩図社 (2015/12/24)

■ざっくり概要

日本における神話である「古事記」の解説本。 大きく「①古事記とは何か②主要場面の解説③主要な神々紹介④所縁の地紹介」という4部構成になっており、周辺知識もインプットできる。 

特に興味深いのは、近代日本における古事記の取り扱いにまつわる変遷。天皇統治の正当性を主張する資料でもあるため、軍国主義と結びついてしまった過去があるとか。 故に我々日本人は、教育課程で古事記を学ばない。(現代の教育はGHQの影響を強く受けているため。)

 大人になってからこそ身に付けたい、教養だなと感じた。


■学びポイント

○古事記の生い立ち

古事記は8世紀初頭に成立した、日本で初めての歴史書とされる。古代の神々から天皇家までの系譜を軸に、天地創世から推古天皇までの時代が記載されている。

古事記作成を指示したのは、第40代・天武天皇。当時は歴史や神話について口頭伝承が基本であり、各豪族が、都合よく解釈したデマがまかり通っていた。この状況を脱するための一大プロジェクトが古事記と日本書紀の制作であった。

つまり、目的は天皇家の権威づけと天皇統治の妥当性の主張。


○「天つ神」と「国つ神」

古事記の登場神は、大きく「天つ神」「国つ神」に大別できる。「天つ神」は、天上界にいる神で、「国つ神」は人間界にいる神。そして「天つ神」のトップがアマテラスである。この系譜の先にあるのが天皇家。

古事記の基本構造は、「天つ神」と「国つ神」の対立であり、「国つ神」は民間信仰されていた神々を指している。この構造から、土着の地方勢力が、天皇を軸とした中央政権により統一されていった経緯を、神話を用いて伝承しているという見方がされている。

そのため、基本的に「天つ神」ひいきで物語は進む。「国つ神」は殺しをする一方、「天つ神」は暴力を振るわないなど、印象操作をうかがわせる描写の違いも明確にある。


○古事記の扱いは時代ごとに異なった

同時期に成立した古事記と日本書紀を併せて、記紀と呼ぶ。日本書紀は正式な漢文で、大人数の識者が関わっている。よって、日本書紀は公式な歴史書として考えらえることが多い。古事記はそのサブテキストと扱われるのが一般的であった。

状況が変わるのは1756年(江戸後期)。国学者の本居宣長が、古事記の重要性を主張した。そして明治に入ると、近代天皇制のもとで神道信仰が主流に。記紀はその聖典とされた。

1930年頃には、古事記は史実として扱われるようになり、言論統制も行われる。政治思想に悪用されるカタチで日本人に刷り込まれた。

このような経緯で、戦後は古事記を危険書物扱いすることに。この流れがあり、現代でも教育過程において古事記を扱わない。


↓出典元

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