我が家にいるおじいちゃん、ぴーくんの話
コロナ禍、我が家に魚がやってきた。
可愛らしいネオンテトラから始まって、グッピーが仲間に加わった。
ネオンテトラはある時一気に亡くなった。
魚の世界も弱肉強食。
いや、単に水槽の環境がネオンテトラには合わなくなっただけかも。
グッピーだけの水槽になり、交尾しては産み、死に、それが繰り返されるようになった。
知ってますか?グッピーって結構ヤバい奴らなんです。
共食いします。母親が産んだばかりの稚魚を食べます。
水槽の中で、生き残りを賭けた闘いや天下取りが繰り広げられていました。
その末裔がぴーくん。
いや、最近は私は「PG」(ぴーじい)と呼んでいた。
子供たちは嫌がったけど。
ぴーくんは、グッピーたちが生まれて死んで生まれて死んで…
最後に残ったオスだ。
1匹だけになってからかなり経つ。
メスもいないから、増えることもなくずっと1匹だけ。
ずっと、タニシやイシマキ貝といったペットを携え、1匹で大きな屋敷で暮らしてきた。
おじいちゃん1匹で。
競争相手もいない。悠々自適。
毎日、広い屋敷をのんびり泳いで。
目が潰れてるなーと思いながらも放っておいたら、いつの間に良くなっていた。
さすが一番最後まで生き残った猛者だ。
強い。
正直、適当なお世話しかしていなかったから、水質などの環境は悪かったと思うけど、ぴーくんは尾びれが動かなくなりながらも、ゆったり泳いでいて、毎日生きていた。
強いおじいちゃんだ。
私には、筋肉ムキムキのごっついおじいちゃんに見える。
だから、PG。
今日、ぴーくんが死んだ。
水槽を見たら、死んでいた。
あっけなく、死んでいた。
水槽の一番端っこで、くにゃっと、よわっちく曲がって。
我が家の誰にも、看取られることなく。
私達は水槽の中のぴーくんを見守ってきて、いるのが当たり前になっていた。
ぴーくんは、私が水槽の外からツンツンするとつーんと離れていく。
「PG」って呼ばれるのがイヤなのか?
新しいお水をあげると、その水飛沫に寄ってきた。
新鮮な水は、ぴーくんの刺激。
1つの小さな、でも、強い命を見守ってきた。
完全に混血な彼は、最強DNAを受け継いだからか、他のグッピーよりは1匹だけずばぬけて長く生き長らえてきた。
私達は、新しいグッピーを家族に入れることはしなかった。
きっと新しい子たちの方が死にそうだと思ったから。
でも、悠々自適な独り身は、実は寂しくなかっただろうか。
3年は生きたかな。
長生きしたね。
全うしたね。
ぴーくんを、ピーマンやトマトを育てている我が家の庭の畑の中に埋葬した。
土に還って、命をつないでね。
お疲れ様。
_終わり