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適性作文は感想文ではない!

公立中高一貫校の入学者選抜で課される「適性作文」は、課題文を読んでから設問に答える形で作文(適性作文)を書くのが標準的な出題のされ方である。

小中学校などの長期休業期間後などで宿題としておく課される「読書感想文」は、課題図書などの本を読んで作文(読書感想文)を書くのが標準な課題の出され方である。

どちらも何かを読んで書くという点ではおなじなので、適性作文と読書感想文は似たようなものだと勘違する人がいますが、実は全く種類の違う作文だということを理解して取り組まなければ、適性作文と読書感想文それぞれに評価に値する作文にはなりません。

適性作文問題集や適性検査過去問をしっかりと分析すれば、適性作文の読書感想文との違いは一目瞭然なのですが、世の中のほとんどの人は、中学や高校の国語教師ではないですし、プロとして適性作文や入試小論文の指導をしているわけでもないので、違いを明確に理解することは難しいでしょう。

小学生の中には適性作文を書こうとして、どうしても読書感想文になってしまう子がいます。課題文をふまえてあなたの考えを書きなさいという出題意図を正しく理解できないことや、そもそも意見など思いつかず感想しか思い浮かばないことから、そうしたことが起きることが多いです。

意見と感想は違います。

小学生の中には読書感想文にすらなっていない作文しか書けない子もいます。そうした子の多くは、課題文を適切に読み取れる読解力と、小学生として備わっているはずの幅広い教養が、絶対的に不足していることが多いです。どちらも学力ですから、広い意味での学力不足が原因です。学力不足のため表現力の不足も起こります。

意見と感想の違いこそ適性作文と読書感想文を分かつキーワードとなります。意見、つまり適性作文の内容は、広く理解され納得されうるものでなければ高い評価にはつながりません。

もちろん天才のように広く理解されず納得されないような革新的な意見を書ける小学生もいなくはないでしょうが、小6でそのレベルに達するような人はごくまれでしょうし、採点する中学や高校の教師の理解の範囲を超えるような超ハイレベルな適性作文を書ける人はほとんどいないでしょうから、教養があるような大人であれば誰にでも理解されて、教養があるような大人になら誰にでも納得してもらえるような意見であれば、適性作文としては成立しえます。

しかし、適性作文は読書感想文ではないので、感想しか述べていないような場合は、適性作文としては成立しません。どんなに素晴らしい感想を書いても、適性作文としては評価されません。

一方で、読書感想文は読者の個人的な感想が求められているのですから、広く理解され納得される必要は必ずしもありません。共感される必要も必ずしもありません。むしろ、誰もが思いつくような陳腐な感想では、高い評価はもらえないでしょう。

課題図書の内容を大きく読み外したり、課題図書で表現された意図から大きく外れたような、つまり課題図書との関係が疑われる感想でもない限り、読者のみずみずしい感受性が適切に(適切な表現力で)表現されていれば、広く理解されなくても、広く納得されなくても、広く共感されなくても、そのような感想もありえると判断されれば、読書感想文としては成立することになります。

適性作文を書く上で求められる能力としては、自分の意見を客観化できる力と、自分の意見を相対化できる力と、自分の意見を一般化(数学でいえば「漸化式」)できる力が求められます。課題や問題を俯瞰できる力と言い換えてもよいかもしれません。

適性作文で体験や経験が求められたとしても、適切にその体験や経験を客観化し相対化し一般化できなければ、体験や経験から感じ取ったことはただの個人的な思いでしかなく、広く理解され納得される意見にはなりません。

読書感想文と適性作文を、同時並行しながら書くことはお勧めしません。まだ幼さが残る小学生にはその違いを頭で理解することは容易ではないからです。どちらも中途半端になり、どちらもそれぞれの要件を満たせなくなる危険性があります。

おなじ理由から、適性作文と読書感想文は、おなじ指導者から指導を受けることはお勧めしません。その指導者が適性作文と読書感想文の違いを適切に理解できていて、適性作文と読書感想文のそれぞれを適切に指導し分けることができるのであればよいのですが、それにはかなり高い指導力が求められるはずです。加えて、指導者がどちらの指導をより得意としているかで、知らず知らずのうちにどちらかに偏った指導になっているおそれがあります。

そのような指導を受けると、得ることよりも、失うことの方が、多くなってしまうかもしれません。

読書感想文の指導を受けたければ読書感想文の指導だけをしている指導者に、適性作文の指導を受けたければ適性作文の指導だけをしている指導者に、指導を受けるようにすべきです。

最後に、国語指導をしている指導者なら適性作文の指導も適切にできると安易に考えるのも危険です。国語担当の塾講師や国語塾の講師でさえあれば、適性作文の指導を適切にできるわけではありません。

私立中学受験の国語講師の何人かに、適性作文の過去問答案の添削を頼んでみてください。芳しくない返答が戻ってくることが多いかと思います。

適性作文の指導を頼むのであれば、少なくとも公立中高一貫校への合格指導実績や公立中高一貫校への合格率実績は確認すべきでしょう。そして、その合格指導実績や合格実績がその指導力によるものかも確認すべきです。その指導者が所属している塾の実績はその指導者の実績とは限りません。むしろその指導者の実績ではないことがほとんどです。

塾の合格実績も割り引いて評価した方がよいことがあります。特に塾が模擬試験を主催している場合、模擬試験受験生の合格をその塾の合格実績としている場合があります。

少しでも怪しい点があれば、適性作文の指導を任せないのが賢明でしょう。

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