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Bar AM2:44
「いらっしゃいませ。今日もお仕事帰りですか?」
「ええ。とりあえずビールください。」
「かしこまりました。」
「あの人、今日も来てましたか?」
「ああ、実は先ほどまでいたのですが……。」
「そうですか。残念です。」
「でも、また来るとおっしゃっていましたよ。」
「その時はこっそり私に連絡くださいね。あと、時間稼ぎも。」
「仕方ないですね……。」
「でも、あの人、私のことなんて憶えてないかもしれない
僕が君の思い出になってあげよう
やまない雨はない、というけれど、ジュリーにはそれが希望の言葉には聞こえなかった。
「だったら、あの人の流したどんなに美しい涙でさえ、いつかは乾いてしまうんだな。」
駅からの帰り道、歩道に敷きつめられた桜の花弁を踏みつけながら歩いた。ジュリーにはそれがいたたまれなかった。春を殺しながら歩いているような気がしたのだ。
暗い部屋のベッドの上に横たわって、ジュリーは考えた。
「人は一生のうちに何度、
ジン・ハウス・ブルース
私は菜の花畑で生まれた。海のちかくだった。潮風にくすぐられて菜の花は黄色くうねっていた。
生まれた場所で酒を飲むのは変な気分だ。土曜日の午後の定位置は、決まって波打ち際だった。酔いどれの溜息はアルコールのにおいをさせながら空にのぼる。桟橋の先の釣り人はやがて夕焼けに掻き消される。海岸線に夜が落ちた。
波の音を聴いているあいだだけ、私はあの頃に戻れる気がした。海は、孤独な人間に優しかった。砂浜