僕の好きなアジア映画78: 私の少女
『私の少女』
2014年/韓国/原題:도희야/119分
監督:チョン・ジュリ(정주리)
出演:ペ・ドゥナ(배두나)、キム・セロン(김새론)、チャン・ヒジン(장희진)、ソン・セビョク(송새벽)、コンミョン(공명)、キム・ミンジェ(김민재)
もうすぐ新作長編『あしたの少女』の公開が控えている女性監督チョン・ジュリの長編デビューが本作です。
小さな港町の派出所へ左遷されたソウルのエリート警察官は、その地で父親と義理の祖母に虐待されている少女と出会う。彼女を救おうと奔走する主人公だったが、自身が同性愛者である明らかにされ、窮地に陥いって行く。閉鎖的な田舎町の人間関係のなかで葛藤する主人公と少女を丁寧に描いています。
同性愛者であることが発覚して都会から海辺の寒村に赴任してきた警官役にペ・ドゥナ。彼女の演技にハズレを見たことがない。本作でも警察官でありかつ同性愛者という社会から疎外された役柄を力むことなく、的確に演じている。
しかしながらこの映画で最も評価されるべきは、実母に捨てられて継父から暴力を受けている14歳の少女を演じたキム・セロンでしょう。『冬の小鳥』も素晴らしかったけれど、この映画でも劇中の台詞で評される「子供らしくなく、小さな怪物のように見える」少女をあどけなさと強く大人びた視線で、この世代の純粋性と魔性を見事に演じています。
どこかでも書いたことがあるのだけれど、この世代の少女たちの頭の中は僕のようなおじさんには最も理解し難く、一種の恐れすら感じることがある。その神秘性がキム・セロンによって見事に表現されているように感じます。
その後も多くの映画やドラマに出演し、美しい女性に成長していたキム・セロンですが、2022年12月16日にソウル・江南区の清潭洞で泥酔状態で運転し物損事故を起こし、道路交通法違反により在宅起訴されたいうことです。どうかこの才能がこのまま埋もれてしまいませんように。
この映画には、同性愛、家庭内暴力、男尊女卑、過疎、労働力不足、外国人労働者問題、不法滞在、貧困、飲酒などなど、韓国社会のさまざまな問題が詰め込まれています。社会から疎外されたこの二人の出会いの中にそれらを落とし込んだ秀逸な作品だと思います。
第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作品、第50回シカゴ国際映画祭特別招待作品、第25回ストックホルム国際映画祭:最優秀新人監督賞、第22回中国金鶏百花映画祭国際部門 主演女優賞、第9回アジア・フィルム・アワード主演女優賞、第34回青龍映画賞新人女優賞、第51回百想芸術大賞新人監督賞
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