見出し画像

僕の好きなアジア映画38:ただ悪より救いたまえ

『ただ悪より救いたまえ』
2019年/韓国/原題:다만 악에서 구하소서/108分
監督:ホン・ウォンチャン(홍원찬)
出演:ファン・ジョンミン(황정민)、イ・ジョンジェ(이정재)、パク・ジョンミン(박정민)、パク・ソイ(박소이)、チェ・ヒソ(최희서)、パク・ミョンフン(박명훈)、オ・デファン(오대환)、ソン・ヨンチャン(송영창)

とにかくノンストップの殺し合いだ。血まみれである。韓国ノワールをあまり観ない僕にはとても衝撃的な作品だ。劇中でなぜそこまで殺し合うのだと問われた殺し屋イ・ジョンジェが「理由?そんなこと忘れた」と曰うのだが、殺し合うことが自体が目的になってしまう凄まじい狂気がこの映画を貫いている。えーと、そんなことは忘れないでほしい。

この映画の魅力はもちろんノンストップのアクション/ヴァイオレンスなのだが、その殺し合いを続ける主役二人が素晴らしい。

まずはファン・ジョンミン。僕個人としては不得意なナ・ホンジン監督の『哭声』で、異常にバネの効いた踊りをする祈祷師が印象深い。『新しき世界』、『国際市場で逢いましょう』、『工作 黒金星と呼ばれた男』など主演作も数多いのだが、ノワールものやヴァイオレンスものの主演が多いので、それらをあまり見ない僕には新鮮だった。基本的には残忍な殺し屋だが、(おそらく)自分の娘と触れ合うときだけ目線も人格も全く変わって、優しい父親の顔になる。彼の役柄は、まだ人間性が感じられる役柄である。ファン・ジョンミンの演技は凶暴性との対比が絶妙。

『哭声』のファン・ジョンミン
本作のファン・ジョンミン
娘役のパク・ソイ。最近よく見かけます。アーモンドアイだね、この子。

そしてもう一方はイ・ジョンジェ。もう最近は世界的にヒットした韓国ドラマ『イカゲーム』のちょっと情けない主役として各方面から大いに注目を集めている。GUCCIのCMにまで登場。実は僕は彼の主演作を『イカゲーム』以外観たことがない。本作ではほとんどサイコとしか言いようのないヌメヌメと爬虫類的で残忍で、執拗に「仇」を追い詰めていく殺し屋を狂気とも言えるレベルで演じている。ほんと気持ち悪いというレベルの怪演と言っていい。

『イカゲーム』のイ・ジョンジェ
本作でのイ・ジョンジェ

この名優二人の凄まじいばかりの、ノンストップの殺し合いを演出した監督は、先に述べた通り僕の不得意なナ・ホンジンの『チェイサー』や『哀しき獣』の、いや〜〜〜になるくらい執拗で残忍な脚本を担当したホン・ウォンチャン。なるほど、あの脚本家が監督か。このしつこさ、なんか納得です。どぎついコリアン・ノワールがお好きな人には、たまらない傑作だと思います。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?