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僕の好きなアジア映画61: ミナリ

『ミナリ』
2020年/アメリカ/原題:미나리(英:Minari)/116分
監督:リー・アイザック・チョン(정이삭)
出演:スティーヴン・ユァン(연상엽)、ハン・イェリ(한예리)、ユン・ヨジョン(윤여정)、アラン・キム(앨런김)、ネイル・ケイト・チョー

この映画、なんとなく避けていました。評判が良いことはもちろん知っていましたが、「アカデミー賞最有力」(下のポスター参照)なんていう売り方が嫌だったこと、そして米国のアジア系移民2-3世の作る映画って、アジア人の描写にどこかしら違和感を感じることが多く、それ故この映画をさけてきました。

監督はコロラド州デンバー出身の韓国人2世リー・アイザック・チョン。A24の配給だし、これはもはや完全に「アメリカの映画」だと思っていました。でもこれ、立派にアジアの映画です。この映画を改めて観る気になったのは監督がデンバー出身で、単に以前留学していた地であるという些細なきっかけです。何を今更なのですが、遅ればせながらこれは素敵な映画ですね。

簡単に言ってしまえば、韓国人の移住第一世代と第二世代の苦難と希望とを描いたもの。そこに一つ上の世代の祖母というさらに韓国そのものを体現する人物像を絡ませて描いています。主人公夫婦に『バーニング 劇場版』のスティーヴン・ユァンと、ドラマ『緑豆の花』やチュン・リュル監督の『春の夢』などのハン・イェリ、そして物語のアクセントとなる祖母役に韓国を代表する名優ユン・ヨジョン。こういう韓国でもバリバリに活躍中の役者を使うことで韓国の映画たるリアリティーがもたらされました。

スティーヴン・ユァンとハン・イェリ
ユン・ヨジョンが素晴らしい。味わい深い。

最近は米国への留学すら減ってしまった日本人に比べ、韓国のドラマなどを見ていると米国への移住や留学が割と普通に描かれています。実際には韓国人はおよそ190万人程度、日本人は140万人程度の移民がおり、50万人ほどの差なのですが、最近日本ではあまり話題になりません。韓国人は米国に移住しても、韓国人コミュニティーを形成し、それを大切にします。かといって決して社会に溶け込まないわけではなく、コミュニティーとして社会に対する発言をします。社会に溶け込むことを重視する日本人との大きな相違があります。

この映画では、そんな韓国人家族のもがきながらもその地に順応し根を張っていく様子を、タイトルである「ミナリ(芹)」の、どこにでも逞しく根付き繁殖していく強い生命力に準えています。それは韓国から祖母が持ち込んだものであり、彼らのアイデンティティーそのものでもあるのでしょう。この2世の監督は、しっかりと韓国人としての誇りを持っていると感じます。映像もとても美くしい映画でした。

アカデミー助演女優賞、ゴールデングローブ賞 外国語映画賞、全米映画俳優組合賞助演女優賞など。


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