🎥映画『ラストディール 美術商と名前を失くした肖像(ONE LAST DEAL) 』🎬
『The best offer 鑑定士と顔のない依頼人』を見て、その映画の雰囲気がとても気に入ったので、同じような空気感に興味をそそった映画。
『The best offer』はイタリアの鑑定士の映画だったが、この映画はフィンランドの美術商。
どちらの主人公も年配の男性ということ、同じ美術品を扱うところに共通点を感じて、北欧版の同じ映画なのかな?と思ったりしながら見はじめた。
あらすじ
フィンランドで美術商を営む老紳士は、売れ行きに悩み店を畳もうか悩んでいた。
オークションで「海辺の絵」を予算500ユーロのところを600ユーロで落札するも、自分の店に来たお客に落札額を知っているから同じ値段で売れと言われる始末。払えない督促状も届いていた。
ある日、ちかくのパン屋のようなところでシナモンロールのようなものをひとつだけ買い、家に帰る途中、長蛇の列をなす画廊の横を通り過ぎる。
気になった老紳士は画廊に行き、作者不明の男性の絵につよい興味を惹かれた。
友人からは「作者のサインのないリスクのある買い物はやめておけ」と言われたものの、名画かもしれないという直観をぬぐい切れない老紳士は、個人的に調べることにする。
そこへ娘から、「息子の職業体験をやらせてほしい」と電話が入る。
娘との関係は良いものではなさそうで、孫の職業体験などに、かまう暇はないといった様子の老紳士は「考えておく」といって電話を切った。
老紳士は、作者不明の絵画について調べるため、オークションカタログを借りれるか問い合わせる。
貸出は出来ないと言われ、店をあけることが出来ない老紳士は仕方なく孫をの職業体験を受け入れ、オークションカタログを閲覧しているあいだ店番を頼むことにした。
店番中の思わぬ来客者に、600ユーロで落札したあの「海辺の絵」を、孫が1250ユーロのところを1500ユーロで売ったことで、老紳士はおどろく。
いい取り引きが出来たということで、早めに店を閉め、老紳士(おじいちゃん)に会いに行った孫は、オークションカタログから作者不明の絵画の手がかりになるものを探すよう頼まれる。
そこで、偉大な画家レーピンが書いたキリストであるという情報をつかむが、それが作者不明の男性のものと同じかどうか確認するための写真が載っていなかったことから、贋作ではないと証明ができないという壁にぶつかった。
本物であれば120,000ユーロほどの価値があるが、画廊のオーナーはその価値に気づいていないため、安く落札することが出来る。
しかし本物でないと価値がないため、オークションで落札するにはまだリスクが残っていた。
そこから、孫とおじいちゃんの二人三脚で、作者不明の男性の絵が価値ある名作であると突き止めるまでが描かれ、物語は進んでいく。
感想
ものすごくよかった。
『The best offer 鑑定士と顔のない依頼人』のこの先どうなるの感と、気の毒だけどしみじみと感じるちょっとしたロマンスもすごーくよかったけど、また違うジャンル。
自分が情熱をそそげるものへの忠実な行動と、それを共にすることで、孫とすこしずつ築かれていく信頼関係の感じがすごくよかった。
個人的に、はじめはひとつしか買っていなかったシナモロールのようなものをふたつ買い始めるところに、孫との関係が深まることで老紳士の孤独がやわらいでいく様子が描かれているようでなんだか癒された。
というかその孫とのやりとりがこの映画の一番の魅力だと思った。
若者とお年寄りのわかりあえない部分と、若者とお年寄りだからこそお互いに補い合える部分が、ところどころに描かれていて微笑ましかった。
名作とわかったその絵画を落札するお金さえ工面できない老紳士が、必死にお金を集めようとする姿は、美術商という仕事への熱意そのものだと感じた。
シングルマザーで、元夫の借金を返している娘にまでお金を貸してという姿は、情けないか滑稽かに見えてもいいのに、まったくそれを感じなかった。
息子を持つ娘からしたら信じられないと思うような老紳士の行動も、老紳士とその孫にしかわからない関係性があるから成り立っていた。
作者不明の名作の絵画は、それだけで名作だったけど、ふたりがたどってきた軌跡を加えてより価値が増していたなあと思った。
あとがき
個人的に、オークションのシーンがすき。
『The best offer 鑑定士と顔のない依頼人』ではもっとオークションのシーンがドラマチックに描かれていたけど、馴染みがないからか、あの独特の雰囲気に高揚感みたいなものを感じた。
日本でいうと市場の競りも同じ感じなのだろうか、ちょっと見てみたいけど、テレビなどで見るそれは言葉がわからない印象が。。
それだと楽しめない気がする。
あとは美術品とかに関わる人って勝手に裕福なんだろうと思っていたけど、美術商はちがうっぽい。落札するのにも、売るのにもなかなか苦労していた。
オークションでトントン!と木のこづちみたいなのを叩く人、何者かわからないけど、あの人たちは裕福そうなかおりがした。。
あとはやっぱりヨーロッパの建物、とびらの重厚感、石畳の感じ、、、すごく素敵で移住したくなった。
だけど、ちょいちょい工事現場のような、荒地のような場所が出てきたとき、やっぱりこういう場所もそりゃあるよね、と思った。
そして憧れだけで訪れて、初めてくる場所なのに感じる、なつかしさと切なさと寂しさみたいなものってそういう場所から出ているよなあと思ったことがひそかに印象的だった。
おすすめ度
★★★★★