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【第6話】私と猛犬ケルベロスの冒険の記録【創作長編小説】

第1話はこちらのマガジンから読めます。

高台の教会へ向かう2人

ミキラ帝国軍の兵士に火を投げられ焼け酷い有様になった町で出会った少年の案内で、私とケルベロスは町の避難所に行くことになった。その場所について少年に聞いたら、町の高台にある教会のことだった。少年は町の住人が火事から逃げれるように、毛布を被って火事の火の粉を浴びないように自衛しながら一軒一軒に声をかけて高台の教会に行くように誘導したらしい。バケツを被っていたのは突然に空から水がバシャーっと降ってきて水浸しになったからと少年は言っていた。私が弓で大蛇の魔法を使って町全体の炎に大量の水を降らせ消化したせいなんだけど、私は少年を混乱させないように黙っておいた。

「あんた、その獣はどこの生き物なの?変わってるね。なんで頭が3つあるの?」
教会に向かう途中、少年はケルベロスを物珍しそうにまじまじと観察していた。ケルベロスはケルベロスで、私と少年の空気を読んでいるのか、少年に対しては威嚇したりせず大人しく撫でられてヘッヘッヘッと舌を出して機嫌が良さそうにいい子にして歩いていた。

しばらく20分くらいは歩いただろうか。高台に行くために階段を何段も登り、私はつい最近までは疫病にかかりずっとベッドに寝込んでいたため脚力が落ちていて体力的にきつく息が上がった。
「お姉ちゃんて、体力全然ないね。」
少年に言われ、
「疫病にかかって寝込んでいたから、こんなに歩くのは久しぶりなの。」
と、私は死神や冥界のハーデスのような怪異な存在ではなく普通の人間と久しぶりにかわす会話に、人間らしい懐かしさと安心感を感じた。少年から私はどのように見えているのか。頭が3つある変わった犬を引き連れ、大きな弓を背負う私は、普通ではないと思うんだけど、町が焼け大惨事で生きている人が周りにいない状況なので私は町に浮くこともなかった。少年の顔は真っ黒な煤だらけで、身体にはたくさんの火傷の跡があり、とても痛そうだった。燃え盛る炎の中で町の人を助けるために一生懸命に走り回ったのだろう。少年は明るくハキハキとした立ち振る舞いで私を教会に案内してくれているが、少年もきっと家族が町の火事に巻き込まれて心が傷ついているに違いない。
「ねぇ、あなたの家族は?」
私は少年に聞いた。
「俺の家族は教会に逃げた。家族といってもおじいちゃん1人だけだけど。おんぶして走って高台まで登ったから大変だった。」
私は少年の家族が無事だと知りとても安心した。だってこんなに勇気があって心優しい少年の家族が火事で亡くなったなんて聞いたら胸が張り裂けそうに苦しいから。
私は少年に自分は既に人間界で一度亡くなった存在で冥界の遣いとして蘇った者であることを話した。私の死因が疫病であることも、お父さんお母さんが同じように疫病にかかっていることも。そして親友のアリサも疫病であることも。話せることは全て教会に向かうまでの短い時間だったけど話をした。そうしたら、少年も、1年前に疫病でお父さんとお母さんを亡くした話をしてくれた。お父さんとお母さんが亡くなったから、今はおじいちゃんと2人暮らしをしていると、少年は辛そうな瞳をして私に教えてくれた。
「教会には30人くらい避難している人がいるよ。その中にあんたの家族がいたらいいな。」
少年はそう言い、高台の教会に向かうための階段で息を切らす私の背中をグイッと後ろから押した。ケルベロスもゆっくりドシンドシンっと、ケルベロスの大きな足には小さすぎる階段を踏みしめながら私と少年の後ろをついてきていた。

ミキラ帝国軍の愚かな国策

教会に到着してさっそく私は中に入り、避難している人達全員の顔を確認した。しかし、そこには私の探すお父さんとお母さんの姿はなかった。残念なことに親友のアリサの姿もなかった。

「ウッ…」
悲しくてまた涙が瞳から溢れて泣いてしまった。少年は泣く私の肩に手をポンと置いて首を横にふっていた。避難してきた教会の中の人たちも、泣く私の姿を見て悲しそうにしていた。この後、私は涙を堪えながらであるが、町の火事の発端はミキラ帝国軍の5000人ほどの兵士が町に火を投げ入れていたせいであると教会に集まる人たちに話した。

すると、ずっと教会の礼拝堂の椅子に座って黙って話を聞いていた1人の老人が眼をクワッと見開き、
「また奴らが攻めてきたのか!」
と、大きな声をだして、老人はミキラ帝国軍とこの教会のある町との歴史について語り始めた。この老人は少年のおじいちゃんだ。おじいちゃんの話を説明すると、私たちの町はゲイン帝国の領地内で、隣接するミキラ帝国のすぐ側にあり、国と国の国境にちょうど位置している。だから国同士が争った時、なにかにつけて侵略の的に遭いやすく、今までも歴史の中で私たちの町は、ミキラ帝国からの侵略攻撃を何度か受けたことがあった。

そして今回のミキラ帝国による火による襲撃は、私達の住む領地のゲイン帝国の食糧を、ミキラ帝国に無償で譲渡させるための強引な交渉手段の可能性があるとおじいちゃんは語った。元々ミキラ帝国は国土環境の関係で食糧の収穫が豊かではなく貧しく、さらに疫病が流行で食糧難に拍車がかかってしまい、非常に辛い状況にあった。そのため、ミキラ帝国のミキラ王は、国の食糧難をなくすため、別の国の領地侵略に必死になり、強引な国策を行なっているのだそう。ミキラ帝国が食糧難で困っている状況だったとしても、火を他国の領地に投げ入れ町を潰す侵略行為はあまりにもやり方が酷いし、貧しさの原因となっている疫病がなくなるわけではないのに、なんて愚かなんだろう。

おじいちゃんの話を聞いて、私はミキラ帝国軍の理不尽な侵略を止めるためにはどうしたらいいのか、考えたんだけど。やっぱり疫病を国からなくして、病気で苦しむ人々を減らすのが1番なんじゃないかと思ったの。
冥界のハーデスも、人間界からの死者が増えて、死者の魂を扱う冥界の仕事が増えて困っていると言っていたし、疫病制圧という私の与えられた使命を一刻も早く果たしてみんなを救いたいと気持ちがさらに強くなった。私のお父さんとお母さん、そして親友のエリーは教会の中にはいなかったけど、火事から避難してまだ生きている可能性はある。疫病制圧に成功したら、3人を人間界でゆっくり探そう。

私は少年と離れるのが寂しくなり、自分のことを忘れないで欲しいと感じた。町から教会の高台へ少年と行った時、本当はケルベロスの上に乗ればすぐ教会に着いて早かったのに、わざと少年と話を長くできるように歩いた。甘酸っぱい生まれて初めての不思議な気持ちで…私は自分のショルダーバッグの中に入れていたお父さんとお母さんと自分の写った家族写真を少年に渡したの。
「私は今から時空の歪みにケルベロスと行って疫病の病魔を弓で制圧してくる。だからあなたは、この町を守っていて。写真は私の顔写真が写っている。私のお父さんとお母さんも写っているけど。この写真をあなたにあげる。世界にたった一枚だけの写真だよ。」
少年は私から写真を受け取って、少しだけ頬を赤く染めて照れ臭そうに大きく頷いた。私も頬が赤くなっていたと思う。その時無意識に手と手を握りあって指を絡めていた。

「おじいちゃん。町の歴史を教えてくれてありがとう。私はこの町に生まれて17年目だけど、国の話は今まで知らなかった。私は勉強不足だったみたい。親友のアリサに会ったらおじいちゃんに聞いた話をして、町について教えてあげようと思うわ。ありがとう。」

おじいちゃんも大きく頷いた。私は疫病で一度亡くなってしまった存在で冥界のハーデスの遣いとして契約を交わし人間界に蘇ったことを教会のみんなに話したら、みんなが私を励ましてくれた。疫病をなくしてくれたらとても嬉しいと言ってくれたの。だから私は悲しみに明け暮れずに前を向いて問題に立ち向かうべく魂を震わせて立ち上がった。

私は教会の中に避難していた人々に見守れながら、ケルベロスに乗って時空の歪みに行くために夜の町を出発することになった。ケルベロスには頑張ってもらって途中で休憩を挟まずに、とにかく急いで目的地に行くことにした。うかうかしていると氷漬けになったミキラ帝国軍の5000の兵の氷が溶けて、また町を攻撃されてしまう!太陽が昇る前に急がなきゃ!

一続く一【不定期配信予定】

続きの第7話はこちらから。

見出し画像は稲垣純也様にお借りしています。教会のお写真です。教会が避難所ってベタな設定だなと執筆しながら思いました。

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最後まで読んでくださってありがとうございました。創作は自由!今回はエリーに淡い恋をさせてみました。

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戦略的に小説を無料公開に第6話だけしてみた。続編はまた350円にして販売するよ。読者様が増えたらいいな🥰と願いを込めて❤️

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