2022年暮らした街の回顧録:神奈川・小田原
1年間家を持たずに旅するように暮らしてきた私が、2022年に暮らした街を振り返る回顧録エッセイです。当時書いた日記やnoteを読み直し、さらに「今感じること」を付け加えたようなもの。多拠点生活の中で、奇跡のように出会った街に感謝の想いを込めて。じっくりと丁寧に書いていきます。
2021年の暮らした街を振り返ったnoteはこちら。
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神奈川県の西部に位置する小田原市。なんとなく小田原という地名は知っていて、多拠点生活をする中で出会う人出会う人に「小田原はいいところだよ」と言われていたので、訪れるまで勝手に期待を持っていた。
なぜ、多くの人に小田原に立ち寄ることを勧められたかというと、私が「海のある街が好き」で「でもある程度の都会が好き」ということをよく話していたから。小田原の街の印象は、その通り、「海が近い、思った以上の都会の街」だと思った。
小田原にいても、私は朝も昼も海へ散歩に出かけた。海沿いに高速道路が走っていたり、波が荒々しかったりと、想像していた「海のある街」とは少し印象が違うと感じたことを覚えている。
そう、小田原の海は訪れる前のイメージとはいい意味で違っていて、「迫力のある、深い青の海」だと直感で思った。
小田原城の天守閣へ登って360度のパノラマビューを見たときに、目の前に延々と広がる青い海に、思わず「青!」と心の中で突っ込みをいれたほど。なんだろう。本当に、異常なほどに「青いなあ」と思ったのだ。
もちろん、海が青いのは当たり前で分かり切っている事実なんだけれど、それ以上に「青い」と思ってしまった。あのときの感情は何だったんだろう、と今になっても感じる。濁りのない青い海と、その先にはうっすらと消え入りそうな空の色。どこか懐かしい雰囲気を漂わせながらも、くっきりと浮かび上がっていた青の世界が忘れられない。
ひとことに「海のある街」といっても、その街の雰囲気に溶け込んで全然印象が違うことを知った。たとえば、広島の尾道は海とは言ってもほとんど波のない川のような穏やかさだ。静岡の用宗は、海自体ではなく「海とともに暮らす人たち」がよく見える印象だった。小田原の海は、青い青い果てしない大海原のような。
こうやって、街自体の魅力と海が溶けあって、私たちが見ている世界を作っているんだなあ、と、ふと思い知ったのだ。
小田原には「御幸の浜」という有名なスポットがあって、私はここに何度も足を運んだ。家やビルが立ち並ぶ街を抜けて、高速道路の高架下にあるトンネルをくぐって海に抜けていく景色は、何度通っても感動して。
ただのコンクリート状のトンネルに海が反射して青く映っていたり、トンネルが暗い分、その先の青がさらに濃く鮮やかに見えたりとか。ひとつ景色を切り取るだけで、こんな姿に出会えるなんて。
そんなことを思いながら、何度も行ったり来たりして感動をじっくりと噛み締めりたりした。言うならばわくわくした向こうの世界へ、扉を開けていくような。海のある世界と、日常がある街を行ったり来たりしながら、何度もその「青さ」だけをじっくりと味わっていた。
たった4日しかいられなかったのだけど、私に青の深さを教えてくれた街。滞在中はずっと晴れていて、キラキラに輝く青い青い海と、雲すらないきっぱりとした青空がずっと心に残っている。またあの青さに会いにいけたら。
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2022年、暮らした街の回顧録エッセイをまとめたマガジンです。出会ったすべての街と人に愛をこめて。