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2022年前半、出会えてよかった本TOP10

「年間100冊の本を読む」と2022年のやりたいことリストに掲げた。5月24日の段階では50冊の本を読んでいるので、目標はまずまず順調。にしても、あっというまに2022年も半分が過ぎ去ってしまった。

さらに、少しだけ寂しいのは、読んだものや感じたことは、次々に忘れていってしまうこと。そのときは感動したり「なるほどな~」って思ったりしていても、何ヶ月も経つと読んだときの自分の気持ちなんかもろくなくなってしまう。

なので、今回は2022年前半に出会った50冊のうち、特に心に残っている本を10冊ピックアップして紹介してみたい。読んでいたときの気持ちや背景、好きなフレーズなどを振り返ってみようと思う。

旅先では海を見ながら本を読むのが好き

私はいま、家を持たずに旅をする暮らしをしていて、いつも旅先で本を読んでいる。ブックオフで買った本、旅先で出会った人に勧められた本、滞在先に置かれていた本、そんな偶然の出会いの中で手に取った本が多い。

本を読むことそのものが好きなのはもちろんだけど、本を通しての人との出会い、そのとき感じた自分自身の感情との出会いも、同じくらい愛おしいなあ。

2022年に読んだ本が必ずしも新刊というわけではない。でも、だからこそ、「いまの私だからこそ出会えて良かったなあ」と思えた本がたくさんあった。当時の読書メモを抜き出しつつ、そのときの感情を振り返っていこうと思う。

2022年出会えて良かった10冊の本たち

①僕の人生には事件が起きない/岩井勇気

これ、意外にも2022年もっとも心を動かされた本だった。今更感はあるけれど、本当に本当によかった。いやあ、もう本当に心に響いた言葉、ぜんぶ手帳にメモしてあるくらい。

日常生活に、いつもやらないことを少し加えるだけで全然違う風景に見える。誰の人生にも事件は起きない。でも決して楽しめない訳ではない。平坦な道に見えても地面に頬を擦り付けてよく見てみると、いびつにぐにゃんぐにゃんに曲がっていたりする。どんな日常でも楽しめる角度が確実にあるんじゃないかと思っている。

僕の人生には事件が起きない/岩井勇気

私がいま旅する暮らしをしていて、「旅先のハプニングや特別な出来事だけを楽しむんじゃなくて、何でもない旅先での日常・日々の暮らしを愛せるように」みたいな価値観は、この本を読んだことでさらにブラッシュアップすることができた。

旅先はべつに非日常だけじゃない。毎日ハプニングや特別なことが起きるわけじゃない。でも何でもない毎日にも、小さな幸せや自分自身の気持ちの変化はしっかりとあって。そんな日々をまるごと愛せたらなあ、と本当に改めて感じられた1冊。本当に本当に出会えて良かった…!

②断片的なものの社会学/岸政彦

社会学者としておもに沖縄や大阪の人々にインタビューを続けていた筆者が、論文などに使用した以外の「なんでもない」インタビューや人との出会いを綴った本。学びというよりは、単純に読み物として面白かった。

広い地球で「この」瞬間に「この」場所で「この」私によって拾われた「この」石、そのかけがえのなさ、無意味さに、いつまでも震えるほど感動していた。

断片的なものの社会学/岸政彦

私もけっこうこういう思考もっているな~なんかどうでもいいことに意味づけをしたくなるというか。「このとき」に「ここにある」ことについて考えてしまったり。

③とるにたらないものもの/江國香織

江國さんの言葉、言い回し、言葉から感じられる世界観、すべてが大好き。旅するようになってから、よりこういったささいな、けれど甘美な言葉を吸収するのが好きになった気がする。旅先ならではの繊細な感覚に、江國さんのより繊細で甘美な言葉がどんどん刺さっていく。

この本は短いエッセイ集。一つひとつの言葉をどこかの箱に保管しておきたいな、そしてたまにその箱から取り出して「あぁ素敵だ」と何度でも思いたいな、と感じる(意味が通じるかはちょっと分からない…)。言葉のお守りにしたい。

ケーキ、という言葉の喚起する、甘くささやかな幸福のイメージ。大切なのはそれであって、それは具体的な1個のケーキとは、いっそ無関係と言っていい。「何が好きですか」と訊かれて、迷わず「ケーキ」と答えるような単純さで、私は生きたい。

フレンチトーストが幸福なのは、それが朝食のための食べ物であり、朝食を共にするほど親しい、大切な人としか食べないものだからなのだろう。

とるにたらないものもの/江國香織

④ハゴロモ/よしもとばなな

失恋したあとの、あの裂かれるくらいの傷みが徐々に時間の経過とともに薄れていく様子を描いた小説。時間ってすごいね。何度も引き戻されそうになりながらも、前を向きつつ、でもどうしようもなく辛い夜を越えて、またちゃんと立ち直れる、その過程が少しユーモラスに描かれていて面白かった。

時間というもののおそろしい力を、私は実感した。まるで川の水に押し流されるように、もうたとえ戻りたくても、その感じのしっぽにさえも触れることはできなかった。自然に、ただなにげなく。時間はそういうふうにしか過ぎていってほしくなかった。

ハゴロモ/よしもとばなな

⑤どこでもいいからどこかへ行きたい/pha

この作者と旅への価値観が似すぎていてびっくりした。何が似ているかうまく言語化できないんだけど、この本を読み進めていると「ああ、ほんとうに!こんな感じで私は旅を楽しんでいる(楽しみたい)んだな~」と大共感できた1冊。「旅先でふつうに過ごす」ことの楽しさをこの方がすでに言語化してくれていた。

僕にとって旅行というのは普段しないような珍しい体験をしたくてするものではなくて、ただ自分のいつもの見慣れた日常を抜け出して、知らない土地で行われている別の日常を覗き見したくてしているようなところがあるのだと思う。

どこでもいいからどこかへ行きたい/pha

いや~~~まさにすぎる。さっきも伝えたけど「旅先のハプニングよりも旅先の日常」を愛したい。そこの土地で自分が起こす特別なことよりも、そこの土地でふつうに暮らす人々の生活や考えていることを少しだけ覗いてみたい。そうなんだよなあ。

⑥マチネの終わりに/平野啓一郎

あまりに有名すぎるけど、初めて読んだ。映画も観ていない。けど、頭の中にずっと福山雅治さんと石田ゆり子さんが浮かんでいて、2人が頭のなかで距離を縮めたり離れたりしていた。少しじれったいけど、夢中に読み進めていった。文章を読みながらも、頭の中に切ない表情とか感情とかが鮮明にイメージできて、ページめくる手が止まらなかったな。

人は変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?

マチネの終わりに/平野啓一郎

たしかに、過去の捉え方って、「そのとき=今」の自分自身がどう思っているかで簡単に変わってしまう。プラスにもマイナスにも転じるし、未来の自分自身の行動によってどっちにもなり得る。もろい。だからこそ、そんな変化もしっかりと味わって、過去ですら「こうやって生きてきて良かったなあ」と常に伏線回収できる日々でありたいな。

⑦ふたつのしるし/宮下奈都

20年の長い年月をかけて、2人の「ハル」がつながっていくお話。それぞれの視点で6年ずつくらい経った出来事をぽんぽんっとのぞき見れたのは面白かった。

何の前触れもなく突然ひらめくようなことって、実はそんなにないんだと思うのよ。遺棄しているかどうかは別として、それまでにいっぱい準備があって、考えたり体験したりしたことの積み重ねの先に、ぱっとわかることがある。それが勘ってものよ。

ふたつのしるし/宮下奈都

このフレーズは物語の進展にはとくに関係のない、どこかのさりげない会話のなかで出てきた言葉なんだけど、なぜだかすっごく引き込まれた。たしかに、「何かを思う、判断する」ことは、いままでの自分自身の経験や価値観があってこそ。積み重なっているからこそ、その先に何かを感じることができるんだな。

⑧人生の旅をゆく/よしもとばなな

旅先で読みたい本を探していると、どうしても「旅」というワードが目に付いてしまう。旅をしながら、一緒に旅をしている様子を味わいたいし、旅先でしか感じられない何かを「あぁ分かる分かる」と共感したい。そんな気持ちで手に取ったエッセイ本。

もしも、カレーにたまたま猛毒が入っていて、今日死んじゃったとしたら、私はきっと、やっぱり自分がこの1皿を選んだんだから仕方ないなと思って死にたい。

人生の旅をゆく/よしもとばなな

どんなささいな行動であっても、いまここに立っているのは、今までの自分が何十通りの選択をしてきて、「自分で選んできた」ということ。そんなささいな「選択」が積み重なって、「いまこここにいる自分」に繋がっていると思うと不思議だけど、妙に納得感を得られる気がする。

⑨100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート/松浦弥太郎

松浦さんの本はよく読んでいるんだけど、さりげなく読み過ぎてどの本を読んだか読んでいないか分からなくなってしまう。これはきっと初めて読んだ。ゲストハウスに置いてあったので、夜寝る前に軽やかな気持ちで読んでいたのを覚えている。

シンプルに生きる。すべきことは少しでいい。見て、見て、見続けること。いったん見たら、もう一度じっくり見る。「これはなんだろう?」と考えながらまた見る。すぐに納得せず、見続けたいものです。まんなかだけではなく、周辺もよく見る。考える。

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート/松浦弥太郎

丁寧に、しっかりと、確実に。そんな松浦さんの思考をしっかりと受け取れたようで面白かった。

⑩また旅/岡本仁

写真と文章で楽しむ、旅のガイドのような本。特有の視点とちょっとずれたその街の感想がかかれていて他のひとの頭の中を覗いているみたいだった。しかも、京都、奈良、金沢、唐津、神戸、尾道、名古屋、浜松など、私が好きな街についてたくさん書かれていて、共感したりちょっと違う視点だな~って思ったりするのがいちいち楽しかった。

自分が住んでいる街ならば、いつも通る道は決めっていて、歩きながら道の両側をキョロキョロと眺めることはない。見ているようで見ていない。街を観察するのは旅行者の特性なのかもしれない。

また旅/岡本仁

この文章のあとに、名古屋の街(とくに地下鉄の駅)にモザイク壁画が多いという話が続いていて。名古屋に住んでいた私にとっては当たり前すぎてたしかに壁画があるような気もするけど、ちゃんと「壁画」と認識してみたことはなかったな…まさに、「街を観察」できるのは、知らない土地へ降り立った旅行者だからこそかもしれない。

本を読む時間について

旅先のブックカフェ(電気読書座/静岡市)

私が「本を読むのが好き」というときには、本を読むのはもちろんだけど、本を選ぶ時間、本を読んでいる空間、そのとき感じたこと、読後感、すべてが好きなんだなあ、と今年旅をしながらたくさんの本を読んで感じた。

旅先でブックカフェ巡りをしたり、街の図書館に立ち寄ってみたりして、本を読む以外の空間、時間もまるごと楽しんでいたような気がする。そのときの感情とリンクするのもおもしろい。

2022年にはいってから、純粋に私は「言葉」をたくさん楽しめた気がする。小説の物語自体を楽しむ、というよりは、1冊の本に散りばめられた言葉を拾い上げていくような感覚

だから、今回10冊を振り返ってみても、心に残ったフレーズは、別に物語の進展に大きな影響を与えたものではなく、登場人物が何気なく発した言葉とか感情だったりもする。そんな何気ない言葉との出会いが面白いんだと思う。

よい本にたくさん出会おう

2022年後半、残り50冊を目指して本を楽しむぞ。おすすめの本や「これ読んで欲しい!」みたいなとっておきの本があれば、コメントに残してください。51冊目に迎えたいと思います◎

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