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2024年上半期に読んだ本 │ 私を幸福にさせる読書時間。

6月が終わりに近づくと、上半期という大きなくくりで日々を振り返りたくなる。この半年間を俯瞰してみて、「頑張ったな~」とか「こんなに積み重ねてきたんだな~」とか、そういった類のものもあれば、「できていないこともあるぞ~」という気持ちもあったり。

どのみち、できたことからもできなかったことからも、結果として「気づき」は得られるんだから、できなかったことを責める意味で振り返るわけではないんです。「頑張ったよね、私」という優しい気持ちで包んであげられたらいいんじゃないかな。

ということで、上半期の振り返りシリーズ、まずは読んだ本について振り返っていきます。

というのも、「その時々に読む本」というのは、「その時々の気持ち」を反映していると思うから。その時の私が必要だと感じる本を手に取っているという節があるからこそ、読んだ本を振り返ることで、その時々で向き合っていた私が見えてくることがある。

そう信じて2024年上半期に読んだ本を振り返ってみます。

2024年上半期に読んだ本は、34冊!

まずは、読んだ本を一覧。

  1. 夫婦間における愛の適温/向坂くじら

  2. 一人称単数/村上春樹

  3. 約束された移動/小川洋子

  4. こぽこぽ、珈琲

  5. 夢に迷って、タクシーを呼んだ/燃え殻

  6. 北欧時間/日暮いんこ

  7. 受いれる/加島 祥造

  8. 月と雷/角田光代

  9. 〈あの絵〉の前で/原田マハ

  10. モネのあしあと/原田マハ

  11. 整える、こと/広瀬裕子

  12. なめらかで熱くて甘苦しくて/川上 弘美

  13. 鈍感になる練習/齋藤孝

  14. ラブ・ストーリーを探して/小出鞠るい

  15. 嫌いなら呼ぶなよ/綿矢りさ

  16. リボルバー/原田マハ

  17. 本日は大安なり/辻村深月

  18. 白ゆき姫殺人事件/湊かなえ(再)

  19. 恋愛の発酵と腐敗について/錦見映理子

  20. 歩き旅の愉しみ : 風景との対話、自己との対話/ダヴィッド・ル・ブルトン

  21. 結婚は人生の墓場か?/姫野 カオルコ

  22. 最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方/堀田秀吾

  23. 世はすべて美しい織物/成田名璃子

  24. ここじゃない世界に行きたかった/塩谷舞

  25. 中庭のオレンジ /吉田篤弘

  26. 妻のトリセツ/黒川 伊保子

  27. 私は女になりたい/窪美澄

  28. 人生ベストテン/角田光代

  29. 犬とハモニカ/江國香織

  30. 頭んなか「メンヘラなとき」があります。/精神科医いっちー

  31. 私はあなたの記憶のなかに/角田光代

  32. 旅の効用: 人はなぜ移動するのか/ペール・アンデション

  33. 反応しない練習/草薙龍瞬

  34. このプリン、いま食べるか? ガマンするか?/柿内尚文

2024年上半期のベスト本TOP7

では、読んだ本一覧から、特に印象に残っている本を10冊抜き出してみます。

夫婦間における愛の適温/向坂くじら

向坂くじらさんと夫の会話ややり取り、態度などから「さりげない愛」を感じられる1冊。たまにクスっと笑ったり、パートナーとの距離感について学んだり、読めば読むほど味が出て、この半年間何度も読み返しました。夫婦という限りない近い存在でありながら、それゆえにどのような距離感を保ち、どのように一緒に暮らしていくのかについて。

実際、夫はわたしとは別の、かつ日々変化し続ける人間であって、夫がなにをするとも、なにをしないとも言い切れない。私がそのことについて予測を立てようとしても意味がない。だからどこかで覚悟を決める。これまでが大丈夫だったからと言って、この次も大丈夫であるわけがないが、思い切って「これまで」が続くように賭けてみる。これは、ほとんど信頼といっていいのではないか。

夫婦間における愛の適温(P24)/向坂くじら

信頼するというこよは、責任を持つこと。たとえ、目の前の人が変わっていったとしても、これまでの方に賭けて信じてみる。「これまで」の積み重ねで続いていく方の未来を信じる、という覚悟こそが信頼なのかな、って。

自分よりはるかに夫のことが大切で、しかし夫と同じくらい大切なものがたくさんある。夫にも、わたしと同じくらい大切なものが、たくさんあってほしいと思う。

夫婦間における愛の適温(P201)/向坂くじら

愛の適温とは、こんなことをいうのかもしれない。相手を限りなく大切には思うけれど、相手をコントロールすることはできない。ならばせめて、願っていよう。信じていよう。と、距離を少しだけ取ること。適温を探し続けながら、これからもたくさん笑っていたいなぁと思いました。

北欧時間/日暮いんこ

美しいデンマークの写真とともに、心がほっと解ける言葉がたくさん並ぶ本。「大切だとは思うけど、なかなか難しいよね」と感じるような心の解き方を、実際に北欧に在住する筆者が、ひとつひとつ優しい言葉で表現してくれているよう。

ああ、やっぱり私は北欧の人たちの生き方、考え方が好きだなぁと改めて思い知らされます。どれだけ効率的に物事をこなすか、というよりも、どれだけ余白をもってじっくりと味わいながら生活するか、ということを大切にしていたいものです。

北米の人々にとって、日が沈む時間、つまり夕暮れ時は1日の中でも特別な時間だそう。(中略)「私たちは、この美しい時間を、1日の終わりを穏やかに迎えるための、自然がくれるギフトだと思っているんだ」

北欧時間(P80)/日暮いんこ

自然の恵みや誰かの優しさを「ギフト」としてありがたく受け取ること。そんな余裕をいつだって持ち合わせていたいなぁ。定期的に読み返して、心を軽くして、また明日からゆるりと楽しもう、と思わせてくれる本でした。

歩き旅の愉しみ : 風景との対話、自己との対話/ダヴィッド・ル・ブルトン

「歩き旅」というワードに惹かれて購入した本。歩くことは現代の発展したテクノロジーから見たら限りなく非効率で無駄なことで危険な目に遭う可能性も高くて、、だけどせずにはいられない理由がある。私も歩くのが大好きだから、その哲学的な意味にとても共感しました。

あるルートを選ぶことは、ほかのすべてのルートを無視することだ。それでもやはり、見捨てたルートに進んでいたら、どこに向かっただろうかと、一抹の哀愁のようなものを感じる。もしこの道を選んだなら、人生を輝かしいものにしてくれる何かに出会えたかもしれない。(中略)ほかの道ではなくこの道を進むと決めたために何を失ったのか。あるいは何を得たのかは決して分からない。

歩き旅の愉しみ : 風景との対話、自己との対話(P55)/ダヴィッド・ル・ブルトン

歩くことは、自分と向き合うこと、自然と向き合うこと、風景に意味づけをすること。1本の道を選んで歩くときに、他の魅力的だったかもしれない道を失うということで。それは人生にも言えるけれど、選ばなかった道よりも自分で選んだ道をいいものだと自信をもって言いたいなぁ。そんな豊かな時間をたくさん積み重ねていきたいと思わずにはいられない1冊でした。

ここじゃない世界に行きたかった/塩谷舞

一度さらっと読んだことはあったけど、じっくりと読んだのは今回が初めて。塩谷さんの、感性が宿る美しい言葉は読んでいて瑞々しい気持ちになる。大阪のニュータウンで生まれ、東京で働き、そしてニューヨークへ。常に「ここじゃない世界に行きたい」と願いながらも、それぞれの場所で現実を受け入れ、常識を疑い、美しいものに出会い、言葉を紡ぐ、理想と現実で揺れ動く様をありありと感じられる1冊。

どこか遠い場所に行けば、この身体に付きまとうぼんやりとした憂鬱からも解放されて自由になれるものだと思っていたのだ。けれども大人になり、遠い都市に、遠い異国に行ったとて、そこでまず出迎えてくれるのは新しい憂鬱だ。(中略)理想郷を追い求める憂鬱からの解放運動は、諦めたほうが健全らしい。

ここじゃない世界に行きたかった(P238)/塩谷舞

人生は美しいことばかりではなく、時にはほろ苦さや憂鬱も引き連れてくる。そんな憂鬱からでさえ、美しさや楽しさを見いだせないかと、常に自分の内なる声と向き合うこと。自分なりの美学を磨いて、自分だけの感性を大切にしていきたいなぁと改めて思わされました。

反応しない練習/草薙龍瞬

感受性や共感性が高すぎる私は、ついつい「考えすぎ」の領域に入ってしまうのだけど、この本をお守りにしながら、なんとか「反応しない」をトレーニングしている最中です。

「苦しまない」ことではなく、「自分が苦しんでいることを理解して、それ以上反応しない」大切さを教えてくれた1冊。私はつい「なんでこんなにも苦しんでしまうんだろう」「苦しいことがいつまでも消えない」「そんな自分が嫌だ」と「苦しい」という事象からずいぶんと反応していたように思います。その反応にさらに苦しめられていたのでしょう。

考えすぎてしまうが故の、正しく感情を理解する。人に渦巻く感情の多様さに常に考えさせられています。

リボルバー/原田マハ

2024年はエッセイやビジネス書を読むことが多かったのだけど、その合間で図書館から小説を借りては気分転換のように読み進めていました。なかでも、リボルバーは本当に面白くて、時間も忘れて読みふけっていたのを覚えています。難しそうだな~と思って少し躊躇していたマハさんの本、読み始めたらすっかりファンになりました。

ゴッホとゴーギャン、二人が生活を共にしたアルル、ゴッホ最後の地となったオーヴェル・シュル・オワーズ、最後にゴーギャンがたどり着いたタヒチ、それぞれの街の情景やそこに住む人たちの姿が思い浮かんで、彼らがそこにいる景色をありありと感じられて。生きている間に絵がほとんど売れず、例の耳切事件、生涯孤独、精神を病んで命を落とした、そんなゴッホのことを私たちが「不幸せな人生だったのかな」というのは簡単だけれど、この本を読んで「もしかしたら、ゴッホは幸せだったのかもしれない」と思うように。

誰かの幸せ・不幸せは他人が決めるかではない、本人がどう考えているかだなと、あたたかな読後感に包まれた1冊。

このプリン、いま食べるか? ガマンするか?/柿内尚文

「やりたいことがたくさんあって時間が足りない!」と危機感はあるくせに、つい「ダラダラと時間を過ごしてしまった…」と反省する日々。「時間を大切にしたい」と思いつつも「大切にできていない」と悩む私に、大切なことを教えてくれた気がした1冊でした。

例えば、これまで「浪費の時間」「投資の時間」「消費の時間」などと分けていたけれど、どれだけ「幸福の時間」を増やしていくか、そしてどんな時間であっても自分のとらえ方次第で「幸福の時間」にできるということ。

「時間そのものに『無駄な時間』と『無駄じゃない時間』があるわけではなく、時間を無駄に感じるのも、無駄じゃないと感じるのも自分自身」、捉え方次第で時間の密度は変わっていくという視点がなるほど、と思って。

今まで「いかに無駄な時間を減らすか」という視点でいたけれど、「いかに価値のある時間を過ごすか」を意識した方が、幸福な時間は増えそうな気がする。いわゆる時間術とは違う、時間の価値のようなものを考えるきっかけとなりました。

私を幸福にさせる読書というもの

2024年も多くの本を読んできて、つくづく「読書というものは私を幸福にさせるものだ」と感じます。なぜだろう、本の世界に入り込むだけで、そこは私だけの領域となり、嫌なこともモヤモヤすることも少しだけ大丈夫になっていく気がするのです。読書をしながら感じられる、あの深い時間。あと少しだけ、と思いながらついつい言葉を追ってしまう幸福といったら!

特に最近では、夜寝る前に15分~30分ほどの読書時間を持つことが多いです。最終的にはうとうと寝落ちするような状態になるんですが、その現実と非現実が混ざり合う世界に漂っている時間が何よりの幸福。少しずつコツコツと読み進めていくのも私の性に合っているのかもしれません。

これからも、たとえ忙しい時でさえも、私を幸福にさせる時間は守り抜きたい。ベッドの上で、公園のベンチで、カフェの一角で、病院の待合室で、どんなときでも、どれだけ短い時間であっても、サッと本を取り出し、言葉を追いたい。この半年間は、なんだかそう思わせてくれるような読書との向き合い方だったなぁ。

残り半年、これからどんな本に出会えるのか、今から楽しみです(既に積読がたくさんある)。ぜひ皆さんの「2024年上半期のナンバーワン」の本を教えてください。では、残りの半年も、いい読書生活を!


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misaki|散歩日和
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