かぼちゃと2歳児の育児日記 仲直りのあまーいかぼちゃの塩煮の作り方
娘と喧嘩した。
いや娘は2歳になったばかり、怒った私が悪い。
そんなときは、ぎゅっと抱っこしてこの歌を子守り唄にする。
ベーッと舌を出してふてくされていた娘が、ふんわり、ゆらりとゆるんでいく。
そうだ、怒っている暇なんかない。抱っこできるタイムリミットは、もうすぐそこなのだ。大きくなったら、抱っこはおろかハグすらもさせても貰えない日がくる。
娘かお昼寝したら、かぼちゃの煮物を作ろう。娘の心の奥まで温まるように、あまく優しくとろける煮物を。
心をまあるくする かぼちゃを甘くするコツ
元オーガニック野菜屋の私の、かぼちゃをおいしくする小さなコツは火加減。
かぼちゃは、じっくりゆっくり焦らずに弱火。そうすると、ゆるゆるとでんぷん質があまーくなっていく。
かぼちゃのソテーは蓋をして弱火で。
かぼちゃの煮物はコトコトゆっくり煮込んで。
面取りもしたいけど、子どもが寝ている時間は貴重。そんな余裕はないから、面取りは諦めよう。家庭料理なのだから、完璧は求めなくていい。
大事なのは、子どもたちの「おいしい!」の声が聞けること。
最近の娘はなんだか偉そうに「これ、すきなあじ」と食ツウみたいな一言でにんまり笑う。
かぼちゃは子どもたちへの「いのちの記憶」
戦後の長崎に生まれた私の父は、かぼちゃが嫌いだ。食べ物がなくて働いても働いても貧しくて、おかずは畑で採れたかぼちゃを丸々一個だけ。だから、もう食べたくない、と頑なに口に入れない。
当時のかぼちゃは、今みたいに甘くなかったことも原因のひとつ。
けれど、祖父母は畑で取れたかぼちゃで「いのち」をつないでくれたのだ。それを知っているから、私はかぼちゃに頭があがらない。
20年前、認知症が進行し始めた祖母がコタツで繰り返し聞かせてくれたのは、貧しくてお金がなかったときのこと。
当時の私には、祖母の話はあまり理解できなかった。祖母が家族を守って生き抜いたのは、原爆が落とされた直後の長崎市。祖母も当たり前のように原爆手帳を持っていた。そんな当時の苦労は、計り知れない。
祖父母から父へ。父から私へ。私から、子どもたちへ。いのちをつないでくれたかぼちゃに、私は頭があがらない。
一人暮らしをする前 母にお願いしたかぼちゃの煮物
「お母さん、好きやけん作り方教えて!」
母のかぼちゃの煮物は激甘でひたすら甘い。
長崎のお醤油はお砂糖入りで甘い。そこにさらに、みりんと白砂糖を加える。
「教えて」と頼んだのに、
母は、どばどば入れるうえに、全て目分量。私には結局覚えられなくて。
「そげんと、わからんたい!」と爆笑する20歳の私に、母は呆れていた。
そして実家を出る前日の夜、そっと母の激甘かぼちゃの煮物が食卓に並んだ。
あの日のかぼちゃは、格別に甘かった。
65歳を超えた母。
少しずつ老いてきた母は、かぼちゃを切ることさえ難しくなってきた。
例え、老いて認知症になっても。例え、いのちが終わる日がきても。「母」にとってずっと「娘」の笑顔は宝物。
まだ、母親が元気なら、今すぐ電話をするべきだ。よく聞いて。これは、今日の私から明日の私へのとても大事な伝言だ。
みかんをチマチマ食べる小さなもどかしい手
ちょっと湿った、このあたたかい小さな手を握って歩ける日々は今だけ。
娘のお気に入りは毎日更新され続ける。
ちょうちょたん、てんとうむしのてんたん、カサカサはっぱ、カエルたんのながぐつ。
得意げに、にまーっと笑う娘の笑顔はいつまでも私の宝物。
離れる日が来ても、あなたがオバサンになっても、私にはずーっとずっと宝物。あのさ、怒ってごめん。ほんとに、ごめんなさい。
明日も、ビビデバビデブーで母ちゃんをかぼちゃの馬車に変えてくださいな。
【レシピ】お塩だけで甘くなるかぼちゃのいとこ煮、もちろん計量しません
【材料】
小豆(30分くらい浸水しておく)、かぼちゃ、塩
小豆を火にかけて、沸騰したら一度火を止めてお湯を捨てる。また水を入れて火にかけて今度は柔らかくなるまで。
小豆の量は、鍋底に均一に小豆が並ぶ程度。多くてもいいし、少なくてもいい。
一回目の水は捨てるので、たっぷりでOK。二回目の水は、小豆が完全に水に浸かるように。小豆が煮あがったときに、小豆がヒタヒタにあっているぐらいの水分量がちょうどいい。
といって、なんてことはない。
水が少なかったら足せばいいし、多かったらかぼちゃを加える前に捨てればいい。測るのが面倒な私にも、ちゃあんと毎回おいしくできる。
味付けは、この塩もみした塩分だけなので、2回塩もみするとちょうどいい。この塩でかぼちゃはあまーーーくなる。
焦がさないように、水気が足りているかだけ時々チェックして、柔らかくなれば完成。
お醤油もお砂糖もみりんも要らない。計量なんかしなくても、次もまた同じように作れる。母の味とは違うけど、私から娘に受け継ぎたい「母」の味。
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