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もう未来を見ている目――「未来」の観点から読み解く「ヒトの目、驚異の進化」 (伊藤元晴)

【カテゴリ】書評
【文字数】約3200文字
【あらすじ】
私たちは日常的に世界を「見て」いる。しかし、マーク・チャンギージーの著書によれば、それは今この瞬間ではなく、脳が作り出した少し未来の映像なのだという。同書が語る視覚のメカニズムをひも解きつつ、私たちが本来持つ未来予測の力について明らかにする。
【著者プロフィール】
旅行批評誌「LOCUST/ロカスト」編集部、批評誌「エクリヲ」編集部に所属。ゲンロン大森望SF創作講座、において小説「猫を読む」で東浩紀賞(審査員賞)を受賞。 twitter: @gomzo__i

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「私たちは進化によって未来を見る…能力を備えた目や視覚系を獲得した」
そう宣言するのは、宗教家でもSF作家でも詐欺師でもない。神経科学者マーク・チャンギージーは自著『ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ』(早川書房、二〇二〇)で、あくまで生物学の研究の成果として明らかになった人類が古来駆使してきた視覚の実態を、それが私たちに秘められたコミックのヒーローのスーパーパワーであるかのように解説する。彼によればテレパシー、透視、霊視に加え、私たちには未来を予知する能力があるというのだ。

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