推しの退団ー宝塚トップスターとの別れー
「椿さーーん!」
「いままでありがとうーーー」
キャーという悲鳴の向こうに、手を振りながら歩いてくる真っ白な人。
ファンクラブという鉄壁の人垣に守られながら、その人は最終地点まで向かっていく。
「椿さん!私たちはいつまでも忘れませんーーー!」
ファンクラブ幹部の号令とともに、朝から並んでいたファンクラブ会員がいっせいに叫ぶ。
「いままでありがとうございました」
彼女はそう大きくない声を発しながら車に乗り、風のように去って行ってしまった。
◆
「聖夜 椿」
それが宝塚での彼女の名前。
トップスターとして5年間活動してきて今日終止符を打つ。
ついさっきまで東京宝塚劇場の中では
椿のさよならショーが繰り広げられていた。
劇場は満席。
その中で相当な倍率から手に入れた前方の席で
息ができないほど涙に暮れていた私を見て
彼女はそっと微笑んでいた。
「ファンのみなさん、ありがとうございました」
と言ってお辞儀をし、その瞳は私を見つめている。
そう、私はこの日を迎えるまでファンとして全力で駆け抜けた。
◆
こうして椿はこの日この場所でこの名前とさよならをし、
そして私もこの日、彼女と永遠のお別れをしたのだった。
この物語はーーーーーー
主人公が宝塚歌劇団のトップスターを好きになり、ファンとして活動していく中でさまざまな人たちと出会っていきます。 そして1ファンから特別な存在になるまで夢をつかんでいくストーリーです。
あくまでもフィクションですのでお気軽に楽しんで行ってください꒰ঌ( ⌯' '⌯)໒꒱
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?