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【読書感想】ハン・ガン「菜食主義者」を読んで
先日ハン・ガン著「菜食主義者」を読みました。私がこれまで読んできた(と言ってもまだ数少ないですが)本にはない独特の世界観ですごく引き込まれました。
これを書いてる私はこういう者です↓
ハン・ガンさんは2024年にノーベル文学賞を受賞された韓国の女性作家。そして「菜食主義者」は2007年に出版された作品で2010年には映画化もされました。また2016年には世界的に権威のあるイギリスの文学賞、ブッカー賞を受賞。アジア人女性として初の快挙でした。
電子書籍で今すぐ読もうかなと思っていたところ碓氷早矢手さんのvoicyで紙の手触りがいいというようなお話をされていたため、やっぱり次の一時帰国まで待って紙の本をゲットしようか悩んでいました。
ひとしきり悩んだ結果、ちょうど紀伊國屋の海外発送が良いという情報を得たので試しに注文してみようということで、ついに「菜食主義者」を購入したわけです。
ちなみにこの紀伊國屋の海外発送は本当に良かったので、また機会を改めて記事にしたいなと思いますが、海外在住の日本人にはぜひ利用してもらいたい!海外にいながら日本の書店を応援できるって嬉しいですよね。
届いた本はなんだかもうそこからオーラが発せられてるかのようで、やっぱり紙の本を買って良かった!と1番に思いました。
すぐに読み始めて2日で読了。(双子のお世話がなけりゃ1日で読み終わっただろう。)
読み終わった後は強い衝撃を受けた感覚で言葉にならずただボーっとしてしまいました。
決して明るい作品ではないので、読んでいる間は暗い海の底へ沈んでいくような感じだったのですが、それが息苦しいわけではなく、むしろ海底には何が眠っているの??と気になって自らもっともっと深くへ潜っていくような気分でした。
そして読了直後は、酸素不足に気付いて一刻も早く一気に水面へ上がりたいのに海藻か何かに足を取られて完全には上がれない、そんな感覚でした。
ネタバレせずに書くのは難しいのですが、決して描かれることのないヨンヘの心情、彼女の欲望、苦しみ、そういったものがヨンヘの周囲の人物たちの視点からどんどん垣間見得ていく、この構成も見事だと思いました。
この物語のキーワードである「夢」はヨンヘだけでなく義兄や姉などにもある種の狂気のトリガーとして描写されていたのが面白かったです。
それと訳者のあとがきにあった「植物性」というテーマ。私には難しかったですが、結局のところ人間は動物であって植物にはどうしたってなれない。決して手に入らないものへの渇望ということなのかな。
数年後に読み返したらまた全然違った読み方ができそう。そんな小説でした。
ハン・ガンさんの「すべての、白いものたちの」も積読中なので近いうちに読んでみたいです。
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