見出し画像

ドラマで勉強(虎に翼第13週)

「虎に翼」第13週。
ここで折り返しなのかしら?

木曜・金曜の回は今までと違うな?という印象。

「虎に翼」は透明化された人をリアルに描くことも一つのテーマだと思っています。

だからリアル過ぎて良い意味でも裏切られ、時に意地悪だな、とも思った。
第13週は普通のドラマっぽく、普通に良いエンドだった。

やはり梅子さん演じる平岩紙さんの演技に触れない訳にはいかない。

3人の息子達と義理の母、旦那のお妾さんとの遺産相続問題。

「せめて末っ子の光三郎だけはまともに育てたい」という梅子さんの一筋の希望を木っ端微塵にした展開でした。

夫の妾が光三郎の恋人…これこそ地獄展開。
全てを知った梅子さんの狂気溢れる高笑い。
これは一瞬でも狂わないと、本当に狂ってしまう。

からの盛大な三行半を叩きつけて人生をリセットした梅子さんにはブラボーと叫ばずにはいられない。

高笑い、胸をトントンして我が身を落ち着かせ、冷静に自分の人生を振り返り、負けを認め、スクッと立って、シャと襖を開けて退場。
一連の演技が本当に素晴らしかった。

ゴタゴタの間、ずっと雨の描写が続いていました。
梅子さんが襖を開けて見えた外の世界は太陽が燦々と降り注ぐ明るいものだった。

保守の権化・神保先生がゴリ押しして突っ込んだ民法第730条。

直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。

当たり前のことを書いている。
これを現実に落とすと「嫁・妻・母が家族の面倒をみる」になります。

そのことがダメなのではなく、姑も夫も子供もそれを当たり前だと、面倒を見られて当然だとされるのが嫌なのですよ。

梅子さんは大庭家の嫁ではあるけど、血族ではない。
離縁し、親権を手放し、家を出れば第730条に縛られることはない。

第730条を逆手にとって大庭一族を家族制度の縄でギューギューに締め上げKOしたのだ。
代々、弁護士一家であった大庭家だからこそ、一層爽快感も皮肉も増す。

梅子さんが「私は放棄しませんよ」と言った時、長男・徹太が「母さん、何をバカなことを。お父さんが生きていたら何と言うか」と発言していたけど。

お父さんが死んだから、こういう場になっているんでしょ?
帝大出ているのにバカなの?

最終的には梅子さんは全てを捨てて家を出ていくことにする。
「捨てられた!」とわかった時の息子達の顔。
かろうじて既に弁護士である長男が「やばい」って顔をしましたね。

その時のよねさんの顔。
「よく言った。ざまーみろ」の嬉しそうな笑みも見応えがあった。

梅子さんが大庭家でどのように過ごしてきたのか。
あまり描写がなかったが、次男にお酒のつまみを出しながら就職の世話をするシーンがあった。

朝昼晩の食事を作り、その度に何かと声をかけてきたのだろう。
「ありがとう」とか「美味しいよ」とか言われなかったんだろうな。

多分、梅子さんは60歳近くにいなっている。
その後の生活を考えれば不安もあるが、梅子さんは最後まで誰かのせいにはしなかった。

結婚も子育ても、妻として嫁としてのあり方も全て失敗したと白旗を振った。

昔、花岡くんに「持っている顔は一つじゃないから。例え周りに強いられていても、本心じゃなくて演じているだけでも、全部花岡さんなの。本当の自分があると思うなら近づくように頑張ってみなさいよ」と声をかけていた。

生前、花岡くんは寅子に「でも、前も今も全部君だよ。どうなりたいかは自分で選ぶしかない。本当の自分を忘れないうちに」と伝えていた。

梅子さんは「お互いに誰かのせいにしないで、自分の人生を生きていきましょう。ごきげんよう」と背中を向けた。

どのような状況でも「自分の人生は自分で責任を取る」姿勢はブレなかった。
この先も、少なくとも梅子さん自身は後悔しない人生を生きていくと思う。

平岩紙さんの表情の作り方か、照明の当て方か。
昔より顔のシワが強調されていて、年月と苦労が垣間見られた。
それら全て含めて梅子さん、いい女です。

今週の梅子さんはタロットでは「11番・Lust(欲望)」かな。

獅子座に対応しているカードです。
「自由」を謳歌している様子を描いています。
獅子座の守護星は太陽。
自分軸があり、自分を輝かせる大切さを知っている人。

弁護士の道を断たれた後も、ちゃんと新民法を勉強し、今回のようにここぞという時に法律を使える人だ。
大丈夫。

第13週の大きなテーマは「解放」だったのだと思う。
制限や縛りからの解放からの自由意志。

花江ちゃんも自らを縛っていた考え方に気がつき、自分軸に立ち戻ることが出来た。

多岐川さんや寅子は獅子座の対局にある17番・The Star(星)ですね。

水瓶座に対応するカード。
獅子座が全くの個人の自由なら、対角にある水瓶座は社会においての個の自由を考えられる星座。

描かれている女性は地球の外にいるので、今までの枠組みから飛び出しています。だから改革者。
改革には理想や主義が必要です。

ぶっちゃけ、多岐川さんや寅子が語る「家庭に光を、少年に愛を」は生ぬるい。
でも理想主義者が理想をぶち上げないと「そんな世界もあるんだ」に気がつかない。

リアルに浸かっている我々はいつも目の前のことで手がいっぱいだから。
そして過去から続いた習慣に無意識に縛られている。

ラジオを聴きながら梅子さんや花江ちゃんが「はっ」としたように、その理想を聞いた誰かの何かが動き、人生を変えていくかもしれない。

梅子さんは寅子と再会した時は「輝いていた女子部時代」を懐かしんでいた。
でもラジオを聴いて「この先、もっと輝いた時代が欲しい」と未来に顔が向いた。

人は希望がないと生きる張り合いがなくなる。
希望は「自分はまだいける」という未来への期待。
「愛のコンサート」にスターが必要だったのは、そういう理由もあるのではないかな。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集