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ドラマで勉強(虎に翼・第18週・第88話まで)

このところ寅子がしなやかになった気がする。

「どうしても気になることは放っておけない」気質は残っているけど。
昔は「はて?」からの着火点が早かったのだけど、今は「立ち入ってはいけないタイミングや溝がある」ことを知ったからだろう。

とは言え、航一に言われた通り「溝を埋めようをもがく」ことは変わらない。
寅子は諦めが悪い人なのだ。

新潟地裁では年下の入倉とイマイチ噛み合わない。
「脱力。若い子と分かり合えない時は特に、です」とナレーションが入った。
そうか、寅子も年長者側になったし、本人も気がついていたんだ。

そしていつの間にか優未との距離が縮まっている。
緊張感が解け、「好かれよう」「分かろう」とするのではなく、「あなたはそういう人なのね」と認め合えたのではないだろうか。
お互いに思ったことを言える関係になったのだ。
ちょいちょい優未が寅子をたしなめ、寅子が謝るシーンが出てくるが、それはそれで微笑ましい。

疲れたので夕飯はお菓子にしよう、というシーンがあった。
昔の寅子であれば「お母さんが作るから!」とヘロヘロの姿を見せながら頑張ったと思う。
つまり「夕飯を作る」ことを諦め、それは「夕飯は作らなければならない」という呪縛から解放されたこと。

「諦め」の肯定とでも言うのでしょうか。
でも絶対に諦めてはいけないことがある。
その辺の線引きが出来てきたので、視聴者側として肩の力が抜けてきた。


第18週は偏見・差別について。
偏見・差別は誰でも持ってしまうもの。

その偏見や差別は意識せず、意図的でもなく。
生まれ育った環境による所も大きい。

「東京は悪い人ばかりだから行ってはいけない」的なことは、昔は当たり前のように言われていた。
それを聞いて育った人は「東京は悪い場所」と凄くナチュラルに価値観として持つだろう。

地域や国籍・民族、そして障害者。
障害については身体的・知的の両方。

偏見や差別の大元はカテゴライズから始まるのではないだろうか。
占いに当てはめれば「私は山羊座なので天秤座の人とは相性が悪い」とか。
「あの人は山羊座だから融通が効かなくて嫌い」とか。

自分が山羊座なので例に出しましたが、30年来の天秤座の友人はいる。
確かに融通は効かないこともあるけど、待ち合わせで3時間待ったこともある。

だから「山羊座」というカテゴライズで人を判断するのはナンセンスなのだ。
しかし、星座占いが人気なように、人はカテゴライズすること、されること。
それによって判断すること、されることを好む。

カテゴライズされると楽だから。
「あなたはこう、あの人はこう」と決められると自分で考えなくて済むから。


寅子は新潟地裁で放火事件を担当する。
放火したとされる被疑者は朝鮮人の男性。
被告人が弟に書いた韓国語の手紙。和訳したものが証拠として提出された。

でも何だか文面がおかしい。
寅子には朝鮮人の学友・ヒャンちゃんがいる。
思い切ってヒャンちゃん夫妻を新潟に呼び、手紙を読んでもらった。

法廷で提出されたものは誤訳であり、その誤訳部分が被告人に不利益を与える内容だった。ヒャンちゃんのお陰で証拠の確認が出来、結果無罪となった。

無罪となり土下座をしてお礼を言う被告人。
それを見て、怒りの目を向ける弟。

裁判という公正に判断される場で出た結論。
被告人は堂々としていれば良い。
ただ「ありがとう」という気持ちが湧くことも自然。
だけど土下座は自分を卑下し過ぎているようだし、そんな兄の態度に弟は腹が立っていたのかもしれない。

そもそも、法廷で誤訳の手紙が読み上げられた時、被告人は否定をしなかった。

そのことについて、ヒャンちゃんが
「諦めちゃったんじゃないでしょうか。日本で懸命に働いてもずっと異国人扱いで、居場所もなく、味方もいなくて。抵抗してもさらに悪いことが起きそうで。だから・・・」

それとは別に。
涼子様と玉ちゃんのお店Llight house」のドアに月に1、2回、ペンキ?のようなものをかけられ、嫌がらせを受けていることが判明。
それも何年も前から。

頻度的に警察は取り扱ってくれない。
涼子様は「よろしくないのですが、私たちも段々、この嫌がらせに慣れきてしまっていて」と言っていた。

この嫌がらせは美人で元華族の涼子様への嫉妬かもしれないし、車椅子の玉ちゃんへ向けての差別かもしれない。

色々な歴史があり、朝鮮人に対する「ある見方・ある捉え方」が出来上がってしまった。
それは朝鮮人に限らず、今もどの国でもある国への偏見。

歴史があるからこそ、代々と続いてしまう「ある見方・ある捉え方」。
その歴史を知らない人は、何も考えず「だってそうでしょ」という思考に至ってしまう。

「あ〜〜〜」吠える寅子。
「でも私、悔しくて、情けなくて。
戦争が終わって新しい憲法が出来て、全ての人が平等である正しい世の中の意なったはずなのに。今扱っている事件や玉ちゃんを取り巻くものは・・・」

ヒャンちゃんという友達がいるせいか、裁判官としてフラットな気持ちで裁判に臨めていないことを悩む寅子。

航一は
「全ての事件に公平でいるなんて無理ですよ。もちろん感情が法を超えてはいけません。裁判官も人間で揺れ動くのも当然だ。だから先人達は合議制を作ったのでは?」と答えます。

そして第88話の最後で寅子が言います。
「ずっともどかしかったんです。自分の無力さが。憲法第14条が謳っている平等とは何なのか。私に出来ることは何なのか。考えていて。分かり合えないと思っても、一度じゃ伝わらなくても、諦めずに向き合う。それくらいなのかな、と。でも一歩ずつでも前に進まないと」

あぁ、ようやく分かった。
寅子が「はて?」としつこく、超諦めが悪い人間として描かれてきた理由が。

朝鮮人の被告人も涼子様も玉ちゃんも。
諦めた人は自分の主張を飲み込んでしまう。
やられっぱなしでヨシとしてしまうことは、その時から自分の大切なものを汚され、奪われていくのだ。

物理的なものもそうだし、尊厳というものも犯され奪われていく。
どんな人にも尊厳はある。アイデンティティや「これが大切」という想いを守る権利。
その権利を握る手を緩めると、どんどん握力が落ちて、最後は「どうでもいいや」と捨ててしまうかもしれない。
自己肯定感が下がっていき、自分の人生すら放棄することになってしまう。

だから寅子は戦えない人の代表者として、脚本的にずっとずっと吠えさせられていたんだな。
寅子も昔はカッとしたら手が出たし、怒鳴ったし。
尊厳を奪う側になっていたかもしれないですね。

でも吠え続けるって凄く体力が必要だと思います。
搾取されている、利用されている、ないがしろにされている。
その環境に浸りきってしまうと「これも悪くないかな」と考え、逆に楽だと思うようになる。
尖ることは、尖り続けることは本当に大変。


話がコロッと変わりますが。
私の毎日のルーティンは起きて、まずタロットを引いてXに「渾身の1枚」としてアップします。
その後、コーヒーを飲みながら録画している「虎に翼」を観る(起きるのは昼近いので)

今日のカードは「6番・ラバーズ」

結婚式を描いています。
肌の黒い男性と肌の白い女性の結婚。

タロットの絵は象徴ですから「違う個性の人」という意味です。
日本語で「白黒つけろ=どっちかにしろ」と言われますが、両極を表しています。

それほど違う個性の人同士が握手をし「この先の人生を一緒にやっていこう」と覚悟をしている図です。
分かりにくいですが、背景のウェディングロードのアーチは剣。
ですから二人の行く末は薔薇色ではなく茨の道。

このカードは6番ですが、14番になると1人の人間として描かれています。
6番〜14番、長い時間(枚数)を経て、お互いに受け入れて一つになっている。

タロットに限らず精神世界では「二極の統合」が目標となっています。
自分と他人ではなく、自分の中の「好きな自分・嫌いな自分」の統合です。

寅子の言うように1歩ずつでも進めばいい。
ただ前提として「向き合う」姿勢が必要です。

このカードを説明する時、ボクシングの試合の前のグローブタッチと説明しています。
試合前にちょこっとグローブを合わせること。これは「握手」の意味だそうです。

その後は真剣勝負の壮絶な戦いとなります。
スポーツですから勝敗をつけますが、良い試合であれば両者が最後にグローブタッチをすることもあります。
少年漫画では、のちに最高の理解者・親友になるパターンですね。

なので意見が合わなくても全然OK。
ただ、向き合う=お互いを出し合うこと。

その場面さえ用意出来れば、時間をかけてでも溝は埋まっていくのではないでしょうか。
優未と寅子のように「あなたはそういう人なのね」とただ受け入れていく。

ということで、このカードは「好き好き♡」みたいな甘い結婚ではなく、長くなるであろう試合の前の様子を描いています。

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