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「ファッションは自分を好きになるための手段」古着好き出版社女子が語る、おしゃれの極意
💡本記事は、 女性向けキャリアスクール「SHElikes」のインタビューライティングコース実技試験への提出作品です。
東京の出版社で働いているおくそんさん。筆者とは高校時代の友人であり、昔からまさに「個性的」という言葉を体現するような存在でした。おくそんさんは、徳島県の公立高校を卒業し米国アーカンソー州で大学生活を過ごしましたが、中退して日本に帰国。その後、テレビ番組制作会社のADを経て、現在の職場で活躍しています。そんなバイタリティ溢れる彼女は、実は大の古着好き。
オリジナリティを大切にする一方で、周りとの調和も忘れないおくそんさん。そんな彼女に、古着の魅力や個性を出す秘訣など、おしゃれの極意を教えてもらいました。
(執筆/mio.h、撮影/mio.h・本人提供)
森ガールからアメカジを経て、古着好きに
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――おくそんさんがファッションやおしゃれに目覚めたきっかけは何でしたか?
きっかけは、小学校高学年のときにファッション雑誌を読んだことです。そのころは『ラブベリー』や『Hana*chu→(ハナチュー)』、『Seventeen(セブンティーン)』など、世代にあったカジュアルな雑誌を読んでいました。逆に『Zipper(ジッパー)』のような古着系の雑誌はすごくおしゃれな人たちのものだと思っていて、敷居が高かったです。
ーーわりと王道の雑誌を読んでいたのですね。どのあたりから自分の我やファッションが確立されましたか?
20代半ば〜後半にかけて、徐々に見出していったと思います。
20歳前後は、割と一般的な、カジュアルでかわいい服を着ることが多かったです。「森ガール」の時代だったので、レースやフリルがある服を探して着ていたように思います。
その後アメリカに留学して、Tシャツやデニムなどのシンプルな服を着る人が周りに多くなりました。自分もそういう服を着てみると、案外しっくりくるし似合うなと思って。そうやって、留学時代にファッションの幅が広がっていきました。
また、大学時代に写真を撮り始めて、大学新聞のカメラマンのアルバイトをしていたことがあります。そのとき、あるカメラマンの女性の先輩が、カジュアルなものをセンスよくまとめたファッションをする人でした。自分も写真を撮る人間として、「あんな風におしゃれな人に撮影してもらったら、撮られる側も嬉しいよな~」と考えるようになりました。相手に信頼してもらうために、自分のファッションを気にし始めました。
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日本に帰国してテレビ業界に入ると、あらゆるジャンルのおしゃれな人たちと出会う機会が多くなりました。それも、ますますファッションを好きになるきっかけになりました。
あとは、日本の服をアメリカ風に着るとあまりしっくりこなかったんです。それで古着などの海外のものを探してみようと思い始めました。インポート系のブランドは値が張るのもあって原宿で古着を探し始めましたが、それがとても面白くて。そこからいろんなものを探って、好きなもので固めていこう、集めていこう、と思うようになりました。
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ーーファッションの多様性を直接目にしたのが大きかったのですね。30代に入ってから、何か変化はありましたか?
20代のうちにいろんな古着を触ったおかげで、形や素材の良し悪しがわかるようになりました。だんだん、質のいいものや形がきれいなものを好きになっていったように思います。それがちょうど今の会社に転職したタイミングでしたね。
「まるで、違う誰かの人生を生きているよう」古着の魅力と楽しみ方
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ーー古着の魅力はどんなところにありますか?
違う国の、生きた年代が違う人の服を着ていることにワクワクします。今着ている服も、もしかしたらアメリカにいる、今はおばあちゃんになっている人が昔着ていたのかもしれない。「違う誰かの人生を生きている!」みたいな(笑)
ーーなるほど......!「ほかの人の存在があるからワクワクする」ということでしょうか?
それもあります。また、歴史や小説、展示も好きなのですが、それに通ずるところもあるのかも。その時代に合った素材があるし、その当時のことを想像するのも面白いです。
ーーアンティークが好きな人と感覚は近いのでしょうか? それとも、違う国や時代のものを「身に着けたい」という気持ちが強いのか。
そうですね、身に着けたいかな。いろんな自分になりたいし、いろんな自分の面を出していきたいと思っています。買い物をするときも、新しいものを見つけると「楽しい!」と思うし、それが自分の新しい内面を見つけることにも繋がると思います。
ーー「いろんな自分になりたい」「いろんな自分の面を出したい」のは、いつから思い始めましたか?
まず、オリジナリティを大事にしたいと思うようになったきっかけが、小学校高学年のころまで遡ります。学校の制服が似合わなかったんですよね。体型も平均より大きい方だし、落ち着いた色味も自分にしっくりこなくて。「なんか違う!」って思っていました。
あとは、アメリカで多様なファッションの中に身を置いていたから、帰国後、日本のファッションの流行と自分自身のスタイルとの間にギャップを感じてしまって。そこから、もっと自由に、個性を出したいと思うようになりました。
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1番好きな映画が『プラダを着た悪魔』なのですが、服が次々に変わっていくシーンがすごく好きで。昔、雑誌を読んでいたときも「スカートを履いたら、こんなに可愛くなるんや!」「パンツスタイル、かっこいい!」という風に、見ているのが楽しかったんです。今、自分の服でそれを叶えられることがとても嬉しいです。
また、ファッションは自己表現に使っている一方で、人とのコミュニケーションや交流の一助という側面もあると思っていて。たとえばきれいめなファッションの人と会うときは、既製服と古着を組み合わせてその人に合わせたコーディネートにしてみよう、と考えることもあります。
ーーオリジナリティと他者との調和のバランスをとっているみたいな感じでしょうか。すごい......! 古着屋さんは、原宿のほかにどんな場所に行っていますか?
最初の入り口は原宿だったのですが、最近は代官山、下北、横浜に行くこともあります。あとは、古着屋さんのインスタやTikTokをチェックして、服の組み合わせを考える参考にしています。
古着屋さんは、色やサイズの展開がそんなにあるわけではないんです。なので、気に入った服を見つけても自分に合うものがないときはメルカリで調べることもあります。今履いているドクターマーチンの靴はメルカリで買いました!
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新品だと硬いから、他の人が履いて柔らかくなったもののほうが履きやすいこともあります。誰かが手を入れることで、その後、より使いやすくなるものもあるんです。
大事なのは、自分の気持ちに寄り添うこと。コーディネートの秘訣
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ーーコーディネートのコツやこだわりはありますか?
体型に合っているかや、着たときのバランスをしっかり見るようにしています。あとは、人に合わせるのはもちろんですが、自分の気持ちにも寄り添うようにしています。
「今日は頑張るぞ!」というときはかっこいい系の服を選んだり、「気持ちがしんどいな」という日は、あまり締め付けないゆったりした、素材が柔らかいものを着たり。服は、リセットボタンのような、スイッチの切り替えのような存在でもあります。
ーーなるほど。体型に合っているといえば、骨格診断やカラーコーディネートも流行っていますよね。それらについて、何か思うことはありますか?
指標のひとつ、ですね。それにより何かを制限するのではなくて、知ることで可能性が広がり楽しくなるのであれば、よいのではないかなと。
似合わない要因がわかったことで何かを諦めるのはもったいないと思います。私もだぼっとした服が似合うわけではないけれど、「これが好きだから着る!」と割り切ることもあります。似合わないからといって、それに気持ちが左右されることはありません。
パーソナルカラーではない、自分に合わない色もありますが、顔周り以外の部分に取り入れるのであれば、そこまで気にしなくてもいいんじゃないかな。
ーー私は大学時代、何もわからなかったから、店員さんに全身コーディネートをしてもらっていました......。
私も最初は、古着屋さんで緊張して何を買ったらいいかわかりませんでした。なので、店員さんに赤裸々に聞きました!
「そもそも服の選び方がわからない」「古着の上級者みたいな服を私服に落とし込めない」と店員さんに相談したり、普段着ている服の写真を見せたりしたら、いろいろ教えてくれました。そこで、服の組み合わせ方を勉強させてもらえましたよ。
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試行錯誤するうちに、だんだん周りから「この服好き」など、声をかけてもらえることも増えてきて。良くも悪くも、新しい服を着たときには周りの声が気になるんだなと思いましたが、褒め言葉やプロの服屋さんのアドバイスだけを参考にするようにしていました。
ワクワクとときめきは、お気に入りのものをひとつ身に着けることから
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――型にはまったコーディネートにおさまったり、年齢や周りの目を気にしたりと、悩んでいる方も多いと思います。おくそんさんのように、自分のスタイルを楽しむためにはどうしたらいいでしょうか?
まずは、自分のお気に入りのものをひとつ身につけることから。たとえば普段きれいめの服を着ているなら、それとは違うジャンルや素材のものを組み合わせてみるとか。
顔周りをオーソドックスなものにして、スカートだけ変えるのもよいと思います。普段、白のニットと大人しめのスカートを合わせているなら、ヒョウ柄のスカートに変えてみるとか!
――なるほど! 少し遊びを入れるといいのでしょうか?
遊びを入れたり、気になったものを買ってみたりして合わせていくことから。アクセサリーは一番最初に手にとりやすいと思います。
あとは、ドラマや映画を見て気になったスタイルがあれば真似をしてみるのもアリだと思います。会社の先輩がイギリスにハマって以来、好きな映画のニュアンスをファッションに取り入れいるのですが、とても楽しそうで。そういうのっていいなぁ、と思って見ています。
――最後に、おくそんさんのファッションの美学や、自分が自分であるための秘訣を教えてください。
ワクワクすることと、ときめくこと!
今、職場で派手な服を着ているのですが、そうすることで周りの人の気持ちが明るくなったり、ワクワクするきっかけになったりしたらいいなと思っています。私も街中で誰かの服を見て、「あれ可愛いな〜!」「めっちゃ似合ってるな~!」と楽しくなることもあります。
服は、チャラチャラしたものと思われがち。ですが、私は本も、映画も、旅行も好きです。それらと同じ1つのカテゴリーとして、ファッションも誰かの心の支えになったらいいなと思っています。
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