結婚という慢性疾患
ニューヨーカーが必ず罹る病気が何だかご存知ですか?
それは、ヴィーガン病。カリフォルニア出身のクリストファーがボヤいていたことは、「ニューヨークのヤツって、自分はヴィーガンだと言っていながら、フライドチキンの匂いがしてくるとその店に飛び込んで、チキンにかぶりついている」。
これを聞いた時、「へぇ、ヒドイ。でもそれ、アメリカ人の話でしょ?」と思ったんです。ところが私も、ニューヨークに染まるにつれて、なんちゃってヴィーガン症状を自覚。伝染性なのか、親しいロシア人の友人アナも同時期に罹患しました。
ニューヨークではどこのお店でも、オーガニック食材とかヴィーガン用メニューがハイソな顔をしているので、知らずに洗脳されるんですね。
では、ワーキング・ママが必ず罹る病気は? それは、タイパ病。コスパのタイム版です。娘が就職して手が離れてから10年以上も経つのに、未だに治りません。
NYのせま〜いお部屋で、「これを冷蔵庫に返すなら、ついでにアレとアレを持っていって、帰りにアレをしてくる」とか、反射的にプランニングしてしまうんですよ。その全部がすぐに必要ってわけでもないのに……。
子育て中は、タイパが必須でした。出勤前に犬のお散歩に行って、朝食と娘のお弁当作って、片づけて身支度して必要資料持って……と全てをやって遅刻しないためには、作業も思考もいくつも同時進行しなければ無理。
20年間で染みついたこのタイムマネジメント術、作家の橘玲氏によれば、脳のエネルギー(処理コスト)を大量に奪っているそうです↓。
確かに、母親業をリタイアした今は、同時進行の習慣から損害まで出ているのです。脳の処理コスト超過のせいか、気に入ったマグカップを半年で3個も割ってしまいました。(買い足そうとしたら、現在は販売中止!)
上記の本で説かれる「幸福の最大化のための合理的な設計」は、なるほどタイパ病には効きそう。ならば、幸福行きの代名詞のような結婚・婚活にも有効なのでは?
本書によれば、ものごとには短期的な利益と長期的な利益があり、本物なのは後者だそう。かといって、「スタイルを保つためにお菓子を一切食べない」など、前者をシャットアウトすると、人生の豊かさは失われる……とも説かれています。
結婚のコスト配分とは、
・イケメンとの甘い生活か、将来性が保証つきの安定株か
・モラハラ夫とスッキリ離婚か、今は我慢して老後資金を確保か
――のような短期・長期バランス。どちらを重点配分するかは、個人の価値観次第でしょう。
ここで問題は、短期利益(例えばイケメン)がどこまで保たれるか。老後までイケメンのままであるなら、「ロマンス映画のような結婚」に価値を置く女性にとっては、長期利益も◎。コスト配分は増やしてもいいですね。
長く生きた私の知る範囲で、男性の30年後を分類したのが下記です。(イケメン以外の不確定条件の場合は、イケメンに代入してみてください)
➀イケメンがそのまま、または更にカッコよくなる
②イケメンが普通化、または「誰?この人?!」になる
③非イケメンがカッコいいナイスミドルになる
④非イケメンがそのまま、または更に独走する
イケメンの場合、➀と②の割合は、約半々です。こればかりは、心がけや生活習慣もあるでしょうが、要は遺伝子。最新の研究によれば、老化スピードを司るDNAの質と位置があるとか。
一方、③と④の割合も、半々ぐらい。一般的に生物のオスはメスに選ばれる必要があり、元々きれいにできています。髪型でイケメン回帰する男子は多いし↓、雄々しい生き方が表情に出れば魅力ですしね。
となると、②短絡的に甘い生活を取ってイケメン夫の保持に失敗する率と、③長期安定を取ったら夫がイケメン化して成功する率って、ほぼ同じ。
つまり、イケメンであってもなくても、長期成功率は50/50。(親の容姿が遺伝する率も60%以下と、高くはありません。)
「経済力」「家族状況」など他の条件についても、多様化の今どきは「逆転あり」の不確定要素です。成功率半々とまでギャンブルではないにしろ、誰にも結末を読めないことは確か。
だとすれば、上記の本で説かれる「『選ばない』という選択がベスト」との設計がハマるかもしれません。
禅や道教でも「何もしない」対処法は推奨。(「何ごとも強いるな」の禅↓)
(「人間万事塞翁が馬」などの道教↓)
選ばないのがベストな理由は、本書では仏教や道教の「無為」よりも理論的な説明です。
脳エネルギー消費が膨大な「選択コスト」(選ぶ労力)をかけても、「機会費用」(何かを得れば何かを失う)は発生します。「選ばない」のは、このパラドクスを抑えるためだそう。
そんなベスト・ハウツーを本能的に察知している方たちが、相手を選ばずに非婚になるのでしょうか。
「選ばない」のもうひとつの意味として、「選り好みをしない」があります。私の場合は、選ばずに身近にいた人と結婚して、大失敗! それはそれで、やっぱりベストのよう。
なぜなら、こちらのベストセラー本には「選ぶ」についての別の見解が説かれています↓。何ごとも、やってみなければわかりません。「ぐるぐる迷って歩みを止めている時間」が、超ムダな時間トップ5のひとつ。
さっと選んで、失敗したらそこから学ぶのが、有効な時間の使い方だそう。
2冊に共通するのは、「人生で1番大切なものは時間」の一点です。結婚(婚活)に失敗した皆さま! この傷を癒やすのは、時間というお薬。
また上記の本によれば、私たちは(結婚・婚活という)行動を起こしたことで、時間を活用して”理想的に幸せな人生“ に必要な経験を得ました。その失敗から学んで強くなり、成長しています。
私見では、人生に「侘び寂び」の味も出ているはず。味といえばヴィーガン病についても、きっと人生にUmami(英語になってます)を一振りした経験。
物価が高い現在のNYでは、ヴィーガンはコスパが良くないので症状が落ちついていますが……。私は元々お肉が好物ではないから、またぶり返すかも。
結婚も、ヴィーガンも、疼いたりそうでもなくなったり。慢性疾患のようなものかもしれませんね。