
①そうか、住職って住むことが仕事なんだね。
記事・写真 深瀬隆治

はじめに
2024年4月、桜の花がきれい。編集長と私(深瀬隆治)で寺を訪れた。私は近所に住んでいるので感じるのだが、和尚は若く人懐こく話しかけやすくそれでいてとても生真面目な性格であろうということ。普段ふざけた話しかしていない私が和尚の心の核心にせまるような話を聞き出せるのか。不安だ。心の中を感じ取ったのか、編集長は「私も横にいるから大丈夫。」と一言。わはー、頼りにしちゃう。
寺の本堂の応接間にお邪魔し、正装の和尚が出迎えてくれた。
雑談
編集長 こんな雑誌をつくっていまして。今はnoteで記事をあげているんです。
浄 いいですね。今私が海外に行っていたときの友人が高知でこの雑誌にのっているような生活をしているんですよね。四万十川の近くですけれども、facebookの写真を見ると日本の原風景を感じるというか、電気ガスを使わずに自給自足の暮らしをしているみたいです。
編集長 海外の方ですか?
浄 いえ夫婦とも日本人ですね。オーストラリアですけれども、生活のスタイルが特殊な方々のところにいて、都会の街中での暮らしとは全く違うなか、おそらくそこで出会って四万十で暮らそうという話になったようです。
隆治 あらすじ聞いただけで暮らしに興味わきます。豊かな暮らしをしていそう。
浄 一冊本が書けそうなくらいですね。豊かさにもいろいろあろうかと思いますし、われわれの知らない豊かさだと思うのですけれども。「今日は椿油をとりました。」とか、素敵ですよね。
隆治 全くそうですね。豊かさの基準は本当に人それぞれだと思いますが、今ここでは同じもので豊かさを共感できていると思います。
浄 私よりもお二人(編集長と私を指して)の暮らしの価値観に近いと思います。彼らの投稿をみていると、朝日が昇ると同時に起きて作業して、食物にしても何にしても育てて、空いた時間は子育てしながら川に行って、さっき言った椿油とりましたとか、野菜収穫しましたとか、あるものでケーキ作りましたとか、すごいなーと思いながら見ています。
編集長 同い年くらいの方ですか?
浄 たしか同じか1コ上ではなかったかと思います。わたしが27、28のころにむこう(オーストラリア)に行っているので。
編集長 そう、海外に行っていたと聞いていますが。
浄 はい。いかせてもらいました。両親に命を削ってもらって。
編集長 笑! 留学ですか。
浄 ワーキングホリデーですね。
オーストラリアとニュージーランドへ。
オーストラリアは1年半くらい、ニュージーランドが3か月。期間は決まっていて。ニュージーランドに行くときは父の病気が見つかっていたので3か月でした。お寺の規模的に住職が2人というのは賄える状態ではないので、外に出ながらというのは考えていたので。働くとして、3.4か月というのはあまりにも中途半端ですよね。それならば海外に行かせてくれと。それで行かせてもらったということですね。
編集長 はじめのワーホリは目的みたいなのはあったんですか。
浄 親戚のおじさんがいましてレストランをしていたので、お坊さんになる前に日本で出来ない畑違いのところでの経験が欲しかったんです。そのうえで、しっかり頭を下げる仕事につくということもまじめにやっておいたらいいのではというアドバイスもあって。
編集長 どうしても海外でなければというわけではなかったんですね。
浄 はい。その点は両親が寛容だったので行かせてもらいました。

経歴ですか(笑)。
編集長 住職以前のことなどを教えてもらえますか。
浄 経歴ですか(笑)。
幼稚園、小学校、中学校、、、
編集長 歩いて。
浄 そうです。当時は歩いていくのは当たり前でしたね。変な人もおらんかったですし。
編集長 ご兄弟は。
浄 姉が2人に妹が1人ですね。
編集長 何歳違いですか。
浄 上の姉が6つ上、下の姉が3つ上、下に妹です。
編集長 仲良かったですか。
浄 悪くはなかったですかね。今はいい大人なので良いも悪いもなく。
編集長 女性ばかりじゃないですか。かわいがられたと思いますけれどプレッシャーとかもあったのかなって。
浄 プレッシャーとかは特になくて、だいぶ自由にさせてもらっていましたよ。義務教育の間は厳しかったですけれども。
編集長 厳しいというのはどういう。ちょっと興味が。
浄 時間を守れとか、ご飯の時の姿勢とか、箸の持ち方とか、音を立てるなとか。
編集長 道徳的なことですね。
浄 世間一般にでても困らないようなことを言われてきましたね。遅くまで帰ってこないとめちゃくちゃ怒られましたし、小学校4年生の時に野球をやらせてもらってましたけども練習で夜9時を過ぎたり遅くなった時は怒られましたね。これは父親からですね。
隆治 あーそれはたしかに厳しいか。
浄 歩いて帰るのが当たり前で車の送り迎えなどないのが前提だったので、親が安心して把握できる時間にということだったかと思います。3年生とかは夕方5時のサイレンがなったら急いで帰る同級生は多かったですね。
編集長 近所での同級生とか一緒に学校にいくような子は多くいましたか。
浄 同じ学年は3人でしたか。
編集長 あれ今とあまり変わりない。
浄 いや各学年にかならずいたと思いますので、地区全体では集団登校するくらい多かったですよ。
編集長 だいぶ多いですね。

和尚の仕事について
隆治 浄君の今の仕事を教えてほしくて、自己紹介がてらこんな仕事をしていますというのをきかせていただけますか。実はお寺の和尚というとお葬式の関わりと除夜の鐘をついているなどのざっくりしたイメージくらいしか持っていないもので。
浄 住職ですとしか言えないですね。住むことを生業としていることです。
隆治 あっそうかそういうことですね。住職という意味は。
浄 住んでお寺を守らさせて頂くということが一つ大きな仕事というか役目ということになりますね。だからこそお寺というのは公共性がある。公民館とかと同じ扱いですよね。
隆治 そうですね。
浄 なので無償というか、住まわせてもらう代わりに手入れとか維持管理をするというのは当たり前になります。公民館に人が住んでいるようなものです。ただ檀家さん含めて不要だから出て行ってくれと言われれば明け渡さなければいけないですし、そういう役割ですね。
隆治 そうか公共性という一面があるんですね。
浄 本来はですね。元々そうだったものがいつの間にか解釈の違いや宗派とかの違いで今みたいな形になっているのですが、私はそうやって育てられていたので。
意味がわからなくてもお経をごにょごにょいっている時間は、
隆治 僕は檀家ではないので関りが薄い部分がありますが、檀家さんにはこんなことをしていますというのはあったりしますか。
浄 会報を総代長が作ってくださって、それを配ってお話を。あと月参りといって毎月お伺いする方々もいらっしゃいます。
隆治 月参り?
浄 例えばあるおうちで亡くなった方の、3月1日に亡くなったとすれば毎月1日にお参りをさせていただいたりするとか。あとは年に一回1日の日、例えば4月1日ならばそこに前後の月を合わせたりとかして、あるいは命日に合わせてお参りをさせて頂いたりとかします。あとは、1,3,7,13,17とかの年忌でお参りさせて頂いたりします。
隆治 亡くなった方に対しての関わりがとても深いですね。
浄 亡くなった方もですけれど、亡くなった方の親族に対する関りが深いとおっしゃっていただいた方がいいかもしれませんね。
隆治 本当だ、そうですね。
残された家族と関わっていくということなんですね。お参りというとどういうことをするのですか。ちょっとイメージつかなくて。死者に向けて語りかけることがあるのだろうかとか、残された生きている方に向けて祈ることだったり、しゃべることがあるのだろうかとか、そのへんどんな感じなんだろうかと。
浄 それに関しては難しいです。
私が教わったのはお経というのは亡くなった方よりかは今いる方々に対するものであってほしいとはよく言われます。何のためにお経をあげるのですかという質問はあります。亡くなったお釈迦様だとかご先祖様に対して手を合わせて拝んでいるんですけれど、結局生きた方々が後ろにいらっしゃって、ありがたいことに聞いてくださっている。意味がわからなくてもお経をごにょごにょいっている時間というのは、親族からすれば静かにできる贅沢な時間。その時間を大事にしていただけたらと思います。例えば故人の方の思い出に浸ったりとか、今日のご飯なにかなでもいいです。静かに誰にも邪魔されない贅沢な時間を過ごしていただけたらありがたいかなと私は思います。だから生きた方々へのためという意味が大きいのではないかと。
隆治 色々腑に落ちました。贅沢な時間というのはいいですね。静かに過ごすという。
浄 お参りの間は携帯電話をお切りくださいとかマナーモードにしてくださいとか、電話に出なかったとしても、ごめんなさい今法要中やったとかお参り中やったとか言える。許される贅沢な時間を過ごすことが誰にも邪魔されずできる。
隆治 心穏やかに過ごせる大切な時間といえますね。
浄 はい。それは我々にとっても同じです。
えっ私のこと?
隆治 その時間がとても大切というのはとてもわかりやすかったです。そういった時間を普段の生活に持ち込もうとしたときにどうするんだろうと今思ったんですが、普段の暮らしで心がけていることだとか、大切な時間をつくる工夫だとかはありますか。
浄 えっ私のこと? 普段の暮らしでは私ができていないので。
隆治&編集長 えぇwwww!
浄 難しい部分ではあるんですが、お釈迦様の教えの一つとしてそれは座禅の時間であるとあります。ここは禅宗のお寺なので。
隆治 あっそうか。
浄 座禅をすることが安楽の法門であるといわれます。安心と書いてアンジンと我々読みますが安心を得る方法の一つであるといわれています。
隆治 ふーむ。座禅をすること。
浄 別に座らなくてもいいんで。私が修行道場でならった方法は座り方云々ではなくて、呼吸が大事だと。呼吸を整えることが一番大事なのだと。
隆治 そうですね。これは確かに普段の生活でもできそうですね。
浄 もちろん。

次回予告
第2話 9/7(土) 19時頃予定
ずいぶんとまじめな話になってしまった。
はたして和尚の心を丸裸にすることはできるのか?
次回、和尚の修業時代のこと、和尚のこれからの野望を聞いてみようと思う。
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プロフィール
松林宗浄(まつばやし そうじょう)

1985/5/8生まれ 大分県出身大学卒業後数年の修行の後、
2017年から由布市にある禅宗寺院の住職となる。
Magazine Crew
文・写真
深瀬 隆治(ふかせ りゅうじ)

「農園てとて」農場長。年間100種類ほどの野菜を栽培し、野菜セットとしてお届けする妻を見守り援護すること25年。
快適農的ヒモ生活を目指しつつ自給ちょいプラスのお米作りも嗜む。
好きなことは山登り、ギター、甘いものと酒。最近は猫をめでることを覚えた。
無農薬・無化学肥料・自家採取の種 農園てとて さんの野菜情報は 妻の雅子様が主に発信しているインスタグラムでチェック!
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