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キュウクツなおとな 【短編小説】扉⑤

キーワードでつないでいく連載短編小説。
小説と小説をつなぐのは何かのキーワードと人物です。
5話目のキーワードは、仕事、ハムスター、占い、そして次の話への愛です。
基本1記事読み切りで、次の主人公にバトンを渡していきます。
お楽しみください。

となりの扉⑤


好きだなって感じると、

きゅって、よっていきたくなるタイプ。

だって、好きなら一緒にいたいって思うでしょ?


「今度旅行行こうかと思うんだけどさ、ハムスターあずかってくれない?」

会社の先輩の瑛太さんが声をかけてきた。

それなりの爽やかさ、それなりのイケメン。
結婚してる素敵な人。

けど、ハムスターには思い入れがあった。
大切にしてあげなきゃいけない。

「ほかに頼める人いないんですか?」

家には猫がいる。

「転勤してきて、仕事ばっかしてる俺に友達がいそうだと思う?結婚してる人は奥さんに聞いてみないとなって言ったまま、はぐらかすし」

「そうですよね」

独身は気楽でいいよね、って聞こえてくるネガティブな空気に、たまに負けそうになる。


「うちのしらたまに相談してみます」

きょとんとしている瑛太さんに続けて言葉を返す。

「あ、猫です猫。白色だからしらたま」

気を抜いて、くしゃっとした笑顔にちょっとひかれる。

「そうなんだ。ウチのはいくら」


それから、しばらく『白玉』と『いくら』の話で盛り上がった。




お気に入りの喫茶店。
それは大好きな時間。


「恋愛運、最高?」

仲のいい友達の京香は、占いができる。

そんなことなくても大好きな友達の1人だけど、悩んでくると頼りたくなる。

「じゃあ、今年は期待しちゃっていいのかな?」

最高なんて言われたら、期待しちゃう。


…好きな人か。
頭に浮かぶのが、浮んじゃいけない人だから困る。

好きな人。
だけど、結婚してる人だから、
とてもいいお友達。

浮んでいきそうな心を、ぎゅっと自分につなぎ止める。

好きになっちゃいけない人がいるなんて、世の中なんて複雑なんだろう。
みんな大好きじゃダメなのかな。


子供みたいとか、破壊的考えとか言われるけど、好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌いなだけ。

ルールとかわかるけど、心はわかりたくないっていう。

はっきりしない中途半端な感じとか、あっちゃダメなのかな?
大人の異性の友達って、そんなにおかしいのかな?


独身は気楽でいいよねって、周りは言う。


大人って呼ばれる年になってから、なんだかきゅうくつだなって思う。




ふと見渡すと、目の前から私の頼んだケーキが運ばれてくる。

クリーム、マスカット、スポンジ、クリーム。
要するに、しあわせの形。

すっとフォークを入れる。

「おいしー! 最高」

落ち込みかけた心を、ぐっとひっぱる。
人生落ち込んだってしょうがない。

ただ楽しむだけ。






「じゃあ、僕とかどうですか?」

ふいにかけられた店員の声に驚いた。



sub title 楓のスイーツ



🔚


前作↓ 会社の先輩瑛太の話

続き↓飼い猫しらたまの話

そらいろmintからのお話し。

もやもやってする感情を
ぎゅっとこめました。

友達ならあり
推しならあり
趣味ならあり
仕事ならあり
接待ならあり

とかじゃなく、

ほんとにね、コミュニケーション大事。

言葉大事。

尊敬、大事だいじです。

皆さまに幸せを。

↑後日談 ようやく2人の話が進みます

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