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「こどもデザインスクール」開校!(前編)

2023年夏に実施した「こどもデザインスクール」について、授業の内容やそれに至るまでのあれやこれやを前編・後編に分けてご紹介いたします。



こんにちは。
株式会社レベルフォーデザインでデザイナーをしております、赤嶺舞と申します。
 
当初は一記事のつもりで執筆を始めたのですが、書いているうちになんだかんだと書きたいことがたくさん出てきてしまい、やたらと長くなってしまいました。お時間のある時にでもお付き合いいただけると幸いです。



こどもデザインスクールとは


読んで字の如く、こども向けのデザインスクールです。

「スクール」なんてちょっと仰々しくネーミングをしてみましたが、そんなにかっちりとしたものではございません。こどもが楽しくデザインに触れることができるように、(今回は)90分間のワークショップ形式で授業を行いました。

授業づくりを進めていくにあたり「そもそもデザインとは何なのか」「こどもたちに何を伝えたいのか」というデザイナーとしての本質的な問いにぶつかったり、こどもと対面しながら授業をしていく楽しさを知ったり、また自身のキャリアについて振り返ったりと、得るものがたくさんありました。


開校に至るまでのあれやこれや


そもそもなぜレベルフォーデザインが「こどもデザインスクール」をやることになったのか。

昨年2022年9月から12月までの3ヶ月間、東京都中小企業振興公社が主催する「デザイン経営スクール」に弊社代表の清水とともに参加しておりました。(こちらの詳細については、また別の機会で。)

とても実りのある3ヶ月間で、さまざまなご縁と素敵な仲間に巡り合うことができ、スクール修了後も定期的に集まりお互いの活動報告(という名の飲み会など)をしていました。
そんな中、ある日の二次会にて。

「赤嶺さん、こども向けのデザインの授業やってくださいよ!」
と、デザイン経営スクールで総合監修をつとめるkenma今井さん。

私がもともと教育学を学んでいたことや、今年度からベネッセでこども向けのデザインの講師を勤めていることなど、背景を汲んだ上での発言だ。
すると、「うちの子も連れていきますよ!」と他の方も言ってくれる。

そう言ってもらえるとなんだか嬉しいし、楽しそうだし、という気持ちが80%。
「頑張ればできるだろう」という楽観的な気質が10%。
おもしろげな提案を受けて「できません」と言いたくない負けん気が10%。

そんなこんなで「やります!」と宣言し、その勢いのまま日程を調整することになりました。が、なかなか全員の予定が合わず、ようやく決まった授業実施日はなんと2週間後! 正直「まじか」と思ったものの、一度やると言ったからにはやるしかないので、とりあえず頑張ってみることに。


そもそも「デザイン」ってなんだろう?


ベネッセで講師をやり始めたとはいっても、もともと用意されている教材をベースに授業を行っていたので、授業をイチから構築したことなければ、今回なにをするかも全く決まっていない、ゼロベースでのスタート。

そんな中でぶつかった最初の問い。
そもそも「デザイン」ってなんだろう?

大学卒業からデザイナーとして7年間やってきて、その答えを持っていると思っていたけれど、改めて明文化しようとするときちんと整理された答えを持っていない。“デザイナー(≒デザインをする人)”を名乗っているのに「デザインについて」がきちんと言葉で説明できない自分、情けない。

定義を構築するにあたって、まずは、辞書的な意味合いを調べてみました。

デザイン【design】 の解説           
[名](スル)
1 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市を—する」「制服を—する」「インテリア—」
2 図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具に—を施す」「商標を—する」
3 目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活を—する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

1と2はいわゆる「狭義」のデザイン。造形を意匠する、というものづくりに焦点が当たっている。3は「立案・設計すること」と表現されており、実際に手に取れるカタチをつくることに限定されてない印象。3の方向ではあるよなぁと思いながらも、調べ続ける。


デザインとは
「本質を可視化すること」(原研哉氏)
「問題解決のための技法」(水野学氏)
「形をもって美しい関係をつくること」(太刀川英輔氏)

偉大なデザイナーの方々の「デザイン」の定義を改めて見たりして、めっちゃなるほどと思ったり、その一方で、今回参加してくれる小学校4年生のこどもたちに伝わる表現ってなんだろう?と思ったり、ずいぶん悶々とした2週間を過ごしました。これだけ「デザイン」という言葉のもつ意味が拡大して、あいまいで、複雑ななか、「デザイン」をどう定義するのか。それも、こどもに理解ができる表現でなければいけない。

ああでもない、こうでもない、と頭を悩ませた結果。

「デザインとは、だれかのためにつくること」
と定義しました。


(授業スライドより抜粋)


対象がなく行うことではなく、だれかのために目的を持って行うこと。自由なお絵描きやアートとは違うよという、まずはそこを明言する必要があるのではないかと考えました。あとは、最近は「デザインって意匠じゃないよね」と、デザインの持つ“そうじゃないところ”がフォーカスされているけれど、やっぱり、最終的には何かをかたちづくること(目に見えないものも含む)なんじゃないかという思いもあり、あえて「つくること」と定義しました。そして、こどもにも理解してもらいやすいような表現を心がけた(つもり)です。

数年後、ヘタしたら数ヶ月後に見たら「この定義、ぜんぜん的外れだなぁ」と思ってしまうようなものかもしれないけど、いまのところは、私の中でしっくりきている答えです。


“どっちも捨てられない”授業づくり


自分なりの「デザイン」の定義をつくるのと並行して、実際の授業をどういう設計にするかも考え始めました。

私たちレベルフォーデザインの得意な分野は、ブランディングデザイン、なかでも特にグラフィックデザインと呼ばれるような平面でのビジュアル構築。だけれど、前述のデザインの意味の広がりからも分かるように、こどもたちが大人になる頃には2024年の今からは想像もつかないような新しい社会が広がっていて、そのぶん新たな課題があり、それを発見して解決することのできるような力が必要とされるはず。

だからこそ、ビジュアル構築に寄らない授業を作りたい。
とはいえ、年次的にも、デザインを楽しく実感できるものとして、なにかしらのアウトプットはあったほうが良いはず(そして、私たちが特に力を発揮できるのはその部分)。

悩んだ結果、「どっちも捨てられない!」ということで、以下のような4つのステップの授業の流れを作ってみました。

(1) そもそも「デザイン」とは何なのか?
(2) デザインにおける重要な要素
(3) 色についてのレクチャー&ワーク
(4) アウトプット(うちわづくり)

(1)でデザインの持つ大きな意味合いをなんとなく理解してもらい、(2)でやや具体的なイメージをつかみ、(3)(4)でものづくりの楽しさを伝えるような構成としました。
ここのアウトプットでなにをつくるかもめちゃめちゃ悩みましたが、幸いなことに弊社で過去に小学校でうちわづくりのデザインワークショップを実施したことのあるスタッフがおり、資料や当日の流れなど、相談に乗ってもらいながら進めていきました。

こうして、ようやく授業の流れのようなものができました。

しかしながら、この時点で授業開始は数日後。スライドの制作や必要材料の買い出し、実際の授業を想定したシミュレーションなどまったく手をつけられていない状態。
時折、プレッシャーで真顔になりながらも、やるしかないと自分に言い聞かせて猛スペースで授業準備を進めました。

▼  続きはこちらから
「こどもデザインスクール、開校!」(後編)


⚫︎この記事を書いた人
赤嶺 舞(あかみね まい)/  L4D / デザイナー
1994年生まれ、神奈川県出身。企業や地域のブランディングデザインを中心に活動中。ゆくゆくは、大学時代からの学びを生かし、培った力を子どもや教育に還元していきたい。
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