ガラス張りで経営する
個人の給与以外はすべてオープンに。全員経営はどこまで可能か。
レベルフォーデザイン代表の清水です。
私たちの会社では毎年5月に、全社員参加で新たな期に向けての「経営計画発表会」が行われます。ここでは、個人の給与以外はすべてオープンになります。その理由は「全員経営」を実現させるため。27期目を迎えるデザイン事務所が、なぜガラス張りの経営を続けているのか、決算報告会や経営計画発表会に至った経緯、経営計画書の作り方をお話しします。
ガラス張りの経営の理由
大好きで得意なデザインの仕事、一生懸命やれば会社はうまくいくはず。30代後半まで、そう考えて全力で働いていましたが、会社はうまくいきません。瞬間的には人が増え、仕事が増え、売り上げも増えるけれど、数年で人が辞め振り出しに戻る。その都度仕組みややり方、評価の方法を考え実施するがうまくいかない。これを2度繰り返した14期目に、私と会社の大きな転機となる1冊の書籍に出会いました。
京セラ創業者で倒産したJALをわずか2年半で再上場させた、稲盛和夫著「生き方」。その中に書かれていた「組織はトップの器以上にならない」というメッセージ。
トップの器。大きな衝撃を受けました。会社がうまくいかない。大きくならないのは、仕組みでもなく、外部要因でもなく、社員でもなく、「自分の器」ということに気づいた瞬間でした。よく言われる、雷に打たれたような感覚です。考えてみたら、経営について学んだことはありませんし、教えてくれる人もいませんでした。学校卒業後はデザイン一筋の人生でしたので無理もないと思いながら、40歳から始めて経営を学ぶ決意をしました。
その後私は、稲盛和夫氏から直接学ぶことができる「盛和塾」へ入塾し、ここから新たな学びがスタートしました。経営について自分が何も知らなかったことを知り、新たな気づきと挑戦の連続の中、その取り組みの一つに「ガラス張りで経営する」がありました。
私たちの会社の「ガラス張りでの経営」とは、社員の信頼関係をベースとして経営を行うということであり、そこでは、経理面をはじめ、すべてのことがオープンになっています。
自分たちが頑張って生み出した利益が何に使われ、その内容がどうなっているのか、会社やチームが今、どういう状況なのかが誰にでも理解できるようになっています。同時に私たち一人ひとりも同じように心を開き、オープンに仕事をすることを求められています。社内がガラス張りにすることによって、全社員が全力で仕事に取り組むことができると考えています。
そのために、決算時には決算書の原本を用いて、1年間の自社の成績を見ながら、全員で対策を考えてもらいます。
すべての数字をオープンにする決算報告会
レベルフォーデザインの決算報告会は毎年5月の日曜日の朝から開催されます。税理士にも参加してもらい、全員に決算書を配布し貸借対照表、損益計算書、販管費の内訳等を共有します。デザイナーでこれを最初から理解できる人はほぼいませんが、回数を重ねるごとに会社の仕組みやお金の流れが分かるようになってきます。
例えば経費削減と一言でいっても外注費、採用教育費、接待交際費、会議費、水道光熱費、消耗品等様々で、すべてが削減対象というわけでもありません。一人ひとりが内容を理解すれば、ポジションに応じて取り組み方も考えることができるようになりますし、1年後にその結果が数字となって現れます。赤字になればみんなで改善点や課題を考え、黒字になればみんなで喜び合い、さらに上を目指す。
そうすることで初めて会社や組織が自分ごと化され、全員経営の一歩が踏み出せるのではないかと考えています。ちなみに社長の役員報酬も全社員が知っています。
もう一つ、決算報告会に込めた思いがあります。経営をはじめ、ビジネスやお金のことは学校では教えてくれません。それにもかかわらず、学校卒業後はビジネスとお金に関わる環境下で何十年もの間、仕事に携わります。
私自身が勉強不足で後悔することが多かったため、社員にはどんな状況でも正しい判断ができるよう、自分たちの会社のことだけでなく仕事を通して人生についても学んでほしい、ガラス張りにすることにより自社のことを知ることで、社会全体のことも学んでほしいと思っています。
全社員のベクトルを合わせる経営計画発表会
午前中で決算報告会が終わり、昼食後は経営計画発表会が行われます。決算の結果を受けて、新たな期のテーマや目標を約4時間かけて話し合います。その資料として使われるのが、「経営計画書」。
これは毎年3ヶ月前から、私自身が会社の状況を見ながら考え一冊にまとめ上げ冊子にしたもので、今となっては48頁のボリュームとなりました。簡単に言うと社長の頭の中にあることを、全社員にわかりやすく伝えるために可視化したもので、以下の10項目が書かれています。
全体目標はチームごとの目標として細分化され、チームリーダーが考え冊子の中にまとめられ、この会で発表されます。また、目標についてチームでディスカッションし、さらに個人レベルに落とし込まれた目標の記入、発表もあり全員参加の意識を高めていくようにしています。
自分と同じように会社と社員の成長を一緒に考えてくれる社員が一人でも増えると、会社はもっと成長すると信じて約10年間継続してきました。
コロナ禍では、正直どうして良いかわからない状況にも直面しましたが、急遽すべての計画を練り直し、対応策を考えることで、借り入れを元にした事務所の拡大移転、周囲ではリストラが進む中、人材補充の強化等を計画的に進めることができました。考えていること、日々学んだことを整理し、計画として落とし込むことで、さらに3年後、5年後が見えてくるようにもなりました。
経営計画書に書かれていることは、すべて自分自身で書いたものですが、その内容の95%は尊敬する経営者である稲盛和夫氏をはじめ、松下幸之助氏、柳井正氏から学んだものです。それを自分と会社のステージ、種類に合わせて経営計画として構築したものです。まず優れたものを見て素直に学び、できるところからマネをすることが非常に大切だと感じています。振り返ると、デザインではいつもそれをやっていたのに、経営では何もできていなかった。だから30代後半までうまくいかなかったのだろうと、今思えば失敗の理由が理解できます。
少しずつですが会社の規模も大きくなってきました。多少なりともトップの器も大きくなったかと思いますが、まだまだこれからです。これからも「組織はトップの器以上にならない」この言葉を肝に銘じ、ガラス張りでの経営スタイルで精進を続けていきます。
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