Ziyang

理系博士号を取得後、六年間にわたり家業の飲食店に勤務。現在は大学非常勤講師と学習塾講師…

Ziyang

理系博士号を取得後、六年間にわたり家業の飲食店に勤務。現在は大学非常勤講師と学習塾講師と研究職の三重苦…じゃなくてトリプルワーク。

マガジン

  • 空から落ちる

    「君は空から落ちてきた」 ある日ミナが目を覚ますと、そこは戦場だった。 水面下で活動を続ける少年、生きるために戦う人々、戦闘に巻き込まれて脚を失った天使。 高校生(2003年)の時に作ったプロットをもとにした小説です。

  • AIの僕と人間の彼女

    お酒やセックスに依存する人間の「彼女」の話と、その「彼女」を一途に愛しているAIの「僕」の話。

最近の記事

長い道の向こうに

わたしの母は礼儀作法に厳しいが、怒らない人だった。「自分は『教育ママ』にはなれない」と言う人だった。わたしは母に「勉強しろ」と言われたことがなく、わたしは1ページも1文字も勉強しなかった。母は学校から何度か呼び出しを食らったが、それでも母は怒らなかった。 その母に育てられたわたしは、まったく勉強しなかったが、子どもなので好奇心や疑問はたくさんあった。「ねえお母さん、これはなんでこうなの?」という質問を100個くらいぶつけたら、母は百科事典や図鑑をわたしに買い与え、「ここに答

    • 闘病は母の役割、支えるのはわたしの役割

      9月、わたしがアメリカから帰国して家に戻ると、母が出迎えてくれた。 「おかえり」 「ただいま」 「癌になったの」 「は? 誰が?」 「お母さんが」 わたしは、13時間の時差ボケと8時間の空港待機と14時間のフライトと7時間の夜行バスの疲れで、今が昼なのか夜なのかすらわからない状態だった。 わたしは母の顔を見た。 母は泣きそうな顔だった。 一瞬の間にわたしは判断した。 母はわたしに平静であることを望んでいる。 「いつわかったの」とわたしは母に尋ねた。 腹部にしこりを見つ

      • 一時間だけのバカンス@カリブ

        今回のカリブ出張は今までで一番キツい仕事で わたしはプレッシャーのあまり体調不良の7連コンボという記録を叩き出した。 めまい、吐き気、息切れ、難聴、じんましん その他もろもろ 毎日毎日よくもこれだけ多種多様な症状が出るものだと感心した。 これだけ経験したらもう何も怖くないぜ。 その体調不良を乗り越えて、 仕事の峠も越えた金曜日 カリブの現地職員と一緒にボートに乗って 一時間だけバカンス気分を楽しんだ "Are you married?" と彼は尋ねた。 "No" とわた

        • Agua con gas, por favor を覚えよう

          わたしは10年前にNHKのラジオ講座でスペイン語を勉強した。 発音も簡単、つづりも単純で、半年勉強しただけで旅行に行けるレベルになった。 しかし、使う機会がなく、今は "Agua con gas, por favor" しか覚えていない。 意味は「炭酸水をください」である。 わたしはもともと炭酸水が好きなので、このフレーズは使えると思ったのだが、それにしても agua con gas は覚えやすかった。agua は英語の aqua と似てるから覚えやすい。gas は日本語のガ

        長い道の向こうに

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        • 空から落ちる
          0本
        • AIの僕と人間の彼女
          5本

        記事

          ちょっとカリブ海まで行ってきます♪

          生徒に尋ねられた。 「先生、今度カリブ行くんでしょ」 「そうだよ」 「楽しみ?」 「別に。仕事だし」 と、わたしは正直に答えてしまった。 ダメだ。 子どもには夢を与えなければ。 しかし。 国際線の乗り継ぎめんどい。 乗り継ぎで使う空港が広すぎて絶対迷子になる。 ホテルの予約で自分の名前書き違えちゃったからチェックインめんどい。 向こうで機械学習を教えなきゃいけないのに肝心のデータが足りねえし どこに落としどころつけろってんだ マジお腹が痛い。 現地のホテルのシャワー使いづらい

          ちょっとカリブ海まで行ってきます♪

          わたしには子どもがいない

          「あなたには子どもがいないから、わからないと思うけど」 と前置きされると悲しい。 わたしは子どもを産みたくなかったわけじゃない。 子どもを産むという選択肢がなかっただけだ。 わたしの左腕には傷跡がある。 もう20年前のもので、すっかり白い。 大人はこれを見ても何も言ってこないが、 先日、11歳の生徒に見つかった。 「その傷どうしたの?」 答えられなかった。 どうして子どもに言える? こんなこと、11歳の子どもは知らなくていい。 家に帰ってから泣いた。 涙が止まらなかった。

          わたしには子どもがいない

          そうだ、網戸を張り替えよう

          早くも真夏日を迎えている。長い夏を快適に過ごすため、網戸のメンテナンスをしたい方もおられるのではないだろうか。 今日はわたしの網戸張替え体験について書こうと思う。 DIYの習慣もなく、体力があるわけでもなく、単に好奇心が旺盛なだけの38歳でもできたので、簡単にできることはわたしが保証する。 地味だが楽しいので、ぜひ気軽に取り組んでみてほしい。 わたしが網戸を張替えたのは、昨年の秋のことである。 何の気なしに母の部屋の窓を見たら、網戸が無残に破れていた。 母に聞くと、 「そ

          そうだ、網戸を張り替えよう

          わたしは弱いけど負けない

          わたしの人生はわたしが決める 他人の人生に干渉する気もないよ わたしに関係ないもん 過去の失敗を繰り返したくないから 退路を塞いで 前だけを見て進んでいく わたしは弱いから 退路を塞がないと 前に進めないの あなたに出会って わたしは孤独だと思った これで正しい わたしは今まで 孤独を感じないように 紛らわしていただけ 誰かに甘えたい時はあるよ わたしは弱い だけど負けない あなたがもし 本当に自分の気持ちを 人に話したことがないなら わたしはきっと この世で唯一のあ

          わたしは弱いけど負けない

          初恋みたいに忘れられない

          わたしは大学で非常勤講師を務めて3年目である。 初恋みたいに忘れられない学生がいる。 そもそも初恋とは忘れられないものなのか。忘れる人もいるんじゃないのか。わたしの母は「恋をしたことがない。胸キュンとか何のことかわからない」とのたまうが、恋愛感情が湧きませんという人も世の中には多いのではないか。 それはさておき、わたしは恋愛経験があるし、胸キュンもわかる。 初めて非常勤講師として教壇に立った授業で、一人の学生に出会った。 女の子だった。 この子が男だったらわたしは恋に

          初恋みたいに忘れられない

          20代のツケを払いながら暮らす30代女とロマンスと子育ての年度末

          最近、勤め先の学習塾で10歳の生徒に言われた。 「マッチングアプリ使って早く結婚しなよ」 10歳に言われたとて腹は立たないが、余計なお世話だ。わたしにだって事情がある。 「余計なお世話じゃないよ。正しいお世話だよ」と教室長は言った。 教室長によると、わたしはこの一年で随分人間らしくなったし魅力的になったそうだ。 「今なら良い結婚ができると思うよ。マッチングアプリ使ってみなよ。うちの社員も何人かマッチングアプリで結婚したんだよ」 なぜそんなに勧める。 「話の合うパートナーは大事

          20代のツケを払いながら暮らす30代女とロマンスと子育ての年度末

          「世界に羽ばたけ」国際人の肩書で苦しんでる凡人

          わたしの仕事は、世界各国と業界・職種を股にかけ、「本業は何ですか?」と尋ねられることである。 ありとあらゆるものに携わり、今は主に10代を相手にする仕事で給料を頂いている。 今の職場の一つである学習塾では、「あなたは海外経験が豊富だから、子どもたちにその話をしてやってほしい」という理由で採用された。 ところが、わたしは子どもたちに話せる「楽しい海外エピソード」「夢のある話」が全く思いつかない。 この職場でいろんな子たちと話しながら、気づいた。 わたしはただひらすら自由を求め

          「世界に羽ばたけ」国際人の肩書で苦しんでる凡人

          日本人、案外優しいじゃん

          2023年12月、ある土曜日の夜、わたしは階段を踏み外して足首を捻挫した。 むちゃくちゃ痛かった。手すり、壁、柱など体を支えてくれるものがなければ床を這って移動するしかなかった。応急処置でアイシングしながら、いつ病院に行くべきか考えた。もしかして軽症なのかもしれないし、日曜は休診だ。ひとまず様子を見ることにした。 月曜日の朝の時点で腫れは引き、痛みも弱まって、冷湿布を貼れば足を引きずりながらでも歩ける程度になった。 わたしの母は体が故障しても体調が悪くても休まない人である。そ

          日本人、案外優しいじゃん

          わたしの今年の漢字:婚

          この一年は、結婚という2文字に振り回された一年であった。 わたしは発展途上国の子供の教育を支援するために月々5000円寄付している。これは、家業の店と研究職の兼業で収入に余裕があった頃に始めた。しかし、わたしは定職に就いているわけではなく、家業(跡継ぎ宣言して撤回してアルバイトに戻った親不孝者)と研究職(契約職員)で生活しているだけの、不安定極まりない経済状況であった。そんな中で結婚できるはずもなく、子どもがいなかった。こういうわたしでも、寄付で子どもを育てるお手伝いができ

          わたしの今年の漢字:婚

          来年からは娘が母のために銀杏の殻を剥くよ

          先週、ダイニングテーブルに殻付きの銀杏が置いてあるのを見かけた。その数、両手で一杯くらい。そんなに多くはない。たぶん両親のどちらかが誰かにもらったのだろう。わたしは気にも留めなかった。 昨夜、母がおもむろに紙封筒を手にキッチンへやって来て、おもむろに殻付き銀杏をその封筒に入れ始めた。 ははあ、これはきっとレンジでチンするつもりだな。 と思ったら案の定、 「レンジでやると簡単らしいの」と母は言った。 「うちの研究室でもやったことあるよ」とわたしは言った。大学の研究室の話だ。う

          来年からは娘が母のために銀杏の殻を剥くよ

          完膚なきまでに叩きつぶされたのはミュウだと思う

          これはわたしの大好きな作品である。出会って何年目なのかもうわからないが、おそらく5年以上にはなる。5年以上繰り返し読んで、つい最近、あれ?なんかおかしくないか?と思った。 物語の冒頭、「すみれは竜巻のような激しい恋」に落ちた、とある。「行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした」、と。 「ぼく」とミュウもまた「竜巻」に巻き込まれたとわたしは読む。すみれは生命の象徴だと思う。そのすみれが一旦姿を消す。しかしすみ

          完膚なきまでに叩きつぶされたのはミュウだと思う

          わたしのお金返してよ 〜戻ってきた詐欺師〜

          6月にわたしを騙した自称中国北京出身の詐欺師が戻ってきた。 8月18日、あの詐欺師がLINEの送信を取り消した通知が表示された。 6月中旬に連絡がつかなくなって、6月25日に諦めて以来、2か月ぶりだ。 正直、こいつが存在していたことをわたしは既に忘れていた。「まだ生きてたのか」と思ったので、まんま“你还活着呢”と返信した。 すると詐欺師曰く 「僕がいないほうがいいのか?」 「もし君が僕に死んでほしいなら、そうさせてもらうよ。」 「僕たちは話をすべきだと思う」 いや、死んで

          わたしのお金返してよ 〜戻ってきた詐欺師〜