ちょっと外に出ると
「天気がいいし、ちょっと外出る?」
「行きたい!」
「ほな、行こか。
ちょっと暑いから帽子かぶる?」
外出でも散歩でもなく「さんぽ」
認知症グループホームにいる人は、職員や家族が一緒でないと建物の中から出ることが難しい。
午前中の冬は少しあったかくなる時間。
夏は暑くなる前か、熱射を避けた時間を選ぶ。
で、「散歩しよう。」でも「外出しよう」でもなく「外に出てみる?」と声をかける。
「外」というのは、施設のガレージ内。
外出にはならないだろうし、散歩するほど広くない。
だから「散歩はさんぽでも、三歩やけどなぁ。」とも言ったりする。
歩かなくても
「暑いし、ええわ。」
「やめとく。」
と断る人も。
言葉がなかなか出てこない人は首を横に振って、「嫌です♡」と意思表示。
「お天気えぇで。
さっき蝶々とんでたで。
まだいてるかもしれんし、一緒に見にいこうや。」
などと言うと「うん」とうなずく人もいる。
中には「嫌よ、いやよ」が好きなのよ、という人も。
「別に行かんでもえぇで。」
を何度か言うと、一緒に外に出たりする。
少し歩く人もあれば、ベンチや椅子に座って青空や風、その時折の空気を楽しんで座っている人もいる。
外に出たら
玄関のドア開けて出る。
「寒いなぁ。」
「気持ちえぇわぁ。」
「もう秋やなぁ。」
と嬉しそうにする人もある。
また、一緒に歩いていると色んな会話をする。
話せる人も、ボロポロ単語の人も、ほとんど話せない人も。
娘が入院していた時のこと。
昔住んでいた家の近くにあった海。
息子の生活の心配ごと。
乗っていた車は赤でも黄色でもなく白。
中には見えないものが見える人もいる。
そんな時は
「そっかぁ、見えるんやね。
私は目ぇが悪いんかしらんけど、見えへんねん。
何が見えるか教えてくれる?」
とおしゃべりを続ける。
雲が好きだから
私はよく「なんで?」や「なんでやろうなぁ?」という質問をする。
「なんでバッタはバッタっていうんやろう。」
「そんなん知らんわ。」
「バッタ、バッタするから?」とか。
「カエルはなんてなく?」
「ゲロゲロやろ。」
「友達な、ゲコゲコって言うねん。
なんでやろうなぁ。」とか。
「えぇ天気やなぁ、青空やでぇ。」
「ほんまやなぁ。」
「でも、なんで空は青いんやろうなぁ。」
「雲が好きやから。」
「すご~い!空が青いのは雲が好きやからなんや。」
「じゃぁ雲が白いのは?」
「空が好きやから。」
これは、正直完敗。
感動した( *´艸`)