私だけのカツ丼
私だけのカツ丼を作った。
職場の施設で流行病の陽性反応が出た利用者様がいた。5類にはなっているが防護服やフェイスシールド、専用のマスクしての対応。この季節の防護服は地獄! サウナスーツみたいに汗がヤバい。そしてフェイスシールドは息で曇って視界が悪い。「私は一体何をしているのか?」という気分になった。
6時間立ちっぱなし動きっぱなしでヘトヘトになって帰り、シャワーを浴びて洗濯して、母に「今日は夕飯作らない」宣言をして、ふたりで出前でもとってくれるように伝えて寝た。
出来合いのトンカツを買って来たらしく「しんどい! しんどい!」と言いながら母がキャベツを切って焼き茄子を焼いてる。だから出前を取れと言ったのに! 料理を作らない私が悪いみたいで何か嫌!
パックに入ったトンカツを見て、急にカツ丼を食べたくなった。しかし他の家族にも作りたいとは思えない。他の家族のも作るとなると、玉ねぎを入れて、ひとりひとり作って…という形でやらないといけなくなる。私はこのトンカツを麺つゆで卵とじにしたいだけなのだ。
母に「お父さんもカツ丼の方が食べやすいんじゃない?」と言われたが、疲れ切ってる私は人の為に作りたい気持ちになれず、自分だけの為に作りたかった。疲れ切ってると誰かの為に何かをしたいと思えない。めちゃくちゃワガママで意地悪かも知れないけど、私は自分だけのカツ丼を作った。
麺つゆが濃すぎてちょっと辛かったけど、妥協せずに思った通りに行動できて私は満足だった。人から見たら、めちゃくちゃ性格悪いかも知れないけど満足した。自分ファーストにしたら、疲れ切って枯れていた気力が出てきて機嫌がよくなった。
私はたぶん優しくないし許容量が狭い。人の為に動ける余力はそんなにない。自分だけカツ丼にすることで機嫌がよくなるならそうしたい。
「あなただけズルい!」と言われても、私は私の機嫌を取る為に自分ができることをしよう。