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HSPの最新論文読み解き|内受容感覚を理解し身体の敏感すぎる反応から解放されよう
HSPとは 感覚処理感受性が高い人
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person : 以下HSP)とは、前回『HSP研究から見る感受性の高い人の適応力と心理的幸福感』でご紹介したように、感覚処理感受性(sensory-processing sensitivity, SPS)が高い人を指します。
感覚処理感受性が高い人は自分の感情や思考、身体の感覚に気づき、そのまま受け入れることができます。
感覚処理感受性の高いHSPは、高い感受性や洞察力を持ち外部刺激に対して過度に反応する一方で、その感受性が彼らに恩恵をもたらすことが示唆されています。これは生得的な脳内の心的過程の個人差によるもので、中枢神経系の影響が大きいと考えられます。
(著:Bergamot)
HSPの特性(研究により新たにわかってきたこと)
HSPは性格特性と関連しつつも、独立した概念であると考えられています。また、この特性には遺伝の影響があることも認められています。
近年では、感じる力の強さが一定ではなく人によって違うように、感覚処理感受性を連続したスペクトラムとして捉え、感受性のレベルによるグループ別の研究も行われています。
またアーロン博士によるHSP尺度(27項目の質問事項、一般向け書籍の中では23項目)は外的な環境からの刺激だけでなく、自身の痛みや空腹感など身体状態についての評価も含んでいます。
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HSPと内受容感覚:感覚処理の新たな視点
内受容感覚の基礎知識:身体が発する内なるシグナル
内受容感覚(interoception)は、呼吸のリズムや心拍の変動、体温の推移など、私たちの身体内部で起こる変化を感知する能力です。
この感覚は、感情体験や気分の変化、意識状態に影響を与えると言われています。また内受容感覚は、外部環境からの刺激を受け取る外受容感覚とは異なる、独自の感覚システムとして機能します。
MAIA:内受容感覚を評価する革新的ツール
内受容感覚への気づきを測定する手法として、MAIA(Multidimensional Assessment of Interoceptive Awareness, 直訳すると「内受容意識の多次元評価」)があります。この評価システムは、身体感覚に関する認識を8つの異なる側面・項目により角的に分析します。
本稿ではこれらを踏まえ、以下の論文を元に、HSPと内受容感覚への気づきとの関係について紹介していきます。
HSP尺度とMAIAを用いたアンケート調査
感覚処理感受性と内受容感覚の分離可能性
(上田 真名美, 多田 奏恵, 長谷川 龍樹, 近藤 洋史, 中京大学, 2022)
この2022年の論文では日本語版のHSP尺度を用いて、感覚処理感受性と内受容感覚の関連性について、興味深い調査を実施しました。
この研究では、日本語版HSP尺度を活用し、異なる感受性グループの特定と、内受容感覚との結びつきを探究しています。
研究では、日本在住の201名(男性94名、女性106名、その他1名、平均年齢41.0歳)が調査に参加しました。被験者は年齢、性別、HSP尺度、内受容感覚の評価尺度であるMAIAに関する質問に回答しました。
調査では、日本語版HSP尺度(髙橋、2016)の27項目と、日本語版MAIA(Mehling et al., 2012; Shoji, Mehling, Hautzinger, & Herbert, 2018)の32項目を用いて、詳細なデータを収集しました。
日本語版MAIAでは、内受容感覚への気づきを8つの要素に分類し、各領域における個人の認識レベルを数値化します。この手法により、身体感覚への気づきをより精密に把握することが可能となりました。
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◼︎ 内受容感覚への気づきの多次元的評価 (MAIA) の32の質問項目
1. 緊張しているとき、身体のどの部分が緊張しているか気づいている
2. 身体内に不快感があることに気づいている
3. 身体のどの部分が心地よいか気づいている
4. 呼吸が遅くなったり早くなったりするなどの変化に気づいている
5. 深刻な状態になるまで、身体の緊張や不快感を無視している
6. 不快な感覚から注意をそらしている
7. 痛みや不快さを感じても、何とか乗り切ろうとする
8. 身体の痛みを感じるとき、イライラする
9. 不快さを感じると身体に何か異常があるのではないかと心配になる
10. 不安におちいることなく、不快な身体感覚に気づくことができる
11. 周りで起こっていることに気を散らされることなく、呼吸に注意を向けることができる
12. 周囲でいろいろなことが起きていても、身体感覚に気づくことができる
13. 誰かと会話しているときに、自分の姿勢に注意を向けることができる
14. 注意がそれても、自分の身体に注意を戻すことができる
15. 考えている状態から再び身体の感覚に注意を集中させることができる
16. 身体の一部に痛みや不快感があっても、身体全体への気づきを保つことができる
17. 全身にしっかり意識を向けることができる
18. 怒っているときに、身体がどのように変化するかに気づいている
19. 生活の中で何か異変があったときに、それを身体で感じることができる
20. 穏やかな体験の後、身体が違うように感じることに気づいている
21. 心地よさを感じているときに、呼吸が自由で楽になっていることに気づいている
22. 幸せ・喜びを感じているとき、身体がどのように変化しているかに気づいている
23. (精神的に)圧倒されているときに内面に落ち着きをみつけることができる
24. 自分の身体に意識を向けたとき、落ち着いた感覚を感じる
25. 緊張を和らげるために深呼吸を使うことができる
26. 考えることにとらわれたとき、身体・呼吸に注意を集中させることによって心を落ち着かせることができる
27. 自分の感情の状態を知るために自分の身体に耳を傾ける
28. 気が動転したときに、時間をかけて身体がどのように感じているかを探る
29. 自分が何をすべきかを知るために自分の身体に耳を傾ける
30. 自分の身体の中に居心地の良さを感じられる
31. 安心感を自分の身体で感じられる
32. 自分の身体感覚を信じている
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MAIAの8つの要素(MAIA 下位尺度)
1.気づき:不快さ、快適さ及びニュートラルな身体感覚に関する気づき
2.気が散らない:痛みや不快な身体感覚を無視しない、または、それらから注意を逸らさない傾向
3.心配しない:痛みや不快な感覚を伴う精神的苦痛を心配、または経験しない傾向
4.注意制御:身体感覚への注意を保ち、コントロールする能力
5.感情への気づき:身体感覚と感情状態との関連性への気づき
6.自己制御:身体感覚に注意を向けることで、苦痛を調整する能力
7.身体の声を聴く:自己洞察に関する、身体への積極的傾聴
8.信頼する:自分の身体が安全で信頼に値するという体験
【結果】日本人はHSP傾向が高い可能性
感覚処理感受性の程度によって高感受性グループと低感受性グループの2つに分け比較した結果、高感受性グループの方が有意にHSP得点が高いことが示されました。
一方、欧米や日本の先行研究では、3つの感受性グループの存在が示されていますが、本研究では中感受性と低感受性グループを区別できなかった可能性があります。
これは参加者の属性や背景にある環境要因、さらには関連する性格特性の文化的な差異が影響していた可能性が考えられます。
例えば、日本人は神経症傾向の得点が高く、音嫌悪症の割合も米国人より高いことが示されています。これらの結果から、日本人の感覚処理感受性は相対的に高い可能性があります。
しかし、グループの識別に関しては国内で得られた研究知見と一致しない面もあり、さらなる検討が必要であると結論づけられています。
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例えば、日本では公共の場所でのアナウンスなどで「○○しないでください」とよく聞かれますが、これは海外ではほとんど無く、そもそも海外の人は他人に対して日本人ほど気にしないのだと思います。
漢方薬でも日本では胃腸が弱い人向けには処方も考慮されますが、同じアジア圏でも中国や韓国ではそのようなことはしないと言われるくらい、日本人は神経質なのかもしれません。
HSPと内受容感覚の関係から考える不安軽減へのアプローチ
高感受性者における身体不安の特徴と傾向
この研究では、高感受性グループと低感受性グループ間では内受容感覚の捉え方に顕著な違いがあることが明らかになりました。
低感受性グループは痛みや不快な身体感覚に対して気が散らないで冷静な判断を保ち、自身の身体への信頼感が高い傾向にありました。これは、高感受性の人々が身体感覚に対して敏感に反応し、些細な変化にも不安を感じやすい可能性を示唆しています。
この違いは、日常生活における様々な場面で影響を及ぼす可能性があります。例えば、ストレス状況下では、高感受性者は身体の微細な変化をより強く意識し、それが新たな不安を生む要因となることがあります。しかし、この特性を理解し適切に対処することで、より快適な生活を送ることが可能になります。
感覚処理システムの二重構造:外部刺激と身体反応の関係性
今回ご紹介した研究の分析結果から、人間の感覚処理システムには「身体感受性」と「環境感受性」という2つの独立した要素が存在することが判明しました。
身体感受性はMAIAで評価される8つの身体感覚項目と密接に関連し、環境感受性はHSP尺度の項目と強い相関を示しています。
この発見は重要な意味を持ちます。
外部からの刺激を処理する感覚処理感受性と、体内の状態を感知する内受容感覚は、別メカニズムとして機能するので、HSPの方々が経験する身体反応の多くは、外部刺激への過敏な反応が引き金となって誘発される可能性があります。
このことを理解することで、感じている不安や緊張が必ずしも身体の実態を反映していないかもしれないという、新たな視点を得ることができます。
【HSPのための瞑想】周囲の影響を受けすぎず 柔らかく観察できるようになろう|ソフトアイ瞑想
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
身体との健全な関係構築:高感受性者のためのウェルビーイング戦略
以上の研究結果に基づくと、HSPの高感受性の心身の健康を支援するためには、感覚過敏を緩和する具体的な対策が有効です。これには、環境調整やストレス管理技術の習得、さらには専門家のサポートを受けることなども含まれます。
感覚処理感受性は精神疾患とは異なる特性ですが、環境との相互作用によって心理的な負担が増大する可能性があります。そのため、感覚処理感受性と内受容感覚の個人の特徴や相互作用を理解し、それぞれに適した対処法を見つけることが重要です。この理解は、メンタルヘルスの向上に大きく貢献し、より充実した生活の実現につながるでしょう。
また、自己認識と受容の観点から、自分の特性を理解し、それを個性として捉え直すことで、より健全な心身関係を築くことができます。これは、高感受性者が自分らしく生きていくための重要な一歩となります。
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自己信頼回復のリラクゼーションでHSP傾向を軽減する方法
私も疲労や睡眠不足で辛いとき、神経が過敏になり、些細なことが気になることがあります。
その結果、物事を被害妄想のように捉えてしまうことがあります。
この状態は不安を引き起こし、心に余裕がなくなり、良い判断ができずにトラブルを引き起こしやすくなります。
低感受性グループのように、自分自身の体を信頼する状態を作り出すための取り組みができれば、HSPでも生活が楽になると思います。
疲労を感じたら、睡眠や休息を取るか、軽い運動でリフレッシュすることをお勧めします。また、心を落ち着けてリラックスできるように深呼吸や腹式呼吸・瞑想することも有効です。
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
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