【プロローグ】人を羨むしかできない自分からの脱出
「何か言いたいことがあるなら言いなよ」
「何考えてるのかわかんないよね」
まただ。
知り合った頃は上手くいくのだけど付き合いが深まっていくと
必ず言われてしまう。
そんなときは、決まってわたしは笑顔になる。
笑顔になることでその場をやり過ごす。
その場はよくても気づけば少しずつ距離を置かれたり、
いきなり振られてしまう。
原因はわかってる。
言いたいことが言えない。
怖くて言えない。
そして、言い方もわからない。
変わりたいとずっと思ってきた。
でも、結局なにも変われなかった。
周りから愛される方法
人間関係を改善する方法
相手の気持ちがわかる方法
そんな類の本はもう何冊読んだだろう……
本屋で目にしたものは片っ端から買ったかもしれない。
それでも、なにも変わらなかった。
友達がどんどん結婚していった。
友達、といっても親友まで呼ばれるものでもなく。
式に呼ばれることもあればハガキ一通での報告もあった。
みんな幸せそうな笑顔。
そんな考えがわたしの頭の中を駆け巡ったその時、
ピロン
LINE通知音が部屋に鳴り響いた。
開いてみると
どういうこと?
わたしのこと?
そんなことない。
誰か間違えて送ってきたの?
どう考えても怪しい……
イタズラ?
さらにメッセージが届いた。
わたしが読んでいるのをどこかで見ているようだ。
愛されたいと思うならまずは自分から
どういうこと?
相手に愛されなかったら意味がないじゃない。
きっとこれは誰か間違えて送ってるんだ。
気にしない、と思ったタイミングでまたメッセージがきた。
そのメッセージをみて鼓動が早くなる自分がいた。
気がつけば、わたしはボタンを押していた。
CLICK HERE
「きゃっ……」
ボタンを押した途端部屋中にまばゆい光が走った。
「……なんだか不幸そうなオーラまとってるわねぇ」
光の中から女性の声がした。
わたしは眩しさと戦いながら声の主を探す。
そして見つけた。
「ひっ……」
見つけたわたしは声にならない声を上げた
なぜなら、それは「わたし」だったのだから。
「なんで……」
「なんでも何も、このままだとわたしのいる世界が壊れそうだったからよ。
ほんとは来たくなかったけど…こうも酷いんじゃねぇ…」
わたしのいる世界が壊れる?
それはどういうこと?
「あ!ねぇ!大丈夫!?」
わたしの処理能力の限界がきたみたいでその先の記憶はない。
ただ、まばゆい光とともに、未来のわたしが来たということだけは
事実のようだった。
未来のわたしは、わたしが憧れていた人、そのものだった。
次回予告
未来からきたというわたしと今のわたし。
未来の世界が壊れるってどういうこと?
目的は「自分を愛してもらうこと」だそう。
そして、少しの間、今の「わたし」と未来の「わたし」の
奇妙な共同生活が始まる……