痛みや不調の改善に、身体の感覚運動を呼び覚ますエクササイズ、「ソマティクス」
「ソマティクス」という身体エクササイズを
体験してみました。
これは、身体の感覚を目覚めさせるのに、
とてもよいメソッドだと思いました。
ソマティクスは、
トーマス・ハンナというアメリカ人が開発した身体技法で、
痛みや不調を取り除き、
しなやかな動きを取り戻す方法というものです。
(トーマス・ハンナ『ソマティクス』晶文社,2023)
トーマス・ハンナは、
人間が本来の健康な身体の感覚と動きの機能を
失ってしまった状態を、
「感覚運動健忘」(センサリモーター・アムネジア)と名付けました。
彼のエクササイズ「ソマティクス」は、
この感覚運動健忘を回復させる効果をもつものです。
「ソマティクス」のエクササイズでは、
極わずかな動き、具体的には、伸展(伸ばす)と屈曲(曲げる)の動きを、
身体の各部分と全体とくに背骨と手足首のつながりを意識しながら、
身体全体を使って、ちょっとずつ反復して、
感覚運動機能を蘇らせていきます。
インストラクターの口頭指示に従って、
この間、約45分くらいだったでしょうか。
身体をゆっくりと、弓なりにそらしたり、少し曲げたりの動作を、
交互に反復しました。
ソマティクス実施後には、背中の緊張が低下し、
仰向けに寝たときに、
背中がそれまでよりぴったり床についている感じになり、
リラックスできた状態が得られました。
慢性腰痛にとくに効果があるようです。
ソマティクスは、このリンク先で体験できます。
トーマス・ハンナは、心と身体の相互関係に焦点を当てた
ソマティック・エデュケーションの分野で影響力のある人物です。
彼の著作は、健康と幸福を維持するための
身体への気づきと動きの重要性を強調しています。
以下、トーマス・ハンナの「ソマティクス」について紹介します。
彼は、独特の用語を用いています
トーマス・ハンナによる「ソマティクス」の主要概念
感覚運動健忘(センサリモーター・アムネジア)
感覚運動健忘症とは、慢性的なストレスや怪我によって、
特定の筋肉に対する随意的なコントロールが できなくなる状態を指します。
これが緊張や痛みの習慣的パターンにつながるのです。
パンディキュレーション(伸びをすること)
感覚運動健忘に対抗するためにハンナが提唱したテクニックです。
筋肉を意図的にゆっくりと収縮させ、
その後に徐々にコントロールされた解放を行います。猫が、伸びをするようなイメージと言えば伝わりやすいでしょうか。
このプロセスは、脳と筋肉とのつながりをリセットし、
自然な動きを取り戻し、緊張を和らげるのに役立ちます。
赤色光反射
これは恐怖や不安によって引き起こされる防衛反射で、
身体の前面の筋肉を収縮させます。長い間、対処しなければ、
背中の痛みや呼吸の制限といった慢性的な問題につながる
可能性があります。
緑色光反射
この反射は、行動を起こしたり、
課題に対応したりする必要性によって、
引き起こされます。
背中や首の筋肉が収縮するため、
使いすぎると慢性化し、緊張につながります。
トラウマ反射
この反射は、身体的損傷や精神的トラウマによって生じ、
身体の片側の筋肉が非対称に収縮します。
適切に対処しないと、
慢性的な痛みやアンバランスにつながります。
ソマティック(身体+感覚)エクササイズ
ハンナは、感覚運動健忘を克服し、
自然な運動パターンを取り戻すために、
筋肉と神経系の再教育を目的とした
特別なエクササイズを開発しました。
これらのエクササイズは、意識、コントロール、
動きの統合に焦点を当てています。
運動の神経生理学
ハンナは、筋肉の動きと姿勢をコントロールする
神経系の役割を強調しました。
彼は、慢性的な痛みの多くは構造的な問題ではなく、
機能不全に陥った運動パターンによるものであり、
再教育が可能であると主張しました。
影響と応用
疼痛管理
ハンナのメソッドは、痛みの原因となる
根本的な神経筋パターンに対処することで、
慢性的な痛みの状態を管理するのに
とくに効果的でした。身体への気づき
身体の動きや姿勢に対する意識の向上は、
全体的な健康状態の改善や怪我の予防につながります。ファンクショナル・ムーブメント
脳と筋肉のつながりを改善することで、
体性運動は機能的な動きを強化し、
日常動作をより簡単で快適なものにします。情緒的・心理的効果
身体と心は相互に関連しているため、
身体的な動きのパターンを改善することは、
感情的な幸福やストレスレベルにも良い影響を与えます。
おわりに
トーマス・ハンナのソマティクスの研究は、
理学療法、ボディワーク、運動教育などの分野に
永続的な影響を与えてきました。
トーマス・ハンナのテクニックは、
個人の身体のコントロールを取り戻し、
痛みを軽減し、
生活の質を向上させるのに役立てられています。