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消したら、楽になる
──ダメだ、これ。
22時。
すっかり秋めいてきて、少し肌寒いくらい。
静寂と涼しさが少し寂しさを感じさせる。
目の前のパソコンと対峙する孤独な自分がいた。
この文章、面白いか?
“ついに、きた。”とも思うし、
“また、きたか。”とも思う。
承認欲求の波がきた。
読まれないnote。
この世にどれくらいあるだろうか。
日々、世界に産み落とされるnote。
自分はその海を漂っていた。
読まれたい。
明らかに承認欲求だ。
褒められたいとか。
称賛されたいとか。
認めて欲しいとか。
いろいろな感情が渦巻いている。
ずっと、飼いならしてきた。
上昇志向が強い故に、自分に大きな承認欲求があるのは自覚していた。
それをある程度はコントロールできているはずだった。
「書くの、やめちゃうか。」
ぽろり、と口から出た。
弱音が静かな空間に消えていく。
それは無理だろうな、と頭を軽く振る。
歌も物書きも離れては戻りを繰り返している。
やめられるなら、とっくにやめているはず。
それに、こんなことを口にする奴は大概やめない。
やめる人はひっそりといつの間にか消える。
“書く”か。
お前は何のために書いてるんだっけ?
目を閉じて自分の内側に問いかける。
お前は何のために書いてるんだっけ?
思い出せ。
最初は、ただの主張だった。
聞いて貰えなかった言葉たちを集めて、自分を表現していた。
私の居場所は、ステージの上か文字だった。
声にならない叫びを放出していただけだった。
そこから少しずつ変わっていった。
私も。叫びも。
わかりあえなくても、寄り添えることを知った。
言葉が添い遂げる力を知った。
誰かに何かを伝えたかった。
だから、noteの世界に飛び込んだ。
いつか書こうなんて思っているnoteに踏み入れたきっかけ。
アレは、運命でしかなかった。
そうでなければ、今こんなにズブズブと沼っていないだろう。
たくさんの素敵なnoterさんに出会うこともなかっただろう。
それは、とても幸せなことだ。
幸せと同時に残酷だった。
己の才能のなさを見せつけられたような気がした。
胸が熱く、何かが込み上げるような感情に呑み込まれた。
──これが、嫉妬っていう感情なのか。
困惑と面白味を感じた。
まだ、感じたことのない感情があったのか。
人間って面白いなぁと笑わずにはいられなかった。
もっと、うまくなりたい。
もっと、もっと……。
己のすべてをさらけ出して、表現し尽くしたい。
私の「好き」を知って欲しい。
ふっと力を抜いたり、
自分のことを少しでも好きになれたらいい。
こんな自分がいてもいいんだって認められたらいい。
かつて自分がそうだったように。
そのために書いているんだろう?
目を開けた。
何も変わらない光景が広がっている。
心のモヤは少しだけ晴れた。
それでも、書ける気はしない。
ちょっとだけわかっていた。
ただ、ずっと目を逸らしていただけで。
いつの間にか、「書きたい」より「書かなければならない」という気持ちが増えていた。
「書く」ことが義務になっていた。
自分の足枷になっていた。
「書く」は目的じゃない。手段だ。
伝えたいことがあるから書いている。
「書く」を目的にした瞬間に、「書かなければならない」に変わり、それは心折るのだ。
折られた結果、書けなくなってしまった。
足枷を外すにはどうしたらいいだろう。
「書かなければならない」という観念を外すには。
ふと目に入ったのはパソコンの画面。
下書きが多すぎる。
noteを書くときには必ず目に入る下書き一覧。
そこをメモ欄として使っていた。
書きたいことや浮かんできたフレーズをそのまま書き留めていた。
消すか、全部
下書き一覧を見る度に圧迫されるなら、全部消してしまえばいい。
決めてからの行動は早かった。
ネタを忘れるのは困るのでスクショをし、一つひとつ丁寧に消していく。
ひとつ消えていく度に、心の重りが外れるような気がした。
27個。
そこには、27個のネタが詰まっていた。
こんだけ重りがついていれば、そりゃ心も指先も重くなるはずだ。
残ったのは書ききった下書きだけ。
それだけがスッキリとして見えた。
きっと、書き直すんだろうけど。
それでも、今はよかった。
足枷を外したら、なんとなく「書きたい」気持ちが湧いてきた。
何を書こうかな、と選ぶ気持ちになった。
いつのまにか、義務にしたりプレッシャーにしたり。
ちょっとした負担があると書けなくなる。
いいじゃん、自由にしたって。
どうせ書くなら、伝えたいもの書きなさいよ。
今度こそプレッシャーを自分にかけすぎないように。
パソコンの灯りがゆるく光り続けていた。