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なぜいま”聴き方”なのか?

連携団体の一般社団法人「いとのこ」さんからのオーダーで、話しの聴き方研修を行っています。
とても重要な場を担わせて頂いていますので、研修を行うにあたって大切にしていることを幾つか記しておこうと思います。


1.なぜいま聴き方なのか

1) 言葉で表せる想いはごく一部。
ご自分の想いに向き合ってみると分かるかと思いますが、言葉として表せる想いなどたかが知れています。また言葉として出してみても、その言葉が近似値というだけで100%想いに合致しているものでもないでしょう。

さらに、同じ言語を使うからつい通じている気にもなりますが、その言葉のとらえかたは実は人によって微妙に異なります。
頑張って言葉にした想いが正しく伝わらず、かといって言葉に出来ていない想いは無い物とされてしまう……。

「聴く」というのは、言葉を聴き取ることではなく、言葉をフックとしてその背景にある膨大な想いに耳を傾けることと考えています。

2)聴き手は「話ささる」ことに貢献できる。
想いを表現するのは容易ではありません。支離滅裂になったり、訳の分からない言葉や身振り手振り、ときには擬音も使ったりするでしょうが、こういう表現の仕方を際限なく受け止めてもらえる場面はそう多くはないのではないでしょうか。

”話し手が思うままに想いを表現する”ことを良しとする姿勢が聴き手にないと、本当の意味で想いを話すことは難しいと思っています。

現に私自身はそういう聴き方をして頂いた経験が数えるほどしかありません。
そういう聴き手がいると、心の底から想いをさらいとれたようなすっきりとした気持ちになるものです。

3)聴き方ひとつで人生も変わる。
話し手が想いをカタチにしようと奮闘し、そのとき表せたことで自分自身の想いに気づくと、それにより行動が変わる可能性があります。大げさに思われるかもしれませんが、これは大なり小なりその人の人生に影響を与えます。

聴き手が何気なく「問う」たり「いいですね」とつぶやくことは波紋となって、話し手の話す内容に振動を伝えます。
それが良いか悪いかではなく、向き合って話しを聴くとはそういうことだということです。
だからこそ聴き手が、どんな佇まいで話し手に向き合うのかを真剣勝負をするような心構えでいたとしても、決してやり過ぎではないと思っています。

これらを意識し、自分自身の興味本位で話しを聴いたり、気づいたら自分の話しをしてしまうことがないように、聴くの意味を問い直すことが大切だと思っています。

2.単なるノウハウの伝授ではない

とはいえ、「聴くために重要なたった一つのこと」みたいなシンプルな話しではありません。
私自身が持っているノウハウは経験則でしかなく、こうやったらうまくいったということを延々話しても意味はないでしょう。
そこでこの研修ではこんな流れで進めてみることにしました。

①まずはどんな聴き方があるのかをお互いに観察し合う
②良いなと思ったこと、真似してみたいと思ったこと、自分ならこうするなと考えたことをフィードバックし合う
③次から実践してみたい聴き方を選ぶ

参加者は日々現場で実践をしている方々なので、その経験からくる聴き方には必然がありますし、もやもやもあります。それらを持ち寄り、観察し合うことから学べることはとても多いものです。

そして、バージョンアップをして実践をし、その結果を持ち寄りまた学び合う。この繰り返しで輪としての経験則が蓄積され、なおかつ自分なりの聴き方も見出していくことができると考えています。

3.状況に合わせて選べるようになる

参加者に繰り返し伝えているのは、その聴き方が良いか悪いかのジャッジではなく、どんな聴き方があるのかを自覚することと、どんなときにどの聴き方が良いのかを意識することです。

例えば、この輪で出てきた聴き方の一つに「聴き手のテンポに乗せる」がありました。初対面で緊張しているときに、それをほぐすためにフランクに話しかけながら話せる状態にしていくために、こういう聴き方が有効なこともあるでしょう。

一方で、ずっとこの聴き方をしていると、話し手が話したいことではなく、聴き手のレールに乗って話すだけになってしまう恐れもあります。
状況を見ながら聴き方を切り替えていくことがなにより重要なのです。


聴き方は意識さえすれば日々実践していくことができますし、そうして日々実践しなければなかなか身に付くものでもありません。

また、道具箱にこれだけ入れておけばどんな現場でも大丈夫、というものでもないので、常に入っている道具を見直して必要なら追加していくことも大切です。

今回、こうして聴き方に興味を持つ方々と学び合える場は、私にとっても貴重であり、これを続けていくことで自分の聴き方もまた変化していくことを楽しみにしています。

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