【音楽鳩】威風堂々・新世界より ほか(伸友フィルハーモニー管弦楽団 第1回定期演奏会 / 鎌倉芸術館 大ホール)【感想】
以前よりたまに拝聴しておりましたゆる言語学ラジオの姉妹番組、ゆる音楽学ラジオのパーソナリティ・浦下さんが運営する「伸友フィルハーモニー管弦楽団」の第1回定期演奏会に行ってきました。おそらくこういったコンサートに行くのは初めて。
1日予定を詰め込んだ日の最後がこのコンサートだったため、眠くなったらどうしよう……など思っていたのですが、杞憂でしたね。
演奏する人を見るのも、指揮者を見るのも、音楽を聴くのも楽しかった。
プログラムは目次の以下三曲。
「新世界より」以外の曲は実はあまり知らず、予習するか迷ったのですが、結局予習せずに行きました。
ということで今回の感想文は、オーケストラというものについてというのもあるでしょうが、恐らく100年レベルの今更な曲の感想もあるでしょう。
『威風堂々』第1番(E.エルガー)
表彰状を渡すときのあの曲、という印象しかなく、つまりあの有名なフレーズしか知らない気がする……。という状態で聞きました。
最初にそのフレーズがきたところは思ったよりも曇った感じがするなあと思っていたのですが、のちにそこがそのフレーズを繰り返す前振りのような部分だとわかり、うまくできているなあと思うなど。素人が聞いていてもそれがわかるようにできているんだからすごいですね。
曲全体で、一番の盛り上がりの部分に向けて、粘りを持って高めていく感じがあり、良かった。気分の盛り上がりの準備をさせてくれる。
この曲は行進曲らしいですが、あの有名なところ以外で行進するの、難しくない? 結構緩やかな感じのテンポになるので、歩みの速度が変わらない?(素人並感想)
(この回は未見のため、あらためて後ほど見ます)
チェロ協奏曲(E.エルガー)
妻が病床につき、自分も調子悪く療養している時に書いた曲(雑要約)みたいな解説を先に読んでいたからか、演奏が始まると「お前が死ぬなら、俺も死ぬ」といったような感じに聞こえておりすごかった。前知識に振り回されすぎ。
以下に、曲を聴きながら広がった情景を書き記しますが、片っ端から全て妄言です。
第一楽章
お前が先に死ぬならあとを追う、という感じがある。確実に、前述のインプットがあったために、そうなったんだろうね。一緒に死んでくれそうな感情を聴いてしまった。
この曲は、エルガーの奥さんが実際に最後に聴いた、エルガー制作の曲だったらしいけれども、こんなに情熱的な音楽を聴かされるのなら、愛されている実感がとても湧きそう。そんな風に思えるほど、初めから熱情を感じる曲の作りだった。
第二楽章・第三楽章
楽章の切れ目?が分からなかったのですが、第一楽章とは違って静かな感じ。ちょっと身体の調子の良い日々。療養にふさわしいような森の中で、二人静かに暮らしている情景。束の間の穏やかな日々と幸福。
第四楽章
静かな日々から再び悪化し、激情に変わる。病であろうとも、お前が先に死ぬなら共に死ぬ、という意志を固めて、短刀すら持ち出しそうな切羽詰まった状況に。
夫がそれを訴え、妻が驚く。初めは考え直すように止めるものの、段々とその激情に同調してしまい、ついには涙ながらに話がまとまり、心中と相成る感じ。驚き、恐怖、最期の会話、あ、今、妻を刺した! そのまま己も刺して本懐を遂げた……とまで思ったところでちょうど曲が終わりました(?)。
一曲通してとても情熱的で衝動的な感じのする音楽だと感じた。またチェロという楽器はやっぱり良いですね、あれは弾いていると、己の身体を、音色が震わせて抜けていくんだろうな。
ぜひ曲を聴いてください。鳩の言っていることが隅から隅まで妄言だと分かります。
交響曲第9番『新世界より』(A.ドヴォルザーク)
これが聴きたかった……! 鳩はクラシックの音楽の中で(雑な括りで申し訳ないのですが、なんと言ったら良いか……?)新世界よりが一番大好き。
よく聴いているのは上記のものなのですが、実際に生で聴くと、もっともっとよっぽど豊かな音がするのですね……。数年前にパソコンを新しくした際に、旧パソコンより新パソコンはよほど音質が良くなったと思っていたのですが、それでも聴こえていない音があったのが発見でした。ひとつひとつの音が全部きちんと聴こえる……特に低音がとても豊かだった……。
こういうものの本物を現実に聴きに行くことの意義と楽しさはここにある。
細かいところでいうと、後ろの木管?金管が大活躍なのを改めて知った。あの特徴的な音はそうやって鳴っていたんですね。また第三楽章のトライアングルが、星の瞬く音のようで綺麗だった。コントラバスもあんなに大活躍していたんだなあ。
そして、いつも聴いている上記の演奏は、少しテンポが早め?なんですかね? 今回聴いた演奏では、とてももったりしつつ緩急があるように感じた。知ってはいても、指揮者での演奏の違いを初めて実感したかも。
たまに譜面上?全ての楽器が消音される箇所があるのですが、そこが綺麗に無音になるので、無音も音のうちなのだなあと思いました。無音、空白って、連続するものの中に入れ込むの、ちょっと怖い気がするというか、実際に聴いてみるとなんか不思議な感じ。譜面がそうなっている?からそういうものなのかもしれませんがなんかね、文章に意図的に を入れるようなものだと思うと不思議ですよね。
また、通して聴いていて、第四楽章の盛り上がりがとても素晴らしかった。第一~第三楽章までに盛り上げてきたものが一気に花開くようで、本当にずっと聞いていたかった。終わってほしくない、というのを思ったのは久しぶりでした。あまりに素晴らしく、もはやこれを鳩の葬式でかけてほしいなと思うなど(?)。
(追記)そういえばふと思い出したんですが、「新世界より」というタイトルから、鳩はずっと「これから来る新世界!(明るい展望/期待!)」みたいな気がしていたのですが、「新世界から故郷へ(郷愁)」なんですよね。真逆だ……。でもどちらにも聞き取ることができる気がするのも面白いところ。
新世界よりは、曲を最初から最後まで知ってはいるので、楽団の人たちを眺める余裕があったのですが、皆さん楽しそうで良いな~。もっともこれは鳩が気が付かなかっただけで、全曲通してそうだったのかもしれません。
指揮者の人も楽しそうで、こんな楽しそうにやることもあるんだなと思いました。楽器を弾くのはもちろん楽しいけれども、ここまでにこにこ良い汗をかきながら音楽をやるというのは、体感したこともなければ見たこともなかったかもしれない。まさに音を楽しむというのはこのことなのでしょう。
プログラムが全て終了して、浦下さんがぼろぼろ泣いていらっしゃったのも、全力さが伝わってきて良かったです。好きな人と同じ方向を見据えて切磋琢磨していく。年単位の時間をかけて準備したものを、多くの人に目撃してもらう。それが拍手喝采で幕を下ろすんですから、感動も一入でしょう。そしてここからまた次に繋いでいくのが楽しく厳しく、やりがいのあることですね。
公演概要
伸友フィルハーモニー管弦楽団 第1回定期演奏会
2024年6月9日(日)
『威風堂々』第1番(E.エルガー)・チェロ協奏曲(E.エルガー)・交響曲第9番『新世界より』(A.ドヴォルザーク)
鎌倉芸術館 大ホール
伸友フィルハーモニー管弦楽団について
「ゆる音楽学ラジオ」は以下リンクから