【読書】蜘蛛が巣を張るように、一本づつ人物相関図ができあがるカササギ殺人事件【ネタバレなし】
登場人物の関係がわかりやすいように、人名を矢印で「→好き ↓疑い」とかで繋いだやつあるじゃないですか。そう!相関図。
カササギ殺人事件はページをめくるたび、蜘蛛が葉先からいっぽんづつ糸をひいていくように新しい登場人物からその先へ、人物相関図ができていく。
作品は葬儀の場面からはじまる。
歴史ある屋敷の使用人が、階段から落ちて死んでしまった。どうやら掃除機のコードに足がからんだ事故のようだが、その葬儀に集まった人々は何を考えていたのか、ミステリーにしてはあまりに小さい事故から、それに関連しているのかどうかもわからない、またひとつの小さな事件が起こる。
おだやかな町の登場人物ひとりひとりが、それぞれにうっすら疑惑の目で見ていることがわかってくる。
蜘蛛がゆっくり、木の枝のさきっちょから一本づつ糸をひいていくように、人間関係ができあがり、依頼されてやってきた余命わずかな探偵が「最後の仕事」に挑む。
そしてさらに、「カササギ殺人事件」は架空の人気作家が書いた作中作という設定になっている。
単体では落ち着いた作風だけど、どうやってそれが書かれたのか、架空の作者の実像と、新たな謎につながる。
名探偵が聞き込みで情報をたどる古き良きミステリーを、現代劇で包む二重包装ミステリー。
ふたつの物語は「ここで繋げたか!」ってトリックで通される。
それも、「これから読んでもらうミステリーは大ヒットシリーズ」という設定で、あらかじめ見えていたけど読者の気づけなかった伏線であざやかに回収してしまうと予告めいたことを書いてから作中作を読ませる。
本の帯にあるようなハードル上げ発言を冒頭で自分からやってしまう、真っ向勝負の堂々とした一作。
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読んでくれてありがとうございます。
これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。