【読書記録】韓国、北朝鮮を本でしか知らない。「血と骨」
最近、本を読むのに多少「がんばり」がいるようになっていたのだけど、これは濁流に押し流されるように、気が付いたら残りページが全部なくなっていた。あああ終わってしまう!読む前には右の方にいたしおりがここまで移動している!さびしい!
どんな話かというと、暴力を振るう最悪なかまぼこ職人の人生。
十日に一日の休みで限界まで働かされ、給料は日本人の半分以下。労働基準法も衛生管理も人間らしい暮らしもない。
酔って帰って、妻を殴って家を壊して子供を怒鳴る。
だんだんみんな慣れてきて、家族は早めに脱出するようになるし、近所も驚かなくなる。
50年以上前の、朝鮮半島から日本にわたってきた人の生活が楽だとは思ってないけど、その生き方は想像を越えていて、途中から「異世界」のできごとのように認識して、怒りも感じなくなる。
不機嫌なときは同僚を殴り、女が気に入れば襲い、子供は見殺し。途中からでて来た人によって何かが変わるかも!と期待しても、ただただ底の見えない暴力が続くだけ。
戦争で町が焼け野原にされて、幼い子供は自分の足で生きる場所を探す。戦争という巨大な暴力よりも「酔って殴る父がいつ帰ってくるか」という、目の前のことが第一。
登場人物のほとんどが、生きている楽しみを味わうことなくただただ労苦の果てに死んでいく。
それでも、分厚い上下巻の文庫本を閉じたときは満足感があった。
「本当の人生は1回きりなのに、これを読むことによって2度の人生を生き切った!」
という、ふしぎな充実感があった。暴力的な人格の奥に不器用な優しさがあるとか、日本人に差別されてゆがんだ性格になったとか、そういう納得できる話にならないのが良かった。
異物として暴れまくり、終わったあとも読者の中に居座る。
先ほど検索したら、映像版を演じたのがビートたけしさんでたまげた。この役やったのか!正直、調べなくて助かった。そっちにイメージ引っ張られちゃうから。ぼくの中では「あれよ星屑」↓
の、向かって左のほうが極悪になったイメージでした。(3月4日現在無料セール中)
僕にとっての韓国は金城一紀の「GO」と「1982年キム・ジウン」と「血と骨」この3冊。
あとはいくつかNETFLIXでドラマを見ただけ。たった3冊しか読まずにひとつの民族を知った気になるのはおかしいけど、それぞれ違う世代の作者が実体験をベースに練り上げた、腰の入った一撃だから、日本人なのにずっと歴史を見届けてきたような気分になる。