【読書記録】アーサー・C・クラーク「宇宙のランデヴー」にしびれた話をさせてください、さあ。
これの話です。何十年も前の作品なので、完全に結末まで言っちゃっていいと判断してしまいます。要はネタバレです。
「宇宙のランデヴー」は、遠い未来の、宇宙に飛来した謎の物体をめぐる物語。
銀河の果てから巨大な「くるくる回る水筒」みたいなやつが飛んでくるのです。最初は流星かなにかだと思ったが、明らかに他の文明によって作られたもの。
このまま行くと永遠にないのかと思っていた「異星人との接触」。そのときがついにやってきた。
しかしその物体は、太陽に近づいてこのままだと消失しそう。そこで近くを飛んでいた宇宙飛行士らが、その物体に入って、何なのかを時間制限内に明らかにする。
「それ」に着陸すると、簡単に開いたが、内部は果てしなく無人の空間が広がっている。何キロも続く長い長い階段があって、人類より体力的に優れた生き物が使用することはわかるが、生き物の痕跡はなく、海のような地形や、入口のない建物のようなものがある。
無重力の真っ暗な空間を調べるだけでめちゃくちゃ面白い。
階段を使うときの描写が、無重力だから
「どの向きを下と考えて、この重力での走り方はこうだ」
と、慣れていきながら、だんだん最深部に降りていく。
とてつもなく貴重な情報を与えてくれるかもしれないし、それ自体が巨大な爆弾のようなもので、次の一歩がなにかセンサー的なものを起動させて人類滅亡まであり得る。
その中に踏み込んでいく。
その物体の内外で、これは何の目的で飛来したのか、ディスカッションが始まるわけ。
これは「墓場」であり、遠くの宇宙船の乗組員が死んで間違って飛んできたとか、これこそ神のつかわした「箱舟」であり、すすんで乗っていくべきで、乗ったものだけが助かるのではないかとか。
「三体」に出てきた兵器のように人類を蹂躙する可能性が少しでもある以上、どれほど資料的価値があろうと、そいつが動く前に破壊しておくべきだ、という主張もあり、「それ」が動く前にミサイルを撃つ強硬派も現れる。
この展開が面白い!予想を越えてきた!
謎の物体の正体はこれでした、という謎解きじゃなくて、判明する前に人類は「それ」を破壊すべきか、残すべきかの選択を迫られる。
宇宙に飛来した謎の物体の正体はなんなのか!?
結論を言えば、小説のオチが「結局わからなかった」で終わる。
まあ、続編があることにあとで気づいたのでわかるんでしょうが、わからなかった、って結末が素晴らしく美しいと思った。
調査から帰還した宇宙飛行士が最後に、
銀河系の外側には想像できないような「なにか」があるのに、人類は宇宙の、ほんの一部のことしか知ることはできないんだなあ、と寂しく考える。
わからないことがあることを「わかって」終わる。
なにかを研究したり創作している人は、こういう境地にいるのかな、と思った。世界の仕組みも、宇宙も死も神も、すべてを「こうでした」とわかることなんて到底ない。
死ぬまで特定の分野を必死で研究しても、すべてのことの1パーセントわかっている状態が1.1パーセントになるぐらいしかできない。
永遠に知りたいことに届かない無力感と、自分はなんて広大な世界の中に生きているんだという、すがすがしい気持ちが混ざり合う。いろいろヒントはあるので考察できそうなのも楽しい。