大切な何かを失ったとき、そっと手渡したくなる一冊に出会えた話
先日、自分や誰かが大切な何かと別れがあったとき、そっと手渡ししたくなる一冊と出会えた。その本についてこのnoteで書いてみたいと思う。
少し前から随筆家の若松英輔さんのXをフォローしている。
綴られる言葉の美しさ、みたいなものもあるのだけれど心の底からハッと気付かされる、そういうことだったのかぁ…!と再認識させられるメッセージがたくさん書かれていて、いいねや保存をたくさんしている。
Voicyも始められてて、実際の声や語り口も聴き入ってしまい、紹介されている書籍も気になって本の欲しいものリストが増えていく日々である。
若松さんの書かれている書籍も気になるものが多くて、まずはじめに手軽に読める文庫サイズの「悲しみの秘儀」を買ってみた。
「悲しみ」とつくタイトルから、悲しみと触れ合うのかぁ…と正直率先して読みたい気持ちになった訳ではないのだけれど(本を読むときは楽しいやワクワク、ちょっとスリル、穏やかな癒し、みたいなものを選びがちな気がする)、装丁がとても素敵で手元に置いておきたい気持ちも優って購入。
この表紙の素敵な刺繍作品はアーティスト・沖潤子さんが手がけたものだそう。
色彩もそうだけど、一針ひと針祈りが込められているような、人の手の温もりが感じられるものに惹かれてしまう。
内容は26編で構成されていて、死者や哀しみや孤独について書かれた詩やエッセイなどを読み解き、人間の絶望と癒しを見出す、という流れになっている。
若松英輔さんの実体験も書かれていて、より悲しみや孤独をリアルに感じられた。
読んでみて頭で理解するよりも先に心が反応しているような、こんな感覚は初めてでびっくり…!
その心の反応を頭で理解するのに立ち止まって何往復か読んでみたりして。
この語り尽くせない感覚さえも忘れないように抱きしめておきたいような、深く自分と向き合う時間になった気がする。
言葉でうまく説明することがとても難しいけれど、自分の中の無意識の部分や琴線に触れる文章があふれていて、まだ触れたことのない深い悲しみにも思いを馳せながらも、そこからまた力を湧かせてもらえるような、とても心地の良い読後感だった。
自分や誰かが大切な何かと別れがあったとき、そっと手渡ししたくなる一冊と出会えた気持ち。
大切な人との別れを想像するのはそれだけでも涙が流れそうになるけれど、この一冊はその先の力を湧かせる一助となってくれるだろうか。
ときどき読み返してまた自分と深くつながって、癒しの時間をつくれたらいいな。