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『ライオンのおやつ』感想

こんにちは。

今回は今年のベスト本について話したいと思います。
今年というか去年ですが。

2023年に読んだ本の中でよかったのは、
小川糸さんの『ライオンのおやつ』でした。

職場の人に薦められて読んでみた作品。
切なくも、最後まで温かいお話でした。

医者から余命宣告をされた主人公、雫は、瀬戸内の島にあるホスピスで最期の時間を過ごすことを決めます。
そこでは、入居者が生きているうちに食べたいおやつをリクエストできる、「おやつの時間」がありました。
雫はおやつを決められずにいましたが、そこで過ごすうち、入居者たちの最期を見届ける時が増えていきました。
そして、雫もだんたんと身体が動かなくなっていきます。

死という重いテーマを取り上げているのに、ずっと胸が温かかったです。

物語の中で、死というものを重く考えていないからなのかもしれません。

重く考えない、というのは軽く扱うということではまったくなくて、しっかりと生きたいという切実な思いも描きつつ、でも死ぬっていうのはそんなに怖いことじゃないよ、っていうのを、すんなりと心に響くように表現されていました。

読んだ人が、少しでも死ぬのが怖くなくなるような物語を書きたい、と思い『ライオンのおやつ』を執筆しました。

ライオンのおやつ|小川糸さんからのメッセージ

本当にその通りだと思います。
その思いをここまで忠実に表現できるのは、やっぱりプロの作家さんだなぁと思います。

そして、私が一番印象に残ったのが、百ちゃんが亡くなってしまうシーン。
読みながら泣きました。生きたいと願う女の子が病気と闘っているというだけで涙腺が緩みます。

百ちゃんと会うまでの私は、まだ人生が続いているのに、死ぬことばかり考えていた。でも、百ちゃんが教えてくれたのだ。死を受け入れるということは、生きたい、もっともっと長生きしたいという気持ちも正直に認めることなんだ、って。そのことは、私にとって、とても大きな気づきをもたらした。

ライオンのおやつ|小川糸

この文章を読んで、はっとしました。
ホスピスで過ごしている人たちだからこそ、残りの人生を精一杯生きようとしている。

人は、いつ死ぬかわからない。
余命宣告され、死を覚悟することも、
理不尽に、唐突に死が訪れることもある。

だからこそ今、生きていることに感謝して、精一杯生きよう。

そんなことを思い出させてくれる一冊でした。



#今年のベスト本

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