手の届きそうな高さを雲が流れている
その日は天気が不安定で、雨が降りそうな気配がしていた。いつもの通りベランダで煙草を吸っていて、ほんのすこし手を伸ばせば届いてしまうんじゃないかと思うくらい近くを雲が流れていた。
もちろんそれは錯覚だ。所詮は標高数メートルに建つビルの七階。いましがた自分が吐き出した煙に手が触れるだけだ。
雨の日の部屋は煙草の匂いがする。雨脚が強まってどうにもベランダで休憩できなくなると僕は、窓辺に立って煙を吐き出す。なるべく窓を開けないようにしても、抵抗虚しく多少の煙は部屋に入ってきて