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コツコツ投資を続けた55歳の新聞記者が、FIでリストラや老後の不安がなくなり生活を楽めている話

コツコツ投資家さんインタビュー、今回はブログ「夢見る父さんのコツコツ投資日記」を運営するブロガーの夢見る父さん(以下、夢見父)さんにお話をうがかいました。

夢見父さんは1998年から投資を開始。親御さんの介護のために、2020年(50歳)にいったん会社を早期退職し、「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」を実現。この時点で1億円以上の金融資産を保有していたためです。その後、仕事のやりがいを感じたい、と51歳から仕事に復帰。再就職後は本人曰く、お小遣い程度(前職の年収の3割)の収入を得ながら、コツコツ投資を続け、趣味の時間も楽しんでいます。

茅場町のカフェでこれまでの投資ストーリーをうかがいました。


400万円を元手に投資を開始

――夢見父さんが投資を考え始めるきっかけを教えてください。

夢見父:1998年頃に「金融ビッグバン(第2次橋本内閣が提唱した日本の金融・証券市場制度改革のこと)」という言葉に興味を持ったのがきっかけです。もともと両親とも株式投資をしていて、「会社四季報」が家に転がっているような家だったので、投資に対するハードルはなかったですね。

―― 株式の売買委託手数料が自由化され、ネット証券がでてきた頃ですね。当時、メディアでこの言葉を見聞きした人は多いと思いますが、そこからなぜ投資に?

夢見父:当時勤めていた大手新聞社は全国転勤があり、赴任地で地方銀行に口座を作りました。ですが、東京に戻ると(支店やATMも少なくて)その口座が使えないな、と。それで、定期預金にあった400万円を解約して、投資資金に充てようと思いました。雑誌などでも盛んに投資の特集などが組まれていましたから、預金より面白そうだな、と思って。

万一に備える分として100万円だけ預金においておき、残りは投資に回すことにしました。1991年に入社した時に養老保険(30年後に満期で800万円受け取るタイプ)に加入していたので、お金が必要になることがあれば、途中で解約すればいいと思ったからです。

――予定利率が高い頃のお宝保険ですね。投資をしようと思ってから、最初にどんな行動をしましたか。

夢見父:野村証券の東京支店にいって、関心のある分野の会社の株式(フジテレビやスクウェアなど)や、「フィデリティ・欧州中小型株・オープン」、「マイストーリー」といった投資信託を購入。東京銀行にも行ってドル建て預金もしましたし、欧州の債券にも投資しました。

その後も、日本株をメインに投資を行いました。ライブドアショックの時に安かったソフトバンクグループの株を買って、それはずっと持っています。 当時はあまり深く考えずに主に大企業の株を購入していましたが、投資を始めて9年ほどで400万円が2,000万円ほどにふえました。

リーマンショックで資産が4分の1に

――そこまでは順調だったわけですね。

夢見父:はい。ただ、2007年にFX(為替証拠金取引)で600万円損をしました。さらに、2008年にはリーマンショックもあり、金融資産は2,000万円から500万円まで減ってしまいました。恐くなって、ここから数年間、証券口座にアクセスしませんでした。

FXは「主婦が億単位の利益をあげて脱税・逮捕」というニュースをみて、「それなら自分にもできるのでは」と安易に始め、熱くなって外貨預金も解約してFXに資金をつぎ込んだんです。が、結局、全部溶かしました。ショックで呆然となりました。

インデックス投信と直販投信

――そこから、投資信託の積み立てに変わるきっかけは何だったのですか。

夢見父:2009年に娘が生まれて、倹約して貯金を始めました。ポイ活もするようになってネット証券にも口座を開設。2011年には父が亡くなり、JRなど大型株数百万円分を相続したこともあり、2012年から本格的に投資の勉強をしようと思い立ちました。

旧モーニングスター代表(当時。現.SBIグローバルアセットマネジメント代表)の朝倉智也氏やセゾン投信社長の中野晴啓氏(当時。現.なかのアセットマネジメント)、インデックス投資アドバイザーのカン・チュンド氏などの本を読んだことで、インデックスファンドを活用した国際分散投資が合理的でいいかな、と思うようになりました。この時期はバートン・マルキール氏やチャールズ・エリス氏、木村剛氏、勝間和代氏など、国内外の投資関連の本を読み漁りました。

セミナーにも参加しました。草食投資隊(コモンズ投信会長の渋澤健氏、セゾン投信社長の中野晴啓氏=当時、レオス・キャピタルワークス代表取締役社長の藤野英人氏の3人で結成し、長期投資を訴求していた)や、ほかの直販の運用会社、野村証券やSBI証券主催のセミナーなどにも積極的に足を運びました。竹川さんたちが主宰していた「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」にも参加したりしてましたね。

投資方針を決定

――コツコツにもご参加いただいてましたね。色んな本を読んだり、セミナーに参加したりして、運用方針は定まりましたか。

夢見父:2012年から低コストのインデックスファンドの積み立てをするようになりました。目標アセットアロケーションも先進国株50%、日本株25%、新興国株15%、日本債券10%と決めました。

海外株式(先進国株と新興国株)はインデックスファンドをメインに据えましたが、日本株式については個別株やアクティブファンドも保有しています。アクティブファンドを加えたのは、セミナーに参加する中で、草食投資隊(コモンズ投信、レオス・キャピタルワークス)や鎌倉投信の理念に賛同したためです。

海外株式はインデックスファンド中心。
国内株式は個別株、アクティブファンドも

ただ、インデックスファンドの運用管理費用(信託報酬)が安くなると、他の投信に乗り換えたり、2~3年おきにアセットアロケーション(資産配分)の変更をしてみたり。REIT(上場不動産投信)や金ETFを購入したり、やめたりと、当初はだいぶ迷走していましたね(苦笑)。

――商品を選ぶときのこだわりはありますか。

夢見父:アクティブファンドについては、直接説明してくれて納得感があるかどうか、ですね。直接ファンドマネジャーの説明を受けると購入意欲につながりますよね。同様の理由で、農林中金バリューインベストメンツの「おおぶね」なども保有しています。もっと運用成績の良い投信もありますが、顔が見えないと長期保有がしにくいですから。

――今年の5月には金融資産の残高が2億円を超えたそうですが、それなりの金額を積み立てに充てていたのですか。

夢見父:最初は無理のない範囲でスタートしました。2014年から一般NISA、2016年からはジュニアNISA口座を活用し、企業型確定拠出年金にも加入。月額20万円近く投信を積み立てていました。ボーナスのときにはスポットで(配分割合が低くなった)投資信託を購入して、調整をしていました。

共働きで家族とも贅沢はしないため、多い時には自分の年収の4割~半分くらい(300~400万円)を投資に充てることができました。自分はそれほどモノにこだわりがないんですよね…。かばんも10年以上使っていますし、時計もドン・キホーテで買った安いモノだし、当時は弁当男子でしたから。

現在の投資状況

――現在はどのような投資をしていますか 。

夢見父:資産形成のコア(中核)の部分は投資信託の積み立てを継続しています。毎月積み立てているのはひふみ投信、結い2101、コモンズ30ファンド、セゾン・グローバルバランスファンドの4本で合計3万円。

あとはiDeCoで毎月2万3,000円を積み立てています。こちらはeMAXIS Slimの先進国株インデックスファンドと新興国株インデックスファンドを購入しています。

証券口座で毎月積み立て中
・ひふみ投信:1万円
・結い2101:1万円
・コモンズ30ファンド:5,000円
・セゾン・グローバルバランスファンド:5,000円

保有中
・投資信託:28本(新NISA+旧一般NISA1,000万円、特定口座8,700万円)
・株式:26社+ETF:4本(5,000万円)
・個人向け国債:2,000万円
・MRF:700万円

*そのほか預金もある

iDeCoで積み立てている投資信託(SBI証券)…1,300万円
・eMAXIS slim 先進国株式インデックス(70%)
eMAXIS slim 新興国株式インデックス(30%)

ただ、こちらは退屈ですし、心臓もバクバクしない(笑)。そこで、サテライト部分は金融資産が1億円を超えた段階で、1割くらいまでは自分が好きなもの(面白いと思った会社の株や金融商品)に投資してもよいことにしています。たまに失敗することもありますが、それもよし、です(苦笑)。それも、着実にコアで資産形成をしているからできることですが…。

――値動きに慣れたのはいつ頃ですか。

夢見父:価格の変動が恐くなくなったのは2012年以降でしょうか。リーマンショックで大きな含み損を抱えましたが、リスク資産をそのまま放置したことで、2012年以降アベノミクスの波に乗って、その後資産が大きく膨らみました。

売らなかったことで、結果的に資産をふやすことができた。この経験があったので、そのあと一時的に大きく下がることがあっても、それほど慌てなくなりました。

――お子さんも証券口座は開設しているのですか。

夢見父:はい。2016年にジュニアNISA口座を開設し、2020年までに400万円(80万円×5年)の枠を埋めて、そのままロールオーバーして運用を続けています。確認したら、830万円になっていました(5月10日時点)。あと、セゾン投信のこども口座(カンガルーぽけっとカンガルー)で投信を積み立てていて、それを加えると1,000万円弱くらいになっています。そのほか、教育費用には学資保険(ソニー生命)にも加入しています。

お子さん名義で保有している投資信託
ジュニアNISA口座
・<購入・換金手数料なし>ニッセイ TOPIXインデックスファンド
・たわらノーロード 先進国株式
・たわらノーロード 新興国株式
・GCIエンダウメントファンド(成長型)

セゾン投信(こども口座カンガルーぽけっと/特定口座)
・セゾン・グローバルバランスファンド

――投資にはどれくらい時間をかけていますか。

夢見父:投資は積み立てがメインですし、セミナーもだんだん参加しなくなってきたので、ほぼゼロです。ブログを書くためのネタに、毎日「マネ―フォワード」は更新していますが。

――ご家族とはお金の話はしますか。

夢見父:娘には経済の基本を教え、娘名義の口座をチェックするように言っていますが、無関心なのが悩みの種です。妻は投資が嫌いなので、家計の話しかしないですね。お互いの年収や金融資産の金額もじつは知らないです。

体験にお金を使いたい

――投資以外のお金の使い方で何かこだわりはありますか。

夢見父:もともと映画が趣味で、映画館で年間400本以上観ています。「日本一映画館で観ている男」を自称しています(笑)。クラウドファンディングもしており、年間100万円近くは消費していますね。日本では年間1,200本の映画が公開されているので、仕事をやめたら、1,200本は無理でも600~700本くらいは観られるんじゃないかな…。

国内で唯一ゾウに乗れる市原ぞうの国にて。

介護の最中に『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス)を読んだこともあり、「DIE WITH ZERO」を目指してお金を使っていきたいと思っています。コロナ後は今まで経験したことのないアクティビティを楽しんでいます。

例えば、東京のナイトヘリクルーズや、特撮の聖地といわれる栃木県・岩船での爆破体験、子供を連れて国内で唯一ゾウに乗れる市原ぞうの国への観光等などです。地下アイドルのライブなどにも行ってみました。月1、2回はアクティビティで遊んでいますね。

特撮の聖地といわれる栃木県・岩船
東映のスタッフが特撮番組にあるような爆発をセットし、
その前で写真撮影

寄付で紺綬褒章を受賞

――寄付もされていますよね。

夢見父:寄付も「DIE WITH ZERO」の一環ですね。前職(大手新聞社)時代に貧困問題を担当していたこともあり、余裕があるなら、困っている人を助けたいと思い、寄付をしています。

2022年に日本財団の社会的養護の子どもたちの奨学金に、2023年にはプラン・インターナショナル・ジャパンの孤立している若年女性のための居場所プロジェクト「わたカフェ」に、合わせて1,000万円を寄付しました。このほか5団体に毎月4万円ずつ継続的な寄付を続けています。

これらが評価されて、(公益のために多額の私財を寄付した人に贈られる)紺綬褒章を受賞しました。紺綬褒章は、過去には渋沢栄一氏や松下幸之助氏、最近では安室奈美恵さんや原辰徳さんなどが受賞しています。こうした方々と並んで一介の会社員である自分が表彰されるなんて。これはうれしかったです。

――1,000万円以上の寄付とはすばらしいですね。多額の寄付をしようと思ったのはなぜですか。

夢見父:2020年に前職を退職したとき、過分の割増退職金を受け取りました。すぐに使う予定がないので、そのお金で米国株投信を購入したところ、コロナショックの反動で2倍以上になり、さらに再就職も決まりました。もともと妻も正規雇用で働いていて、我が家はそれほど贅沢もしないので、経済的に余裕ができました。

自分はそんなに大した人間じゃないのにこんなにお金を持ってて、世の中に申し訳ない、という意識があるんですよね…。すごい運がよかっただけでここまで来た。一方で、特にコロナのようなことがあると、弱い人にしわ寄せがいく。それもあって寄付してます。

仮に60代で退職したら、(貧困問題をサポートする)団体でボランティアをしたいと思っています。今は資金の提供ですが、そうした団体のイベントなどにも参加してるので、時間ができたら継続的にボランティアをしてもいいかな、と。

――ゴールはどこにおいていますか。

夢見父:投資をいつまで続けるかを悩んでいますね。60歳になったら、証券口座や商品も整理しないといけないと思ってます。

今、資金を預けているのは6銀行、6証券会社、4独立系投信と多岐にわたります。年を取ってもマネーフォワードがあれば管理はできるかもしれませんが、相続となったら、遺族への負担はかなりのものになりそうです。ただ、鎌倉投信やコモンズ投信などの理念には共感しているし、受益者参加型のイベントにも参加したいので保有は続けたいし…。これからどう整理するか、考えていきたいですね。

――投資を始めたことで、何かリターンは得られましたか。

夢見父:FI(Financial Independence)できたことで、リストラも老後の不安も恐くなくなり、精神的に安定しました。また、ブラックだった前職を退職でき、今は再就職して、趣味の延長上で小遣い程度(前職の年収の3割)を稼ぐセミFIREを実践しています。最近は消費もふやしていて、まずまず幸福な人生だと思います。

投資を通じて、よい出会いもたくさんありました。きっかけは投資ですが、映画好きの人たちと友達になったりと、投資を超えたつながりができました。

投資で成功した理由は、➀共働きで多めの金額を投資できたこと、②市場から退場せず、積み立てを継続したこと、③早期退職で多額の退職金を得たことだと思っています。若い方は投資信託の0.1%のコストにこだわるよりも、投資に回す金額をふやす(投資元本をふやす)ことが大事だと思いますよ。

編集後記

今回いちばん印象に残ったは、「自分は運がよかった」という言葉。夢見る父さんに「なぜ多額の寄付をするのか」と問うたときに、出てきた言葉です。もちろんご本人も色々な努力をされてきたと思いますが、サラっとそう言えるのはステキだな、と。そう思えると人にも優しくできる気がします。

基本は「続ける」こと
夢見る父さんのいう成功した理由のうち、➀積み立て投資の金額をふやす、②市場から退場せず、積み立てを継続する、の2つは実行したいですね。夢見る父さんほどの金額を毎月積み立てるのは難しいですが、今と未来のバランスを考えつつ、積立額を「少し」でもふやせるかどうか、検討してみましょう。そして、②続けることは何より大事です。

プラスαの投資は上限を決めて

資産形成を行う上では、投資信託の積み立てを淡々と続けるだけでもよいと思います。ただ、夢見る父さんのように好奇心旺盛で「この商品を買ってみたい!」という気持ちがむくむくとわいてくることもあるかもしれません。

夢見る父さんの場合には無理にその気持ちを抑え込むのではなく、上限(金融資産全体の10%)を決めています。たくさんの商品に投資したり、頻繁に売り買いしたりすると当初決めた投資計画を実行できなくなる可能性も。プラスαの投資をする場合には上限を決めるなど、ルールを決めましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました! noteの「スキ」ボタンをクリックしていただけると嬉しいです。今後もコツコツ投資家さんへのインタビューを続けていく予定です。ご意見・感想などがありましたら、お寄せください。取り入れていきたいと思います。

◆過去のコツコツ投資家さんインタビューはこちらから。


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竹川美奈子
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