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妄想レビュー #20

これは架空のレビューからお話を書こうという試みです。まだ存在しない物語を、あなたならどう書きますか?

今回は読んだ人物の物語も少し書いてみました。
レビューもひとつのお話として読めたら、より楽しいのではないかと思いまして。

⬛︎佐々木 千尋 (26歳 会社員)のレビュー

 会社の先輩と飲んだ帰り道。柔らかな夜風に身を任せてふわふわと、私は歩いていました。
 幸せで悲しい夜。頭の中には先ほどの時間がはらはらと舞っています。柔らかな髪から流れてくる甘い香りや、白い指先をそっとひと撫でした薄紅色のネイル、その指にはめられた冷ややかに光る銀色のリング。その光の鋭さを思い出し、ツキンと心に傷みがはしったそのとき。目の前がほのかに明るくなったのでふと顔をあげると、そこには満開の桜がありました。
 何もない小さな公園。人気のないその場所は現実から切り離されたかのように、妖しく美しく灯っていました。誘われるままに桜の下にある古びたベンチに腰を下ろすと、手が何かに触れました。文庫本です。『花あかりの夢』というタイトルに思わず頁を繰りました。

 夜桜の花片がみせる夢の話。花片を挟んだ本を枕元に置くと、主人公はさまざまな恋物語を夢にみるのです。その桜の木の下ではじまった恋。散った恋……。主人公のみた夢たちは甘く切なく、儚く優しく。

 半分まで読んだ私は、明日もここに本があることを祈り、栞の代わりに花片を一枚挟んで本をベンチにそっと戻しました。次の恋物語は自分のことが描かれているかもしれない、と思いながら。

※これは架空の人物の架空のレビューです

こちらは私がゆるりとやっている、企画です。
好きなのでたまにちょいちょいアレンジを加えつつ出していきます〜。


このレビューから
望月みやさんが書いてくれた
お話はこちら✨



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