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【創作大賞感想】傷を負った大人と傷の場所を知らない少年のお話
本を読んで「楽しいな、良かったな」と思う瞬間。
それは人それぞれだと思いますが、
私の場合は読書を通じて
「知らなかった世界のことを知れる」瞬間がたまらなく楽しくてワクワクします。
丁寧に書かれていればいるほど感情移入できますし、その世界に没入できます。
そんな小説を読み終えたあとは、
もうなんて言えばいいんでしょう。
ほわわわわーん、ですよ。
ひとしきり、ほわわんしたあとは、
「読書って素晴らしい!」
「神様ありがとう!」
「いや、神様じゃなかった!作者さんだよ!作者さん、書いてくれてありがとう!いやいや、待てよ。むしろこんなにすごい小説を書けるなんて作者さんは神様なのかもしれん!」
と、1人で大騒ぎします。
大げさじゃなく、本気で。
どうしてこんなに興奮しているのかというと、
創作大賞への応募記事で、
出会っちゃったんですよね。
そんなすごい小説に!!!
針を置いたらあの海へ
俺はただ、明日も俺のまま、
この身体と心のまま目を覚ましたい。
それだけだ。
<あらすじ>
16歳のニットの名手・レオと、28歳全身タトゥーの彫り師“たっちゃんさん”が織り成す、ニットとタトゥーを巡る賑やかな日常。
そしてその中に見え隠れする、2人の抱える苦しみの影。
バディ体制での創作活動を積み重ね、無二の絆を得た2人は、関門海峡へ旅に出る。
傷を負った大人と、傷の場所を知らない少年が、自分を肯定するまでの物語。
本編ラスト5行で、タイトルの意味が明かされる。
読後の興奮状態で書くため、
ネタバレしちゃいそうで怖い!
だから、あらすじに書かれていることにしか触れません。
「16歳の編み物が得意な青年レオと、28歳のタトゥー彫り師たっちゃん」のお話です!
主人公のレオはニットの名手。
編み物かぁ。
私の編み物歴としましては、
息子が赤ちゃんの頃にニット帽を編んだのが最後だから、かれこれ15年近く編んでません。
そのあとは余った毛糸で1人あやとりをして遊んで……それっきり。
難しい編み方も用語もわからない。(だからセーターとかは作れない)
そんなうっすい知識なので、このお話での編み物のシーンは読んでいて勉強になりました。
毛糸の色を思い浮かべながら、仕上がりを想像していたら、たまらなくなって。
指に編み棒と毛糸の感覚がなんとなくよみがえってくる。
普段編まないのに不思議。
読んだだけなのにちょっと編みたくなってる自分にびっくり。
そして、もう1人の主役。
タトゥーの彫り師・たっちゃんなんて、
もう全然知らない(わからない)世界の人。
あ、金原ひとみさんの『蛇にピアス』という作品に彫り師さんが出てきますけど、その彫り師さん(映画版では井浦新さんが演じていました)と、
この『針を置いたらあの海へ』に出てくる彫り師さんではまったく違う雰囲気で。
全身タトゥーが入っているので一見怖いですけど、優しくて誠実な28歳。
(彫り師さんの仕事はこんな感じなのかぁ。人の肌に何かを残すというのはこういうことなのか…)と、
彫ったことも彫られたこともないのに、
なんとなくその感覚を想像して震えたり。
私はどちらかというと、主人公の2人よりも、
16歳のレオの母親や祖母の目線で物語を読み進めていったので、
子を見守る姿勢というものも勉強になりましたし、
2人と、周りの登場人物たちがそれぞれの道を頑張って生きている姿に
読んでいて元気がもらえました。
人が心に負った傷は、
なかなか消えるものではないけれど、
人のあたたかさや自分の頑張りによって、
癒やされて、
傷もだんだんうすれていくものなんですね。
主人公のレオとたっちゃんと共に、
読後は自分の気持ちまで満たされ癒やされる。
そんなすごい小説が
『針を置いたらあの海へ』です。
ネタバレにビビって感想文を書いたら、
感想文なのかも、何もかもわからない、なんのこっちゃな文章になっていますが、
もうとにかく良かったんですよ!!!
良すぎて、
(こんなにすごい小説が出てくるんだったら、もう私は無理だな)と、
創作意欲が萎えちゃったくらい。
私にとってはそれぐらい影響を受けた作品でした。
未読の方は是非!!!
ものすごーく!!面白かったですし、おすすめです!!!
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