大人チョコの思い出
中学1年生のバレンタインデー前夜。
好きな人に告白されました。
その時の私の思い出すだけで恥ずかしい…いや、情けない、ほろ苦い大人チョコ話を聞いてください。
バレンタイン前夜、隣のクラスの男の子から電話がかかってきました。「好きです、付き合ってください」と。私も好きでしたし嬉しくてすぐに「いいよ」と返事をしました。
電話を切ったあと、私はあることに気づきました。
(あっ、明日はバレンタインだ。えっ?もしかしてチョコレートあげないといけないかな)
気づいたものの、もう夜です。我が家は自営業で夜は母も家にいませんでしたし、冷蔵庫を開けても手作りできるような道具も何かを買いに行く元気もありませんでした。
翌日。
渡すチョコレートがないのでバレンタイン当日は隣のクラスの彼を避けるように逃げ回り、その日を乗り切りました。
今よく考えてみれば「前日に告白されオーケーを出したのにバレンタイン当日に逃げ回る」なんて最低な女子です。
逃げ帰ったものの、さすがにバレンタインチョコをまったく渡さないというのはまずいんじゃないかと思いました。
翌日は土曜日だったので午後から買いに行こうと思ったのですがバレンタインが終わってからバレンタインチョコを買いにいくのもちょっとね…大体バレンタイン後に売っているお菓子にはホワイトデーの包装がされています。これは面倒だと思いました。
するとその夜、私のもとにバレンタインの神様が舞い降りました。
父がたくさんのバレンタインチョコを貰って帰ってきたのです。紙袋に何個ももらって帰ってきました。
「パパ!このチョコ、どれかもらってもいい?」
「ええけどあんまり食べ過ぎて太るなよ」
最低だというのはわかってます。
いや、その時の私には自分の愚かさがわかっていませんでした。
バレンタインチョコを買いに行くのが面倒だから、できたばかりの彼氏に父親経由チョコを渡そうとしたのです。
私は真剣に選びました。
さすが大人が貰ってきたチョコはおしゃれで豪華です。
(サブバッグに入れて持っていくならコンパクトな方が良いなぁ)と思いました。
小さくてもあんまり子供っぽいのも嫌だし…
父の手柄であるバレンタインコレクションの中から、
コンパクトな長方形で大人っぽい包み紙とリボンのチョコレートを1つ選び、私は週明けに堂々とそのチョコレートを持って学校に向かいました。
バレンタイン当日に逃げまわったくせに、渡すチョコレートを手にした私は自信満々でした。
彼は少し戸惑っていましたが、笑顔で「もらえないと思ってたよ。ありがとう」と受け取ってくれました。
バレンタインチョコを3日遅れでも渡せたことが嬉しくて、一仕事終えたような気持ちの良さの中、帰宅。
父が私に言いました。
「あのバレンタインのチョコの中にさ、これぐらいの大きさのこういう形の箱、なかったか?」
それはまさに私がさっき彼氏に渡したチョコレートの形です。
私はとっさに嘘をつきました。
「…食べた」
父は驚いたような顔で私の顔をじっと見つめて
「うそや〜ん」
と言いました。
「え?なんで、なんで?あのチョコ、なんなの?」
「いや、だって、あれ、ウイスキーボンボンやでぇ」
「他のはな、どれだけ食べてもええねんけど、あれはウイスキー入ってるし、あれだけ食べよ思っててん」
更に聞けば…どこぞの高級クラブのママに貰ったお高いウイスキーボンボンだそうで。
…
……
どうしよう!私!!
3日遅れでようやく渡せたチョコがウイスキーボンボンって!!!
皆さん、明日はバレンタインデーです。
面倒でも、
きちんと自分で選ぶか作るかしたチョコレートを渡すことをおすすめします。
私のほろ苦い「大人チョコ体験」をもとにした、
皆さんへのアドバイスでございます。