『犬を盗む』を連れ帰る
ある日、書店をぶらぶらしていたら、
新刊のコーナーにものすごく気になる本を見つけました。
「見つけた」というより「見つかった」と表現した方がよいかもしれません。
この本に。
私の目線にこの本。
そしてその隣に作家さんのサイン色紙が。
そこには犬のイラストと共にこう書いてありました。「連れ帰ってください」と。
私は若かりし頃、犬を飼っておりました。
高校一年生の時から16年間。その後、ずっとペットロスです。かれこれ10年以上ずっと。
ペットロスを癒すのは新しくペットを飼い始めるのが1番だと聞くのですが。
飼えないんです。
もちろん今は賃貸マンション暮らしなので、そういう面で飼える体制も整っていないですし、なにより自信がないのです。飼うからには最後まで責任を持って飼いたい、その先にはまたあの別れが待っています。その辛さを乗り切る自信がないのです。
でも好きですからね、近所の散歩中の犬を見つけては声をかけてこの気持ちを紛らしていました。
そんな矢先に出会った本。
「連れ帰ってくださいな」と強く訴えかけてくる、この瞳!
本の表紙のワンちゃんなら連れ帰ることができます。吸い寄せられるように手に取り購入した本ですが、なんとこの小説のジャンルはミステリー。しかも読み出したら面白くて面白くて。久々の一気読みでした。
物語に登場する人たち、みんな犬好きです。
「犬を飼っている人あるある」や「現代のペット事情」が随所に散りばめられているので、うんうん頷きながら読み進めていくのですが…
最後はあっと驚きました。
またそこで(そうだった!ミステリー小説だった!)と気づくという。
読後に感じたことは、
「犬を飼う」ということは(犬にかぎらず、ペットと呼ばれるどの種類の生き物にも共通することですが)
「飼う」「飼育」するじゃなくて、
「一緒に生きていく」ということじゃないかと。
その子と生きていく。
最後まで生きていく。
雨の日も風の日も自分が弱っている時も。
可愛いと思う気持ちや一時の感情だけじゃ飼えない。その子の一生を背負う覚悟をもって、一緒に生きていくんです。
私のペットロスも
(愛犬と一緒に生きた証なのかもしれない)(最後まで一緒に居れて良かった)と思うと少し気持ちが楽になりました。
犬好きの方、
動物好きの方、
生きることについて考えたい方、
いろいろな人にすすめたいし読んでいただきたい、
ラストにはじんわり心があたたかくなるミステリー小説です。