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いろいろな家族の形

夫の従妹の話。
彼女はパリで広告関係の仕事をしている。
以前は大手の広告代理店で要職に就いていたが、10年ほど前にネットをメインにしている広告代理店にヘッドハントされて転職した。
その後マッチングアプリで出会ったパートナーと一緒に暮らし始め、現在9歳になる娘を授かった。

彼ら一家の稼ぎ頭は彼女だ。
なぜならパートナーは無職だからだ。

パートナーはその昔、親から継いだ食品関係の会社を経営していたがある時取引先の会社に訴えられてしまった。
運の悪いことに相手側の会社が世界的超大手に買収され、優秀な弁護団を雇ってきたため裁判に負けた。
残ったのは膨大な借金だった。
当時結婚していた妻は三人の娘と出ていき、一人で借金とともに取り残されたそうだ。

夫の従妹とパートナーは結婚もフランス婚としても知られているPACSもしていない。
なぜなら法律関係を結んでしまうと借金の矛先が夫の従妹に向いてしまうから。
表向きには独身で、無職で、支払い能力がありませんという体裁を示さないと借金からは逃れられないらしい。

そんな彼女もコロナの影響もあり、2年程前にまた転職する羽目になった。
働いていた広告代理店の営業成績が思わしくなく、どんどん人を減らしていった。
最初はクビを宣告する立場だった彼女も、次第に矛先が自分に向いてきているのを感じたそうだ。
そんなこんなで今はフランス大手自動車メーカーに出向のような形でその企業の広告を扱う仕事をしている。

自動車メーカーでの仕事は広告関係とはいえ今までとは勝手が違うらしく、毎日会議会議でネットやTVCMはもちろん、ラジオの広告までなんでもやらないといけないらしい。
前の会社のお給料をそのまま頂いているらしいが、自分の仕事がお給料に見合っていないという自覚があるらしく、査定があるたびにそのことを指摘されないかビクビクしているそうだ。
一家の大黒柱だからそりゃそうか。

家庭生活はというと、パートナーが家事育児をメインで担当している。
娘のお迎えや宿題を見ることなども全部パートナー。

おかげで娘はとってもパパッ子になってしまった。
娘はいつも仕事仕事で忙しそうにしている従妹のことは仕事以外何にもできないと思っているのか、ちょっと邪険にすら扱っている。
それをみるとなんだかちょっとせつなくなってしまう。
どういう状況であなたのお家が成り立っているのかわかってる?なんて大人げないことを言いたくなってしまう。

これって男女を逆にすればよくある家族の構図なのかも知れない。
きっとあと数年経てば娘も状況を理解し、もっと思いやりを持って接してくれるとは思いつつ、早く彼女の頑張りが報われて欲しいと思ってしまう。

何より彼女はパートナーの状況をよくわかっているし、一度も仕事やお金について愚痴を言っているのを聞いたことがない。
それどころか元々は仕事好きで働き者だったパートナーの状況に同情し、彼のプライドを傷つけないように細心の注意を払っているのがよくわかる。

今時、女性のほうが稼ぐカップルは珍しくはないと思うが彼らのように片方が特に男性が無職のパターンは珍しいように思う。
事情が事情だけにパートナーの男性が働けないのは残念だけれど、やっぱり収入をどちらか一人に頼りすぎるのはよくないなと思った。


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