「ナッジで変わる掃除の時間」:教師が強制しない指導法/小学校/清掃
もう悩まない「掃除指導」をナッジ
5月、新学期のわくわくも落ち着き、子どもたちは
クラスにもすっかり慣れてきました。
そんなある日、彼らの掃除の様子を見ていると、
友だちとふざけ合いながら掃除に取り組む姿が
目につき始めました。
過去いろいろな掃除指導を試しましたが、
いまだピンとくるものがありませんでした。
そこで「ナッジ」の手法を掃除指導に
取り入れることにしました。
2つのことを決め、継続するだけ です。
ナッジ①子どもたちによる目的の共有
5月の朝、子どもたちに、
「掃除って何のためにやるの?」と尋ねました。
「みんなのため」「学校のため」など
お利口さんな答えが返ってきました。
私は感心するのみでしたが、最終的に
「きれいにするため」という
シンプルな目的を彼らは設定しました。
ポイントは、
子どもたち自身が設定する ことです。
そして掃除の終わりには、
彼らがこの目的を目指せたか、
自己評価させる取り組みを始めました。
ナッジ②自己評価の導入
目的の達成度を可視化するため、
自己評価を4つのカテゴリーに分けて行いました。
子どもたちが内容を決めても良いと思います。
手軽に始め、
徐々に修正していくというスタイルが
個人的にはおすすめです。
そして、振り返りをする際、
子どもたちに以下を説明することがポイントです。
①掃除に真剣に取り組む感覚を共有するために行うこと(ナッジの透明性)
②どんな結果でも大丈夫だという心理的安全性を保証すること
③自分の至らない点を自分で理解できることにも大きな価値があること
休み時間にかからないように
掃除の終了時刻を定め、
掃除の振り返りをします。
(☆資料や指導の流れがご希望の方はDMかコメントを!)
この時、教師の声かけが
ナッジの命運を分けます。
ナッジに「強制」は禁物です。
Cの子どもを咎めるような指導をしません。
反対にSの子どもに「感心」してください。
「すごいなぁ」の一言だけでもいいです。
「よくある外発的動機付けで、よくないのでは!」
と思いそうですが、とりあえずやってみましょう。
最初の反応
最初の取り組みでは、
子どもたちの多くが自分の行動に
正直に答えていました。
これは、目的を全員で共有していることが
効果を発揮していると考えられます。
S(一生懸命掃除に取り組んだ)の人数は少なく、
多くがAやBのカテゴリーに分類されました。
1週間後、早くも変化
1週間後、目立った変化は見られませんでしたが、
掃除の後に子どもたちが
自分の掃除への取り組みについて
話し合う様子が見られるようになりました。
「今日はCだった」「今日は私Sだったよね」
といった自己評価の言葉が飛び交い始めました。
1ヶ月後、掃除の感覚を共有(ブースト)
子どもたちが振り返りに慣れてきた頃、
Sのカテゴリーに入った子たちに
「掃除をきれいにできた時の気持ち」を
尋ねました。
「気持ちがいい」「嬉しい」といった
前向きな感想が返ってきました。
最初は「Sをとりたい」という外発的動機が
「きれいにすると気持ちが良くなる」という
内発的動機に変わる瞬間を見逃しません。
「確かに!先生も昨日部屋をきれいにしたら
気持ちよかったなぁ」のような感じで
フィードバックをしましょう。
1学期末、目標の再確認と効果の現れ
1学期末、掃除の目的を
再確認する機会を設けました。
子どもたちは
「静かにやる」「さぼらない」といった
受動的な考えを持っていましたが、驚くことに、
子どもたちから掃除の目的に関する
自発的な提案が上がりました。
「自分の弱い心に打ち勝つため」という
新しい掃除の目的が提案され、
多くの賛同を得ました。
このアイデアを採用し、
振り返りの際の資料にも反映させました。
引き続き、掃除の結果はどうであれ、
お互いの存在を認め合うことの大切さを伝えました。
2学期、確信の変化
2学期が始まり、
掃除の目的を毎日確認しあってから
振り返りを行うと、
劇的な変化が見られました。
Sのカテゴリーの人数が増え、
BとCがほぼいなくなりました。
子どもたちは、
「掃除をやったら気持ちが良かった」
「やらなきゃいけないと思うようになった」
という感想をよくこぼすようになっていました。
その後も、子どもたちが周りを気にせず、
自分の評価をしているかを定期的に確認しました。
Sが増えたことによる、
同調圧力の評価になっていないかを
確認するためです。
そして、掃除場所を点検すると、
ほとんどの子どもたちが
本当に、真剣に
掃除をしていることがわかりました。
そんな上手くいくのか!?
この取り組みから、
教師が「掃除をしなさい」という
強制をすることなく、
子どもたちが自然に掃除に取り組む環境を
作り出すことができました。
しかし、上手い話には裏があります。
失敗してしまうこともあります。
(私も何度もしています、けれど途中で直せます)
それは教師が「ガマン」できないことです。
目の前の掃除をしない子どもに声をかけては、
「自己評価」はなし得ません。
それは教師による
「他者評価」になってしまいます。
目的をブラさず、教師が
信念を持ち続ける必要があります。
「自分で決め、責任をとる」
「大量の失敗の機会を得る」
点数や業績に縛られない、
学校教育の強みだと私は思います。
また、この「掃除指導」は
自由進度やけテぶれの初手にも最適だと思います。
高学年だと、困難校だと難しい!
と言う声もあると思います。
より教師の「在り方」が
求められることは間違いありません。
しかし、私は悩んでいた
小学校の掃除指導から
解放されました。
細かな質問、疑問がきっとあると思います。
コメントやDMでお知らせください。
スライドもお渡しします。
全力でお力添えさせてください。
それでは、また次の記事で。
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