「家族にあいさつ」〜あいさつナッジのまだ見ぬ力〜
あいさつナッジの進化
あいさつナッジとは、
毎日朝の会の時間に
「友達」「担任」「他の大人」に
あいさつすることができたかを
聞くだけの実践です。
「あいさつをしなさい!」という
スタートではなく、
「友達」「担任」「他の大人」という
スタートを設定することで、
最初からあいさつをすることが前提となる
「初期値の引き上げ」がポイントになっています。
そして、ナッジは強制しません。
自由意思が尊重されるなかで、
よりよい意思決定の後押しを
少しだけするものです。
教師がこのナッジの目的を
しっかりと腑に落としていることも
重要になります。
詳しくはこちらをご覧ください↓
そしてこのあいさつナッジが今、
子どもの提案により、
新たな変化を見せました。
あいさつナッジの家庭への影響
1月半ば、
あいさつナッジも上手く継続しているなか、
「【家族】っていう項目を作ってください」
という子どもの声が聞こえました。
なるほどそれは名案だと思いました。
理由は2つあります。
1つは簡単だからです。
友達や担任や他の大人の人にも言えない子でも、
家のきまりや何となくの流れでいうことが
ある子もいるかもしれません。
皆の「できた」という気持ちを
強化するにはいい項目だと思いました。
もう1つは家庭での変化を期待できたからです。
授業ナッジ以外で、
家庭への影響を期待したナッジは
考えていなかったので、
これは新しい視点でした。
本来もつべき、
学校以外の場での応用。
改めて子どもの成長を願うことの大事さを
子どもが思い出させてくれました。
仕掛学にない、ナッジの強さ
以前「仕掛学とナッジの違い」について
説明させていただきました。
簡潔に述べると
仕掛学は、
物理的な環境を変えることで
子どもたちの行動を促し、
ナッジは、
情報提示や進捗の可視化など、
より概念的なアプローチで
子どもたちの選択を導くことを指します。
つまり仕掛学は、
物理的な仕掛自体の
効力が大きいので、
違う場面での応用を主としていません。
反面ナッジは、
概念的アプローチで、
無意識下の意思決定に影響を与えるので、
違う場面であっても
応用が効きやすい特徴があります。
もう少し詳しく説明します。
バスケットゴールに見立てたゴミ箱
これは仕掛学になります。
このゴールゴミ箱の面白さに惹かれて、
付近の人はゴミを捨てるようになります。
しかし、他の場で同じような行動を
とるようになる確率は高くなく、
変化したとしても短期的であるという結果が出ています。
ナッジの有名な例では、
臓器提供カードの例が挙げられます。
死後、臓器を提供するかの
意思決定をするカードに
「臓器を提供しない場合は、
こちらに連絡をお願いします」
という記述をのせるナッジです。
このようにすることで、
「連絡をする手間」を考えるなら
「まぁ死後なら社会貢献してもいいか」
という自由意志を尊重されながらも
よりよい意思決定を誘導することが
可能になります。
この意思決定は
概念にアプローチしているので、
カード以外で判断を迫られても
同じような判断をする可能性が高くなります。
これが私が学校教育において、
仕掛学ではなく、ナッジを推す理由です。
その場を上手く回したい場合は仕掛学、
長期的によい意思決定を促したい場合はナッジ、
そんな使い分けができると
素敵だと思います。
ナッジのまだ見ぬ可能性
今回また子どもの提案により、
ナッジの新しい設定が作られ、
それがよりよい意思決定を引き出しました。
言い訳ですが、
私はまだ困ったことにしか
ナッジを応用しておりません。
必要最低限です。
まだまだ教室ナッジの可能性は無限大です。
子どもと共に、周りの現場の方々と共に、
全国の先生方と共に、
このナッジの研究を進められたら
ありがたいなと思っております。
仕掛学とナッジの違いについてはこちら↓